木星の第1衛星イオは、主に岩石でできており、太陽系で最も火山活動が活発な天体として知られている。
NASAの探査機ジュノーがイオへ接近し、地表から数十cm下の温度を測定したところ、地表よりも22℃以上高くなっていることがわかった。
観測したどの場所でも例外なく温度が高くなっており、太陽の光による熱だけでは高温の理由を説明できない。
イオの内部で生まれた熱が、地表へ向かって流れ続けている可能性があるという。
この研究成果は『Journal of Geophysical Research: Planets[https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025JE009622]』誌(2026年7月22日付)に掲載された。
木星の重力がイオを変形させ火山活動を引き起こす
イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4つは木星のガリレオ衛星と呼ばれ、イオはもっとも木星の近くを回っている第1衛星だ。
氷に覆われた仲間の衛星、エウロパやガニメデとは対照的に、イオは太陽系でもっとも水の割合が少ない天体で、岩石と金属が詰まった太陽系一密度の高い衛星である。
イオの地表は火山から噴き出した硫黄の化合物によって黄色や赤褐色に染まり、多くの活火山が活動を続けている。
イオが激しく噴火を繰り返す原因は、木星の巨大な重力にある。
イオの軌道はわずかにゆがんだ楕円を描いているため、木星に近づくときと遠ざかるときで受ける重力の強さが変わり、イオは絶えず引き伸ばされたり押しつぶされたりしている。
繰り返し変形させられることで内部に摩擦が生じ、大量の熱が生まれる現象を潮汐加熱という。
潮汐加熱によってイオの内部に作り出される熱の量は、同じ仕組みで地球の内部に生まれる熱の何倍にもなる。
ただし、潮汐加熱がイオの中でどのように働いているのかは長いあいだわかっていなかった。
これまでイオの熱を調べる手段が赤外線望遠鏡による観測しかなく、赤外線でわかるのは地表の一番上の層の温度だけだったからである。
木星探査機ジュノーがイオの地下の温度を測定
NASAの木星探査機ジュノーには、マイクロ波放射計(MWR)という、物体が温度に応じて出す微弱な電波を受け取って温度を測る装置が搭載されている。
本来の目的は、木星の分厚い雲の下をのぞき込み、大気がどう動きどんな物質でできているのかを調べることだった。
MWRには6本のアンテナがあり、1.3cmから51cmまでの幅広い波長の電波を同時に受け取ることができる。
波長ごとに届いてくる深さが違うため、複数の波長を同時に測れば、深さの異なる場所の温度をまとめて調べられる。
ジュノーはミッションの延長期間に入り、木星の大きな衛星であるガニメデ、エウロパ、イオの3つを観測する機会を得た。
氷に覆われたガニメデとエウロパでは、氷の層がほぼ純粋な水でできていると仮定して数十kmの深さまで探ることができた。
岩石でできたイオの内部まで見通せるとは考えられていなかったため、ボルトン氏は予想外の発見だったと述べている。
地表から数十cm下で温度が22℃以上も上がっていた
ジュノーは2023年12月30日と2024年2月3日の2回、イオの地表から約1,500kmの距離まで接近した。
2回の接近通過のあいだにMWRが測定したのは、地表から数cmの浅い場所から約10mの深さまでの範囲の温度である。
NASAジェット推進研究所のシャノン・ブラウン氏によると、観測したどの場所でも例外なく、地表から数十cm下の温度が地表よりも22℃以上高くなっていた。
太陽の光による熱だけでは、わずか数十cmでこれだけ温度が上がる理由を説明できない。
イオの内部で生まれた熱が地表へ向かって流れ続けていることを示す結果である。
イオの熱の正体は?2つの可能性
観測されたデータについて、研究チームは2つの仮説が考えられるとしている。
1つ目は、熱を下から上へ伝える性質を持つ岩石の層を通って、内部の熱が絶えず地表へ上がってきているという説明である。
この場合の熱の流れは1平方メートルあたり1ワットから3ワットで、狭い範囲で見れば1畳ほどの広さに小さな常夜灯が1つ灯っている程度でしかない。
ところがイオ全体を合計すると、地球の平均の最大30倍のエネルギーが放出されている計算になる。
2つ目は、固まった地殻に覆われて冷えつつある溶岩流から熱が出ているという説明である。
溶岩流を覆う地殻の厚さは9mから11mほどで、冷えかけの溶岩流はイオの地表の約10%を常に覆っている。
どちらが正しいのかを決めるにはさらに情報が必要で、研究チームは結論を出していない。
これまで人類が観測できたのは、地表から逃げていく熱と噴火として噴き出す熱だけだった。
熱が内部から地表へどのように移動しているかを直接調べられるようになった点で、今回の測定は大きな前進となった。
イオの観測は地球の火山の研究にも応用できる
今回の研究に携わり、MWR装置を開発したアサウスウエスト研究所のスコット・ボルトン氏は、岩石でできた衛星の地表の下を見通せたことが、地球の火山の研究にとって重要な意味を持つと述べている。
地球の火山の近くで同じような装置を使えば、地下で温度がどう変化しているかをイオと同じように測れる可能性があり、火山がどのような仕組みで働いているのかを知る新しい手がかりになる。
潮汐加熱は、主星から遠く離れて太陽の光をほとんど受けられない天体にエネルギーと熱を供給する基本的な仕組みでもある。
イオの場合は太陽系でもっとも火山活動の激しい天体を作り出しているが、同じ仕組みは氷に覆われたエウロパやガニメデの地下にある海を凍らせずに保っている働きをしているかもしれない。
ボルトン氏は、潮汐加熱が宇宙のさまざまな天体でどのように働いているのかを調べるうえで、イオを観測することが役に立つという。
まとめ
この研究でわかったこと
- 木星の衛星イオは、地表から数十cm下の温度が地表よりも22℃以上高くなっていた
- 観測したどの場所でも温度が上がっており、太陽の光だけでは説明がつかない
- イオの内部で生まれた熱が、地表へ向かって流れ続けているとみられる
まだわかっていないこと
- 熱が岩石の層を伝わって上がってきているのか、冷えかけの溶岩から出ているのかは決まっていない
- 同じ装置を地球の火山で使えば同じような熱が見つかるかどうかは、これから確かめる必要がある
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References: doi.org/10.1029/2025JE009622[https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025JE009622] / NASA’s Juno Takes Temperature of Jupiter’s Fiery Moon Io | NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)[https://www.jpl.nasa.gov/news/nasas-juno-takes-temperature-of-jupiters-fiery-moon-io/]











