俳優の町田啓太が無双している。最近の彼を見ていて、本当にそう思う。
なぜ自分の脳内にひらめいたのか、最近の出演作を回顧する。

【関連写真】Netflix『10DANCE』で竹内涼真とW主演を務めた町田啓太

◆Netflix作品、連続出演への快挙

まずは近々、最終話を迎える春ドラマで、主演作『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系)の浮田立樹役。金髪でとことん明るい、軽いイメージのフリースクールの教室長。でも実は我が子を自殺未遂まで追い詰めてしまった過去を持っており、当時の自分と、息子とどう向き合って結論を出していくのかが、タツキの課題。独身で子どもと関わりの少ない私にとって、現代の不登校の事情を垣間見られるのが、興味深かった。

上記作品とほぼ同時期の4月に配信が始まった『九条の大罪』(Netflix)の壬生憲剛役。半グレ、全身にタトゥー……いや、あれは刺青か。強烈なヴィジュアルで、視聴者の目を丸くさせた出演者のひとり。劇中でもやることなすこと、卑劣な行為ばかりが目立ったけれど、実は大の犬=愛犬のおもち好き。見た目と表裏一体の言動が散見され、壬生の善悪を判断するのがなかなか難しかった。

町田といえば昨今、『九条の大罪』と同じくNetflixへの出演が目立っている。最近、オリジナル作品に関しては視聴者からも「面白い」と称賛が高く、世界中に配信される注目度の高さもあって、俳優陣からの出演ラブコールも熱い。
背景には製作にかけるバジェットなど、いろいろな魅力も混在するけれど、出演者枠としては数が限られている。私もNetflixのスタッフたちと話していて感じるのが、彼らのモノ造りへの視点は厳しく、それでいて熱い。何か動こうとするときに、多方面から材料を集めてきて、吟味していく姿には敬服する。そのジャッジメントの渦中にありながら、町田の出演が絶えないのは魅力あふれる人なのだと、改めてしみじみする。

2025年末に配信となった『10DANCE』の杉木信也役では、今までのパブリックイメージにはなかった社交ダンスを披露。完璧だった。この作品の配信近辺で、町田の役に対する憑依ぶりがにわかに話題になっている。SNSで「町田啓太に医者の役が来たら、本当に医師免許を取得するのではないか」と言った投稿を見かけた時は、私も大きく頷いた。同年の夏には『グラスハート』の高岡尚役で、バンドのギタリストも演じた。この3作を通じて、町田がいかにNetflixから愛されているという事実を知る。

◆新人ながらにして光る、何か

彼といえば多くの作品に登場しているものの『中学聖日記』(TBS系・2018年)の川合勝太郎役、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系・2020年)の黒沢優一役はとても印象に残っているし、町田の名前を広く知られる一端の材料になったのは間違いない。

ただ個人的には2015年に放送された『美女と男子』(NHK総合)で演じた、デビューしたばかりの俳優・向坂遼役を思い出す。
本作は主演の仲間由紀恵演じる芸能マネジャー・沢渡一子と、遼が出会ってスター街道を目指す物語。なぜ彼が印象に残ったのかといえば、当時デビューして数年の町田と役が重なっていたことや、俳優としては珍しく『LDH JAPAN』に所属していたことだ。何より今よりも町田の荒削りだった演技に、何か惹かれるものがあった。これは一年間に約150本近くの連続ドラマを好んで見ている、私のようなオタクにとっても稀な現象。演技のキャリアに関わらず、なぜか演技の残像がチラつく人物がいる。出版社に勤務していた新人編集者時代に「売れる人は売れる前から、撮影していると何かキラッと光るものが見える」そう話しているカメラマンがいて、当時は何のことだからさっぱり分からなかったけれど、年齢を重ねて理解できるようになったのかもしれない。とにかく町田には何かが見えた。

よくインタビューで「これから演じてみたい役はありますか」と聞くけれど(質問内容は自分の意見だけではないので、悪しからず)、彼に至ってはその質問が愚問になりそうだ。おそらくこれからも役が彼に向かって、めり込んでくる。きっと町田はその圧を全身で受け止めて、演じて、私たちを楽しませてくれるのだろうと思う。

(文/コラムニスト・小林久乃)

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