【あの頃、テレビドラマは熱かった】


「アリよさらば」(1994年/TBS系)


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 安達祐実(当時12)の「家なき子」が社会現象化した1994年。この年は「禁断の果実」(日本テレビ系)で田中美佐子(同34)が弟の岡本健一(同25)と近親相姦、「この愛に生きて」(フジテレビ系)で安田成美(同27)が主婦売春に走るなど、今では放送できなそうな“衝撃作”が並んだ年でもある。


 そんな年、内容よりもキャストが“衝撃的”な作品があった。それが「アリよさらば」(TBS系)。矢沢永吉(同44)がドラマ初主演で教師を演じた学園ドラマだ。当時の“エーチャン”は既に20年以上、日本のロックシーンを牽引し、テレビには歌番組も含めほとんど出ないカリスマ「E.YAZAWA」。


 それが突然、連ドラで教師役をやるのだから、まさに衝撃。ミュージシャンをドラマの主演に持ってくるのが得意なTBSとはいえ、武田鉄矢とか長渕剛の時とは比べものにならないほどのインパクトがあった。


 オファーがあっても断りそうな雰囲気だったのに、プロデューサーの「何が怖いんですか?」の煽りに、「怖くないよ! やってやるよ!!」って引き受けてしまうエーチャン。大物って、意外とそういうもんかも。


 さらに衝撃だったのが、演じた役。リーゼントでバリバリの破天荒ロックンロール教師かと思いきや、前髪を少したらした、実に地味でおとなしい臨時教師だった。まあ、缶コーヒー「BOSS」のCMで地味リーマンを演じて話題になったころだから、その延長線上かもしれないけど。


「GTO」の鬼塚英吉とは真逆の地味教師が、当時の“イマドキ”の高校生と向き合う話。

実は生徒役も豪華だった。井ノ原快彦長瀬智也松岡昌宏らデビュー前のJ勢に、小沢真珠加藤晴彦小島聖西野妙子、村上淳、岡田義徳……数年後に露出が増えていくスターの卵がわんさか出ていた。


 で、そんな生徒たちよりも演技はたどたどしかったエーチャン。逆にそれがセリフの説得力を増していたともいえなくもないけど。武道館ライブの日には九段下周辺を赤いYAZAWAタオルで染めていたファンにしてみれば、がっかりだったかもしれない。


 ただ、ドラマと同名のオープニングテーマはメッセージ色の強いロック。人の群れをアリになぞらえて「Whyなぜに生きているのか」と問いかけるYAZAWA節だった。おっと、作詞は秋元康。こんなとこにも絡んでいたか。


 視聴率では「家なき子」に遠く及ばなかったけど、44歳の矢沢永吉が地味な教師を演じたという一点だけでも、ドラマ史に埋もれさせてはいけない。


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


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