2026年8月18日午前7時50分。フィリピン南部サンボアンガ市の名門校「アテネオ・デ・サンボアンガ大学」付属中等部で、平穏な朝を切り裂く銃声が響いた。
生徒たちが登校を終え、授業開始を待つ静かな校内は、一瞬にして恐怖と混乱の渦に飲み込まれた。事件の衝撃は、単なる学校内の悲劇にとどまらず、フィリピン社会に深く根を張る“特権意識”と“権力の横暴”を白日の下にさらした。

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凶行に及んだのは同校9年生、モハマド・マエル・ジャラニ容疑者(15)。胸元には小型ボディカメラを装着し、襲撃の様子をフェースブックで生配信するという、冷酷かつ異様な手口を取った。現地紙フィリピン・デイリー・インクワイアラーなどによれば、少年が所持していたのは2丁の拳銃。1丁は自動連射を可能にするコンバージョンキット付きの「グロック22」、もう1丁は父親名義の登録銃だった。

少年は事件当日、父親の車で学校へ送られた。問題はその“入校ルート”である。通常、生徒は金属探知機による手荷物検査を受ける。しかし、政財界や治安機関の有力者子弟は自家用車で地下駐車場へ直接乗り入れ、検査を事実上免除される“特別扱い”が常態化していた。名門校に漂う特権階級の空気が、危険な銃器を容易に校内へ持ち込ませたのである。

4階の教室前で最初の銃が弾詰まりを起こしたが、少年は即座に調整し、別の教室へ移動して無差別に発砲。
10年生のパトリック・ディラン・ウィーさん(15)が胸を撃たれて死亡し、女子生徒1名が重傷。避難時の混乱で23名が過呼吸や軽傷を負った。少年はその後、自ら頭部を撃ち抜き、搬送先の病院で死亡が確認された。

事件の衝撃をさらに増幅させたのが、少年の父親の肩書きだ。父親はフィリピン税関局(BOC)保安部門のザンボアンガ港地区司令官で、カスタムズ・ポリスを統括する要職にあった。乱射に使われた「グロック22」は政府支給の職務用拳銃であり、もう1丁も父親の登録銃。BOCは事件直後に父親を職務停止処分とし、家庭内での銃器管理の怠慢を厳しく追及している。

少年の精神状態も深刻だった。内務地方自治省(DILG)などのデジタル・フォレンジック解析で、激しい学業ストレスと重度のうつ症状が判明。校内でいじめを受けていた可能性も指摘される。表向きは「成績優秀で大人しい生徒」だったが、裏では過激なオンラインゲームに没頭し、暴力的コンテンツや虚無主義的思想に傾倒していた。今年6月、レイテ島タクロバン市で起きた高校生銃撃事件と同様、ネット上の危険思想が未成年を蝕む構図が再び露呈した。


教育省(DepEd)は心理支援チームを派遣し、学校側は休校措置とともに金属探知機の増設、透明バッグの義務化など厳格な対策を発表。マルコス大統領も「断じて容認できない暴挙」と強い声明を出し、全国の学校の警備体制見直しを命じた。

地元メディアの取材に対し、遺族や住民は「権力者の子供だからと特別扱いし、危険な銃を持たせた結果がこれなのか」と怒りをあらわにする。名門校の“安全神話”は崩れ去り、特権階級の慢心と銃器管理の甘さが生んだ惨劇は、社会に深い傷痕を残した。
【編集:eula】
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