フィリピンが世界に誇る究極の海の秘境、パラワン州「トゥバタハ岩礁海中公園」。ユネスコ世界自然遺産にも登録されたこの広大な海域は、モンスーンの影響で海況が安定する毎年3月から6月のわずかな期間しか潜ることが許されない、まさに“幻の聖地”だ。
今回、この奇跡の海を巡る6泊7日のダイビングクルーズに挑んだのは、日本人シニアダイバーの北浜剛さん(71)と小原広道さん(77)。年齢を感じさせない尽きることのない冒険心を胸に、世界中のダイバーが憧れる絶海へと飛び込んだ。

その他の写真:日本人シニアダイバーの北浜剛さん(71)提供写真

 旅の幕開けは、いきなりの波乱だった。当初はミンダナオ島のダバオからセブを経由してパラワンへ向かうスムーズな道のりだったが、セブ・パシフィック航空の便が約1時間遅延し、乗り継ぎが絶望的に。急遽、マニラを経由する大回りルートへの変更を余儀なくされた。長時間の移動と空港での待機に見舞われたものの、シニアコンビの情熱は一切揺るがない。「これも旅の醍醐味!」と顔を見合わせて笑い合い、これから待つ大冒険への期待をさらに膨らませていく。船に乗り込む瞬間、二人の表情はすっかり少年のように輝いていた。

 今回の舞台となるのは、定員13名のアットホームなクルーズ船。乗客は10名とゆったりとした空間で、日本人2名に加え、中国やフィリピンなど多国籍なメンバーが集結した。寝食を共にし、すべてを船上で完結させるスタイルは、まさに冒険者たちの共同生活だ。甲板で肩を組み記念撮影をする姿からは、海を愛する者同士の国境を越えた絆が伝わってくる。
フィリピン料理を中心とした新鮮な魚のスープや香ばしいグリル料理を囲み、潮風を感じながらデッキでコーヒーを味わうダイビング談義は、かけがえのない時間となった。

 通常、この秘境ツアーの料金は50万円を下らない高嶺の花。しかし今回は、船のオーナーと懇意にする知人の計らいにより、約30万円という破格での参加が実現した。長年フィリピンと深く関わり、独自のネットワークを築き上げてきたからこその幸運のチケットだ。「夢のクルーズが現実になった」と感慨深げに語る参加者たち。高額ゆえに憧れで終わることも多いトゥバタハだが、「この機会を逃したら一生後悔する」と全員が口を揃え、船上は常に多幸感に満ち溢れていた。

 いざ海中へ潜り込むと、そこには群青色の無限の世界が広がっていた。悠然と羽ばたく巨大なウミガメ、視界を覆い尽くすほど圧倒的なアジのトルネード、そして大迫力で接近してくるサメたち。

 実は北浜さんにとって、トゥバタハのクルーズは昨年に続き2年連続の挑戦。「何度ここへ来ても、潜るたびに新しい発見があり、手つかずの自然の生命力に圧倒されます。一番感動した瞬間? もう、すべてが感動ですよ!」と語るその瞳は、海の輝きに負けないほど眩しかった。

 その言葉の通り、どこを見渡しても息を呑む絶景の連続だ。
サメと並走する瞬間は恐怖よりも胸の高鳴りが勝り、ワクワクドキドキの極致。徹底した自然保護政策によって生態系が完璧に保たれた奇跡の海だからこそ味わえる、至高のひとときである。

 夜は満天の星空の下で語り合い、昼は抜けるような青空の下で笑い合う。まるで青春時代を取り戻したかのような活気に満ち、70代にしてなお未知の世界へ挑み続ける二人の姿は、同乗した多国籍なダイバーたちにも大きな勇気と感動を与えていた。

 ダバオ空港でのトラブルから始まった旅も、非日常の6泊7日を経て「人生最高の体験」へと昇華した。年齢の壁を軽々と越え、サメと泳ぎ、仲間と笑い、大自然と一体になる。パラワン・トゥバタハ岩礁は、訪れるすべての者に究極の感動を約束してくれる、世界最高の冒険の舞台だ。
【編集:Eula】
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