マイホームは、人生で最も大きな買い物の一つだ。数千万円の住宅ローンを組み、何カ月もかけて家が完成するのを待つ。
その途中で、依頼したハウスメーカーや工務店が倒産したらどうなるのか。

東京商工リサーチによると、2026年上半期(1~6月)のハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産は118件。前年同期から87.3%増え、上半期として13年ぶりに100件を超えた。

背景には、資材費や人件費の上昇、住宅ローン金利の上昇などがある。さらに住宅は、契約してから完成するまで時間がかかる。契約時に販売価格を決めたあとで資材や人件費が上がれば、その差額を施工会社側が負担するケースも出てくる。

受注が増えていても安心とは限らない。1,000万円で請け負った工事に1,050万円かかれば、仕事を取るほど赤字が膨らむからだ。

では、これから住宅を建てる人は、施工会社の経営状態をどう見ればよいのだろうか。

契約前に見たい、ハウスメーカーの“懐事情”

住宅展示場を訪れ、営業担当者の説明を聞き、施工実績や口コミを調べる。ハウスメーカー選びでは、こうした情報を参考にする人が多いだろう。

もっと踏み込んで、会社の財務状況まで確認する人は少ないかもしれない。
だが、倒産や資金繰りに直面した企業の支援に携わってきた高橋健一朗氏は、数千万円規模の契約を結ぶのであれば、財務面も判断材料にしてよいと話す。

「建設業許可を持つ会社は、決算に関する書類を毎年提出しています。一般の人でも閲覧できる資料もあるので、相手がどんな財務状態なのかを調べてから依頼するといいでしょう」(高橋氏、以下同)

建設業許可を受けた事業者が提出する書類には、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表も含まれる。

とはいえ、住宅を建てたい人の多くは会計の専門家ではない。決算書を手に入れても、どこを見ればよいのかわからないのが普通だろう。
倒産の兆候は「工事中のお金」に表れる?

そこで高橋氏が注目するのが、建設業特有の「未成工事受入金」と「未成工事支出金」だ。名前だけを見ると難しそうだが、考え方はそれほど複雑ではない。

未成工事受入金は、まだ完成していない工事について、顧客から先に受け取ったお金。未成工事支出金は、完成前の工事ですでに発生した材料費や外注費などを計上する項目だ。
つまり、「工事が終わる前にいくら受け取り、その現場にいくら使っているか」を見る手がかりになる。

例えば、売上として計上されていない工事が多いにもかかわらず、未成工事支出金が急増している場合は、受注増によるものなのか、工事原価の上昇や採算悪化が影響しているのか、他の項目とあわせて確認する材料になる。

「決算書を見るなら、こうした建設業特有の項目も見ておきたいですね。
資金繰りがかなり厳しくなっていないかを判断する目安にはなります。ただ、数字を見れば100%倒産を予測できるわけではありません。あくまで判断材料の一つです」

自分で判断するのが難しければ、有料の企業情報サービスを利用する手もある。

数千万円を支払う住宅購入で、「そこまでするのか」と感じる人もいるだろう。ただ、会社の知名度や売上規模だけで安全性を測れない以上、少なくとも調べる方法があることは知っておきたい。
倒産しても大損しない「支払い」の工夫

会社の経営状態を詳しく調べても、数カ月後、数年後まで倒産しないと保証することはできない。ここで重要になるのが、危ない会社を見抜くことだけに頼らない考え方だ。

住宅では、契約金や着工金、中間金など、完成前に何度か代金を支払う場合がある。このとき注意したいのが、実際の工事よりも支払いだけが先に進んでいないかである。

まだ工事がほとんど進んでいないのに多額の入金を求められたら、「なぜ、この時点でこの金額が必要なのか」は確認しておきたい。

仮に施工会社が倒産した場合、すでに支払った代金がそのまま戻ってくるとは限らない。完成していない家と、大きな支払いだけが残る事態も考えられる。


そんなトラブルに巻き込まれた際、高橋氏が防衛策の一つとして挙げるのが「エスクローサービス」だ。

「これは、支払いの間に第三者が入る仕組みです。例えば工事が一定のところまで進んだら、その進捗に応じて建設会社へお金を払う。これなら、施工会社が途中で倒産しても、まだ完成していない部分まで先に払ってしまうリスクを抑えられます」

工事の進捗と支払いを近づけておけば、万が一別の工務店に残りの工事を頼むことになった際も、資金面の傷を小さくできる。

住宅会社を信頼することと、支払いを無防備に先行させることは別の話なのだ。

「保証があります」のひと言で安心しない

契約前には、保証の有無も確認しておきたい。ただ、「保証制度があります」と説明されただけで話を終わらせるのは心もとない。

施工会社が倒産したときも対象になるのか。別会社に工事を引き継いだ際の追加費用はどこまでカバーされるのか。支払済みの代金は守られるのか。保証には上限があるのか。見るべきなのは制度の名前ではなく、「何が起きたとき、いくらまで補償されるのか」である。


また、契約後にも注意したい。工事が予定より遅れているにもかかわらず、当初より早い入金を求められたり、「資材を確保するため」と追加の前払いを打診されたりした場合は、一度立ち止まりたいところだ。

現場はどこまで完成しているのか。これまでいくら払ったのか。次の支払いは何に使われるのか。工事の進捗と支払額を照らし合わせれば、異変にも気づきやすくなる。

ただ、ハウスメーカーが倒産した際、住宅購入者が直面する問題は工事の中断だけではない。

すでに支払ったお金が戻らず、別の施工会社に工事を引き継いでもらうため、さらに費用がかかる可能性もある。住宅ローンを組んでいれば、当然その後の資金計画にも影響するわけだ。

契約書や見積書、振込記録は残しておく。工事の進み具合も確認し、支払いだけを先行させない。利用できる保証があれば、契約前に対象範囲まで確かめる。


そして、住宅購入では頭金や契約金に手元の現金を使いすぎないことも大切だ。工事の遅れや施工会社の倒産によって、思わぬ追加費用が発生する可能性もある。

会社の先行きを契約前にすべて見通すことはできない。

だからこそ、家が完成するまではある程度の資金を手元に残し、予定外の出費にも対応できるようにしておきたい。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら

高橋健一朗 たかはしけんいちろう 危ない会社・倒産寸前の会社を支えるコンサルタント。倒産や借金問題、資金繰りの悪化に直面した経営者の相談に数多く携わり、事業の立て直しを支援してきた。使命は、倒産や借金問題で孤立する経営者をゼロにすること。
平時から資産を守り、有事でも再出発のための資金を残す考え方を伝えながら、「何度でもやり直せる」という安心感と、再挑戦できる環境づくりに注力している。 この監修者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ