【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#20


 今からちょうど10年前の夏、8月27日の夜から翌28日にかけて、「24時間テレビ39 愛は地球を救う」(日本テレビ系)が放送された。1978年に始まり、夏の風物詩として定着した大型チャリティー番組である。


 毎回、その軸となるのが障害がある人たちによる“挑戦”だ。この年も「富士登山をする両足マヒの少年」「佐渡海峡40キロを遠泳リレーする片腕の少女」「本田圭佑選手と交流する義足のサッカー少年」などが登場した。100キロマラソンの林家たい平は、こん平師匠の待つ日本武道館にゴール。約2億3400万円の寄付金を集めた。


 一方、同じ28日夜に、NHK・Eテレではレギュラー番組「バリバラ」が異例の生放送を行った。テーマは「検証!『障害者×感動』の方程式」だ。司会は山本シュウ。障害者自身が出演し、「障害者と性」「障害者虐待」など、タブー視されてきたテーマにも取り組んできた番組だ。笑いとユーモアを交えた作りは、福祉番組の既成概念を打ち破っていた。


 この回で秀逸だったのが、障害があるコメディアン&ジャーナリスト、ステラ・ヤング(1982~2014)の講演を紹介したことだ。


 彼女は、障害者を扱った映像を健常者が見れば、「自分の人生は最悪だが、下には下がいる。彼らよりはマシだ」と感じるかもしれないと指摘。

そして障害者が「健常者に勇気や感動を与えるための道具」となっている状態を「感動ポルノ」と呼び、その弊害を訴えた。


 さらに「バリバラ」は、テレビが「障害者の感動ドキュメント」を仕立てるプロセスを、ユーモアを交えて解説した。まず「大変な日常」を見せ、次に「過去の栄光」と「障害という悲劇」を描く。その上で、「仲間の支え」によって「ポジティブに生きる」現在を見せれば、一丁上がり。これを「不幸で可哀想な障害者×頑張る=感動」という方程式として示した。


 番組のアンケートでは、「障害者の感動的な番組」について、障害者の90%が「嫌い」と回答した。衝撃的な数字である。問題は、テレビの作り手だけではない。私たち視聴者の側にも、この「感動の方程式」を受け入れる素地がある。作り手と受け手の“共犯関係”だ。


 当時、「バリバラが24時間テレビを批判」と話題になったが、これは単純な批判ではない。テレビが生み出す障害や障害者の固定化されたイメージを、作り手も受け手も自己検証してみませんか、という提案だったのだ。


 ステラは「障害は悪ではないし、私たち障害者は悪に打ち勝ったヒーローでもない」と語っていた。それは、「バリバラ」が掲げてきた「障害は個性だ」という考えにも重なる。感動のために障害者を描くのではなく、ごく普通に生きる障害者と、ごく当たり前に向き合う。そんな「バリバラ」のようなテレビ番組が、民放にももっと登場してほしいと思う。


(碓井広義/メディア文化評論家)


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