【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】


『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)⑦


  ◇  ◇  ◇


■『ディア・プルーデンス』


「ビートルズのアルバム2曲目にハズレなし」という、私が勝手に作った法則通り、地味ながらなかなかの名曲だと思う。


「プルーデンス」とは女優ミア・ファローの妹のこと。

そのプルーデンスちゃんは、ビートルズと一緒にインドで瞑想を学んでいたのだという。ちなみに映画に明るくないビートルズファン(私含む)は「ミア・ファロー」という名前を、この曲にまつわるエピソードだけで知っている。


 当時のジョンにしては、なかなかにポップな曲だが、中盤、試聴リンク再生時間「1:48~2:06」、歌詞でいえば「♪ルック・アラウンド・ラウンド……」のところに、いい意味での変態みというか「1968年のジョン」を感じる。【オリジナル記事で試聴する


『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』同様、リンゴがレコーディングから蒸発していた頃だったので、ドラムスもポール。さすがに後半、試聴リンク再生時間「2:56」からの動きまくるドラムスが何ともどんくさい。やはりリンゴは偉大なのだ。リンゴが叩いていたら、どうなっていたんだろう。


■『ハピネス・イズ・ウォーム・ガン』


 直訳で「幸せは熱い銃」。元々は「イン・ユア・ハンド」が付いて「幸せは君の手の中の熱い銃」だったというから、性的な意味合いを想起しない方がおかしいだろう。


 3つの曲をまとめて1曲にしている。こういう組曲のような形式は、のちのポールのお得意技となるが、ジョンがここで先駆けたという形だ。


 タイトルも含めて、まぁ変態な曲である。

『ディア・プルーデンス』には「いい意味での変態み」を感じるが、こちらは曲全体が変態みだけで出来ている。


 特に「0:44」からの3拍子になる2曲目(的パート)は、聴いていて「ヤバいよヤバいよ」と思ってしまう。


 そこで繰り返される歌詞「アイ・ニード・ア・フィックス・コーズ・アイム・ゴーイング・ダウン」も、「フィックス」がドラッグ系の隠語で、要するに「『アレ』を打たなきゃ落ち込んでしまうぜ」という意味。「1968年のジョン」そのまんまである。てか違法薬物、ダメ、ゼッタイ。


 ……と、あえて突き放した感じで書いてみたが、私はこの曲、結構好きである。やっぱ、つまるところポップだと思うから。


 当時のロック界、ポップでもなんでもないカスみたいなドラッグソングがあまりにも多いのだ。その中では抜群に優秀だと思う。でも違法薬物ダメ、ゼッタイ。あっ、ゾンビたばこもな。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。

昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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