【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#95


 アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年11月27日)③


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■『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』②


 この曲が仕上がっていく工程は、めちゃくちゃ複雑だった。


 レア音源集、いわば「公式海賊盤」と言っていい、『ビートルズ・アンソロジー』の「2」(96年)には、ジョンによるデモ音源、テイク1、テイク7(エディット・ピース)という、計3種類の『ストロベリー・フィールズ~』が収録されている。


 さらに、最終形の『ストロベリー・フィールズ~』は、そのテイク7とテイク26がつなぎ合わされているらしい。【オリジナル記事で試聴する


 こうなったら徹底的に調べてみる。『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版 公式録音全213曲完全ガイド』(日経BP)という、恐ろしく詳細な本があるのだが、そこに載っていた解析図によれば、先のテイク26には、テイク15とテイク24を足して逆再生(!)した音源を加えたテイク25が基になっているという。


 さらにはそれぞれのテイクで、回転数を変えて、キーをいじりまくっているようだ。いわれてみれば「本物」におけるジョンの声も、テープの回転を遅くした結果、何だかドヨーンとした感じで聴こえてくるではないか。


 もう訳が分からないが、まぁ、細かな話はいいだろう。大事なポイントは、このビートルズ最高傑作曲は、歌詞やメロディーの秀逸さに加えて、編集技術が、かなり貢献しているということだ。いわば世界初のヒップホップとしての『ストロベリー・フィールズ~』。


 などと書くと、この曲の価値を低く見積もっているように受け取られる方もいるかもしれないが、私の考えは、むしろ逆だ。


 ライブ活動をやめて「演奏芸術」を超えた「録音芸術」をやってやんよ、と息巻いた4人が、いきなり、その録音芸術の頂点を極めたということなのだから。これはすごいことですよ、奥さん。


 そんな、この曲の複雑怪奇な生成過程を知りたい方におすすめの音源は、「公式海賊盤」ではなく、2006年発売、こちらは「公式リミックス盤」という感じのアルバム『LOVE』収録の『ストロベリー・フィールズ~』である。


 先述のテイク1とテイク7、テイク26がリミックスされていて、いわば「ストロベリー・フィールズができるまで」という感じの音源になっているのだ。


 というわけで、彼らの最高傑作曲は「最高傑作編集曲」だったのである。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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