レビュー
作家の頭の中はどうなっているのだろう――。小説や漫画を読んでいると、ときどきそんなことを考える。
本書は、その問いに正面から答えてくれる一冊である。
著者の小川哲氏は東京大学大学院の出身で、『ユートロニカのこちら側』でデビューした。以後、『ゲームの王国』『地図と拳』『君のクイズ』など話題作を次々に発表し、直木賞をはじめ数々の文学賞を受賞している。
本書は、小川氏へのロングインタビューから始まり、さまざまな作家との対談へと続いていく。聞き手や司会を務めるのは作家・書評家の渡辺祐真。中村文則、万城目学、飛浩隆、大森望、高瀬隼子、尾崎世界観、葉真中顕、京極夏彦、呉勝浩、今村昌弘、佐藤究、町屋良平、魚豊と、一冊に収めるには贅沢すぎるほど豪華な顔ぶれが並ぶ。
語られるテーマも幅広い。何を書きたいのか、誰の目で世界を見るのか、出来事をいかに物語へ変えるのか、どのようにして伝わる文章を書くのか。創作論でありながら、思考法やコミュニケーション論、仕事術としても読むことができる。書く仕事をしている人はもちろん、そうでない読者にとっても、思わず立ち止まって考えたくなる発言が次々と現れる。
まずはぜひ、小川氏のインタビューから目を通すことをおすすめする。現代日本文学を代表する小川氏の創作論をまとまった形で読めるだけでも本書の価値は大きい。
その後は、順に読むもよし、好きな作家から読むもよし。読後には、物語の見方だけでなく、自分自身の考え方や言葉との向き合い方も少し変わって見えてくるはずだ。
本書の要点
・小川哲は、「わからないこと」から小説を書き始める。読者は自分ではないと知り、その視点を学びながら、書く過程で生まれる偶然や発見を作品へ取り込んでいく。
・作家には書く力だけでなく読む力も必要である。小川哲と中村文則は、無意識が導く発見を重視しながら、本当に書きたいものを読者へ届ける責任について語り合った。
・「本当のこと」だけでは小説は面白くならない。小川哲と高瀬隼子は、現実に嘘や編集を加えつつ、物語へと変えていく創作の営みについて語り合った。
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