青い海と入道雲、潮騒、沖には白いヨット、水平線に沈む夕日……夏の海辺の町やビーチハウス・ショップを舞台にした恋愛ドラマが、この時季には必ずあった。「ビーチボーイズ」「SUMMER NUDE」「好きな人がいること」「真夏のシンデレラ」など、恋人たちは砂浜でじゃれ合い、月明かりの中で見つめ合い、波に向かって叫んでいた。


「夏・体験物語」の中山美穂はあまりにも海が似合っていて、映画「波の数だけ抱きしめて」にも出演した。小麦色の肌に水着のミポリンはまさにマーメード。若者たちは「想い出の渚」を口ずさみながら、「ああ、今年の夏こそあんな恋をしたい」とため息をついた。


 ところが、夏と海と恋のドラマがなくなってしまった。この7月クールでも、海のシーンがあるのは「君は夏のなか」(テレビ東京系)くらいで、それも漁港の堤防沿いを走るだけ。「君を見つけた~この渚」はどこにも出てこない。


「そもそも、今の若者は海にロマンを感じないんじゃないですか。『日焼けがイヤ』『海風はベタベタする』『海に行こうという気にならない』と、海水浴客はピーク時(1985年)の9割減で、多くの海浜リゾートが経営難に追い込まれてます。これじゃあ、夏の日の恋なんてイメージできないですよ。当然、夏の海を舞台にしたドラマも、リアリティーないからと見てくれない」(テレビドラマ制作会社プロデューサー)


■とんでもない金食い虫


“絶滅”したのには、海のロケはカネがかかるという事情もある。波が高くては、手をつないで渚を歩くシーンは撮れないし、台風でも来たら何日も撮影延期。そんな“待ち”のたびに半端でない額の経費が出ていく。

ロケ地は都心から離れているから、出演者やスタッフの泊まりも多く、移動や宿泊の費用もばかにならない。経営が厳しくなっているテレビ局にとって、「夏の海ドラマ」はとんでもない金食い虫なのである。


 水着NGの出演者が増えているのも大きい。


「かつては女性タレントの水着姿はお約束でしたが、今はコンプライアンス尊重で、出演契約の時に拒否されることが多い。水着シーンなしで夏の海ドラマなんて作れませんよ」(テレビ情報誌編集デスク)


 酷暑の夏は、砂漠のサスペンスドラマより、水着姿の美女たちの能天気な恋物語をボーッと見ていたいのに。


(海原かみな/コラムニスト)


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