NHKは5日、番組出演者から性被害を受けた職員がPTSDを発症し、休職した問題について謝罪した。一方で、被害者保護を理由にきっかけとなった番組名や、加害者の出演者名については公表を見送っている。


 発表によると、職員は番組出演者らとの懇親会後、出演者から被害を受けて欠勤・休職に至り、1年数カ月後に職場に被害を打ち明けて別の職場への復職を希望。しかし、3年余り聞き入れられなかったという。人権侵害事案として担当部局に上がっていなかったことから、職員が労組を通じてNHKに申し入れたことで、昨年5月に弁護士などで構成する調査検討委員会が設置された。NHKは今年5月に報告書の提出を受け、公表の運びとなったが、先日の会見に視聴者からは厳しい声が出ている。


 SNSでは〈番組名を明らかにすべきだ〉〈出演者を隠すのはおかしい〉といった反応が大きく、すでに“犯人探し”が始まっている。


 問題の出演者がタレントなのか、文化人・識者なのかも不明のため、濡れ衣を着せられる人も少なくないだろう。


 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、「今回のケースでは企業側が極めて難しい判断を迫られている」と指摘する。


「企業としては、何が最も適切な対応なのか正解が見えにくい。一般企業においても、重要人物を隠すことがありますが、この判断は企業のレピュテーション(評判)リスクを考えるととても難しい。対応を誤れば『加害者を守っている』と受け止められる可能性もあります。ただ、名前を出せば本人だけでなく、所属事務所やスポンサー企業とも『関係を断つべきではないか』という世論にさらされ、対応を迫られることになります」


■NHK職員が特定されるリスクも


 企業にとって名前を公表しないリスクは二の次になりがちという。


「もちろん、無関係な人まで巻き込まれたり、臆測によるネット上での特定や誹謗中傷が広がったりするリスクもあります。

気の毒ではありますが、事実無根なのに巻き込まれる人については、ネットでは確証のないうわさ話として出回るだけ。巻き込まれた人には、『ネットで拡散したユーザーを開示請求して個別に対応してください』といったスタンスを取らざるを得ない企業が多いのが実情です」(井上トシユキ氏)


 NHKの場合も職員側の異動希望はむげにされ、大ごととなった。NHKにとってはとにかく職員の人権を守るのが最優先だ。


「出演者を明かせば、職員が特定されるリスクもある。無関係な第三者が疑われることへの配慮は難しいのが現状です」(井上トシユキ氏)


 とはいえ、NHKは被害者の救済や再発防止策について十分な説明責任を求められる。出演者名を公表しない判断が今後どう影響するのか。


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