「行き過ぎた緊縮志向と未来への投資不足の流れを断ち切り、国内投資を徹底的にてこ入れします」「骨太の方針を速やかに実行に移していく。さらなる具体化を進めてほしい」(高市早苗首相)


 政府は21日の持ち回り閣議で、高市政権として初となる経済財政運営の指針「骨太の方針」を決定した。


 同方針は2027年度を「責任ある積極財政元年」と位置づけ、「総合的な国力を徹底的に強くしていく」ことが「高市内閣の使命」と明記。官民による戦略分野への投資拡大で「強い経済」と「財政の持続可能性」の両立を実現することを掲げている。


 さらに目指す経済・財政の姿を、2027~40年度を期間とする中長期の経済財政計画として示し、名目GDP(国内総生産)1100兆円に迫る経済成長の実現が盛り込まれたのだが、意気込みはともかく、実効性を伴った具体的な中身は見えないまま。


 とりわけ、先の衆院選で高市首相が「悲願」として掲げた飲食料品の消費税減税については、自民党の要職経験者から慎重論が上がり始めていること踏まえ、「8月上旬までをめどに方針を決定する」とあるだけ。この取り組みの一体どこが「骨太」なのだろうか。


 減税を巡り、党内からも否定的な見方が出ているのは、財源確保が不透明な上、衆院選の公約に盛り込む際、十分議論を尽くしていないため——と報じられ、森山裕前幹事長(81)も14日のBS番組で、「財源なき減税は市場に大きな影響を与える」と指摘していた。


 仮に高市首相が減税を決断すれば8月上旬にも閣議決定する見通しだが、その際は自民税調や政調審議会で了承を得る必要があり、今以上に党内の混乱が予想されるという。


 高市首相のお手並み拝見とはいえ、ただ、よくよく考えれば、「減税=党内分裂」というのも変な話ではないか。衆院選では消費減税が自民の目玉公約として掲げられ、多くの有権者が「早期実現」を願ったからこそ、自民は歴史的な勝利を収めたのだ。そうしたら政権発足後になって「財源の見通しは不十分で党内合意も得られていなかった」「実現のめどは分かりません」というのであれば、そもそもなぜ「公約」として全面的に打ち出したのか。


 こんないい加減な政治姿勢では、ハナから有権者を騙すつもりの「口先公約」だったのではないかという疑念は尽きない。


 さらに言えば、減税の財源が不透明というのであれば、高市内閣が打ち出した「積極財政」の財源も不透明だろう。

減税には安定財源や社会保障への影響を慎重に検討する必要があるのは論を俟たない。ただ、だからこそ代替財源の確保や歳出改革を含めた具体案を示すのが政治の役割ではないのか。



実行力と政策に国民は強い期待を抱いたからこそ、衆院選で高市自民を選択したはず

「財源がないからできません」は小学生でも言える。そうではなく、その難しい課題をどう乗り越え、国民生活を立て直すための知恵を絞るのか。その実行力と政策に国民は強い期待を抱いたからこそ、衆院選で高市自民を選択したはずだ。


 自民が単独過半数を得ながら減税の実現が遅れている最大の理由が、野党や国会情勢ではなく、政権・与党の準備、調整不足だったとすれば、有権者に対する裏切り行為に近いだろう。これでは高市内閣の支持率が急落するのも当然ではないか。


 減税で右往左往している状況を見ていると、「国力を徹底的に強くしていく」「強い経済をつくる」と掲げた骨太方針も言葉遊びのハリボテ感が漂う面は否めない。骨太を唱えながら、その「骨の構造=日本経済の実態」を高市政権はてんで理解していないのではないか。


 骨太とは骨を強くする事。つまり骨密度を上げる事だ。骨密度を上げるにはカルシウムやビタミンDを含む食事(=財源)が不可欠だが、高市政権はその見通しが不十分。

さらに“日光浴や適度な運動、生活習慣の改善”といった具体的な制度設計が曖昧にもかかわらず、それでいて「名目GDP1100兆円」「官民投資」「成長戦略」と派手な目標だけを掲げ、ひたすら国民に向かって「筋トレするぞ!筋トレするぞ!」と声を張り上げているわけだ。


 だが、筋トレのやり過ぎは身体に悪影響を与える。無理をして高負荷の筋トレを続けると筋肉の回復が間に合わず全身に疲労が蓄積。やがて免疫力が低下し、風邪や体調不良を引き起こしやすくなる。経済も同じだ。「強い経済」などとイキって具体策もないまま突き進めば、とんでもないことになる。それはすでに日本国民は痛いほど経験しているではないか。


「異次元緩和」と言って市場にカネを流しまくった「アベノミクス」がどれだけ日本経済の体力を奪い、疲弊させ、“免疫力”を低下させたのか。今もなお続く円安進行という“体調不良”がどれだけ国民生活にダメージを与えているのか。


 高市首相は骨太方針について、X(旧ツイッター)で「(中途)半端ではない情熱を注いだ」と投稿していたが、このままだと日本経済は骨太どころか“骨粗しょう症”になりかねない。


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