フランスや英国など欧州各地で40度を超える記録的な猛暑が頻発し、空調機器の需要が歴史的な高まりを見せている。かつて欧州においてエアコンは贅沢品やオフィス向けの業務用設備という認識が一般的だった。
しかし、気候変動を背景とした異常気象の常態化により、家庭用エアコンは生活必需品へと変貌を遂げている。この巨大市場をめぐり、日本、韓国、中国のメーカーによる激しい主導権争いが繰り広げられている。

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 欧州市場を読み解く上で不可欠なのが、日本と欧州の住宅事情の決定的な違いである。日本では、室内機と室外機を配管でつなぐ「セパレート型」が圧倒的な主流だ。壁への穴あけを前提としたこの形式は、効率や静音性に優れるが、欧州の古い石造りの建物や景観保護規制が厳しい住宅では、外壁への工事が困難なケースが多い。そのため、欧州ではこれまで、窓枠にはめ込む「一体型エアコン」が一定のシェアを占めてきた。しかし、一体型は冷房能力が低く、騒音も大きいという欠点がある。

 この「設置の壁」を突き崩したのが、中国メーカーが投入した「ポータブル・スプリット型」という新形態の空調機である。これは小型の室内機と室外機を細い配管でつないだもので、窓を数センチ開けて配管を通すだけで設置できる。セパレート型の高い冷房効率と、一体型の手軽さを両立したこの製品群が、欧州の一般家庭で爆発的な支持を得ている。

 現在の欧州市場における売れ筋メーカーの動向を整理する。

 第1位は中国のMideaである。
ポータブル・スプリット型のパイオニアとして、設置の容易さとコストパフォーマンスを武器に市場を席巻した。特筆すべきは、同社が2016年に買収した日本企業「東芝ライフスタイル」とのシナジーである。Mideaの製品群には、東芝が長年培ってきた高品質なモーター制御技術や静音技術、さらには厳格な品質管理ノウハウが惜しみなく導入されている。日本ブランドの高い技術力を背負ったMideaの製品は、単なる低価格製品の枠を超え、信頼性と機能性を兼ね備えた存在として欧州市場で確固たる地位を築いている。本体価格は日本円換算で約81000円から130000円前後のモデルが中心。専門的な大掛かりな工事を必要としないため、即座に涼を求める消費者のニーズを捉えた。

 第2位の中国・Greeも同様の価格帯で猛追している。圧倒的な量産体制を背景に、フランスやスペインなど気温上昇が著しい国々で急激にシェアを拡大している。

 第3位と4位には韓国のLGとSamsungが並ぶ。両社はスマート家電としての利便性で差別化を図る。スマートフォンからの遠隔操作や、部屋の状況に応じて冷房能力を最適化するAI制御技術を搭載。価格帯は130000円から200000円程度と中国勢より高めだが、デザイン性の高さも相まって、住宅の内装を重視する層から強固な支持を得ている。


 第5位には日本のDaikinが位置する。同社は欧州空調市場において、最高級のブランド力と信頼性を誇る。主力は住宅の断熱性能や広さに応じた本格的なセパレート型であり、工事費込みで300000円を超える製品が主流だ。高効率なヒートポンプ技術や圧倒的な耐久性が評価されており、家屋の資産価値を重視する富裕層を中心に、安定した需要を確保している。

 欧州市場における消費行動には、特有の条件がある。第一に、電気代の高騰だ。そのため、単なる冷却能力だけでなく、製品のエネルギー効率が購入の決定的な要因となる。中国メーカーは「安さ」と「手軽さ」に「日本由来の技術力」を掛け合わせることで裾野を広げ、日韓メーカーは「省エネ技術」と「付加価値」で高単価市場を固めるという構図が明確になっている。

 今後の市場動向について、専門家は「欧州の猛暑は一時的な現象ではなく、構造的な気候変動リスクとして認識されている」と指摘する。今後数年で、エアコン未設置の家庭が急速に導入に動くと予測される。

 課題は設置環境の制限と省エネ規制の強化である。アジア各社の激しい技術競争は、既存の建物を傷つけずに設置できる革新的な空調テクノロジーを生み出している。
日本メーカーは、これまで培ってきた信頼性を維持しつつ、欧州の住宅事情にどれだけ柔軟に適応できるかが問われている。各国のメーカーによる競争は、世界的な空調需要の変化を象徴する動きであり、今後さらに加速することは間違いない
【編集:af】
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