【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#120


 特別編「その後のビートルズ~リンゴ・スター」


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 今年の5月1日、テレビ朝日系「大下容子ワイド!スクランブル」を見ていたら、突然リンゴが出てきて驚いた。


 タイトルは「独占取材!85歳のロック魂、ビートルズ来日&ポールとの友情秘話も…」。


 いわゆる「リモート」での出演だったが、とても爽やかで朗らかで、85歳にしては老けた感じがほとんどないことに、より驚いた。


 突然のテレビ出演以外にも、リンゴは日本との結び付きが深い人だった。


「リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド」として何度も来日していることがその象徴だが、もっとも印象的だったのは、1996年の宝酒造の清涼飲料「すりおろしりんご」のCMに登場したことだろう。


 同商品を飲んだ人がおいしそうに「あー、りんご、す(擦)った」(もちろん「リンゴ・スター」にかけている)というと「呼んだ?」と声をかける外国人という役柄での出演。


 何かとギスギスしていくビートルズの中で、まさに一服の清涼剤、いや清涼飲料のような存在だったリンゴは、日本でも、その爽やかで朗らかなイメージを保ち続けたといえるだろう。


 さて、本連載で私は、リンゴのドラムプレーに注目すべきだと繰り返し述べ続けてきた。


 私がビートルズを聴き始めた80年代前半、ジョンやポールの音楽性を神格化する言説は腐るほど聞こえてきたが(たまに腐ったような言説も……)、リンゴのドラムスの再評価の機運が高まったのは、実は平成に入ってからだったような気がする。


 そんな彼のドラムスで、私が特に注目するのは、機械的なエイトビートと、人間的なスウィングの絶妙な配合割合だ。


 ここで特に褒めたのは『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』(67年)。試聴リンク再生時間「0:47」などにあるドラムスの短いフレーズ(フィルイン)を聴いてほしい。エイトビートともスウィングとも言えない絶妙なリズム感が、とても気持ちいい。【オリジナル記事で試聴する


 私にとって、ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツはエイトビート寄り、ザ・フーのキース・ムーンは逆にスウィング寄り。

そして、その中間の最適配合比率がリンゴということになる。


 これは私の個人的な感覚によるところかもしれないが、それでもぜひリンゴのドラムスに注目して聴いてほしいと思う。「ビートルズを聴くということは、リンゴのドラムスを聴くことだ」ということが、よく分かっていただけると思うからだ。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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