【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】
アルバム『ラバー・ソウル』(1965年12月3日発売)⑨
◇ ◇ ◇
■『愛のことば』
『ラバー・ソウル』の残り4曲を一気に。4曲まとめるということは、すなわち私があまり推していない曲ということだ。
まずは『愛のことば』。この頃のビートルズは、元々のハモる実力に加えて、重ね録りする音響機材も充実。コーラスグループとして最高潮だった頃である。
特にこの曲などは、単にハモりたいがために作った曲に聴こえる。逆にいえば、その程度の曲。【オリジナル記事で試聴する】
「その言葉を口にしてごらん、自由になれるから」「その言葉とは『愛』」という、のちのラブ&ピースの時代に先駆けた感じの観念的な歌詞。
最後に鳴り響くけたたましい音は、ジョージ・マーティンの弾くハーモニウムという鍵盤楽器だ。
■『消えた恋』
B面1曲目で、リードボーカルがリンゴのカントリータッチということで、アルバム『ヘルプ!』の『アクト・ナチュラリー』の位置にある。
ただ、今回はカバーではなく、作詞・作曲は「レノン=マッカートニー=スターキー」名義。「スターキー」はリンゴのこと。ビートルズ現役時代に、リンゴが作詞・作曲に絡んだ5曲のうち、初リリースの曲だ。聴くべき理由があるとすれば、それぐらい。
■『ウェイト』
ある意味、『ラバー・ソウル』の中で、もっとも不思議な曲。
天下の『ラバー・ソウル』の収録曲で、いち早くレコーディングが始まったのが(65年6月)、アルバムの中で傍流的なこの曲というから面白い。
サウンド的には、ロックやポップス界ではほとんど使われない「クレッシェンド」(=だんだん強く)が用いられているのもまた面白い(試聴リンク再生時間「1:17」あたりから)。でもまぁ、それはそれとして、ただ単に不思議な曲という感じ。
■『浮気娘』
このアルバムを初めて聴いたときから「あぁ、こんな曲で終わるのかぁ」と残念に思っていた曲。当時ノリノリのビートルズ、もっといい曲もあったろうにと思う。
歌詞は完全に「ハラスメント・ロック」。「浮気娘」に対し、「他の男といるぐらいなら死んだ方がいいぜ」、だから「ラン・フォー・ユア・ライフ(原題)=死にものぐるいで逃げろ」と散々な内容。
聴きどころがあるとすれば、歌い出しのジョンの声。重ねられず加工もされない生の美声が聴けるところ。
というわけで、以上『ラバー・ソウル』=中期ビートルズの入り口となる名盤を楽しまれたい。特にこの4曲以外を。
▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

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