縄文人は寒さに強い。最終氷期を生き延びた祖先の遺伝子を持っていた
三内丸山遺跡の縄文人のジオラマ Image credit:<a target="_blank" href="https://en.wikipedia.org/wiki/File:Sannai_IMG_20161009_143947.jpg">commons.wikimedia</a> / <a target="_blank" href="https://commons.wikimedia.org/wiki/User:G41rn8">G41rn8</a> / <a target="_blank" href="https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.en">CC BY-SA 4.0</a>

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 縄文人は寒さに強い体質だったことが、東京大学などの研究チームにより明らかとなった。

 縄文人42人分のゲノムを解析した結果、脂肪を燃やして体を温める仕組みが強く働く遺伝子を、多くの縄文人が持っていたことがわかった。

 縄文人の祖先は、約2万7000年前にユーラシア大陸東部の集団から分かれた狩猟採集民で、最終氷期の厳しい寒さの中を生き抜いてきた人々だったのだ。

 この研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aea7469]』誌(2026年8月12日付)に掲載された。

縄文人のゲノムに残された寒さに強い体質

 人間の体は住む環境に合わせて少しずつ適応していく。その場所で生きるのに有利な体質を持った人が多く子孫を残せば、その体質を作る遺伝子は世代を重ねるうちに集団の中で増えていく。

 東京大学大学院理学系研究科の渡部裕介特任助教と脇山由基氏、太田博樹教授らの研究グループは、日本列島の各地から出土した縄文人42人分のゲノム解析を行った。

 ゲノムとは、その人が持つ遺伝情報の全体を指す。そのうちの25人分は今回新たに骨からDNAを取り出したもので、年代は約5,400年前から2,300年前にあたる。

 復元した縄文人のゲノムをユーラシア大陸東部(シベリアから東アジア、東南アジアにかけて)の集団と比較したところ、縄文人には寒さに強い遺伝子の型が多く見られた。

脂肪を燃やして熱を作る仕組みが強く働いていた

 人間の体が寒さに対抗する方法は2つある。1つは体を震わせて筋肉から熱を出す方法で、もう1つは褐色脂肪という組織で脂肪を燃やして熱を作る方法である。

 震えて熱を作るやり方は体力を大きく消耗するが、褐色脂肪を使うやり方なら、少ないエネルギーで体の中心の温度を保つことができる。

 褐色脂肪の熱を作る働きを強める遺伝子の型を持つ縄文人は約73%にのぼり、現代の中国人や日本人など東アジアの人々の17%を大きく上回っていた。

 研究グループはさらに、体に脂肪をためこむ働きと、血液中の脂肪を運ぶ働きに関わる遺伝子の型にも、縄文人だけで広まった痕跡を見つけた。

 体を温める仕組みが、複数の遺伝子でまとめて強化されていたのだ。

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収斂進化か。極北で暮らすイヌイットと同じ変化

 脂肪の代謝に関わる遺伝子を調べると、縄文人は東アジアの人々よりも、グリーンランドで暮らす先住民イヌイットに近かった。

 イヌイットは、極寒の地で暮らす寒さに強い集団だ。アザラシなど海の動物の脂肪を多く食べ、その脂肪を熱に変えて体温を保つ体質を身につけてきた。

 縄文人とイヌイットに近い血のつながりがあるわけではないが、遠く離れた集団が寒さという同じ条件に置かれた結果、それぞれ独自に似た体質を獲得したとみられている。

 遠く離れた集団が似た体質を持つようになる現象を、収斂進化(しゅうれんしん)と呼ぶ。

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寒さに強い体質は、最終氷期を生きた祖先から受け継いだ

 今回解析された縄文人が生きた約5400年前から2300年前の日本列島は、最終氷期が終わり、すでに温暖な気候だった。

 なのになぜ縄文人は寒さに強い体質を持っていたのか?

 その理由は縄文人の先祖である、後期旧石器時代の狩猟採集民に関係している。

 研究グループは、解析した縄文人の骨の年代がおよそ3,000年の幅にわたっている点を利用して、遺伝子の型が時代とともにどう増減してきたかをたどった。

 すると、血液中の脂肪の運搬に関わる遺伝子の型が集団の中で急激に増えたのは、最終氷期の間だったことがわかった。

 縄文人の祖先は、東南アジアの温暖な地域から北へ向かって移動してきたとされている。

 地球が最も寒かった約2万7000年前から1万9000年前の最終氷期の最も寒さの厳しい時期、縄文人の祖先の系統はユーラシア大陸東部の集団から分かれて日本列島へ渡った。

 寒さの中を北上する過程で、体を温める遺伝子の型が少しずつ積み重なっていったと研究グループは考えている。

 やがて氷期が終わると海面が上がり、日本列島は大陸から切り離された。

 孤立した縄文人は大陸の人々とほとんど交わらなかったため、氷期に獲得された体質はそのまま受け継がれていったのだ。

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縄文人の先祖の暮らしはどのようなものだったのか?

 研究グループは、縄文人の体の働きを復元する試みには推測の部分が残ると断っている。当時の食生活や環境は現代とあまりに違うからだ。

 それでも、文字も記録も残っていない縄文人の先祖の最終氷期の暮らしについて、骨に残ったDNAが手がかりを与えてくれた。

 日本列島では最終氷期の人骨がほとんど見つかっていないため、縄文人のゲノムは最終氷期を生きた祖先を知る貴重な資料となる。

 現代の日本人にも縄文人から受け継いだ遺伝情報が残っており、肥満や脂質の代謝に関わっている可能性が指摘されている。

 最終氷期の寒さを生き抜くために身についた体質は、今を生きる日本人の体の中にも残っているのかもしれない。

References: Press Releases - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部[https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/11212/] / Ancient Humans May Have Evolved a Remarkable Trick to Survive The Last Ice Age[https://www.sciencealert.com/ancient-humans-may-have-evolved-a-remarkable-trick-to-survive-the-last-ice-age] / DOI: 10.1126/sciadv.aea7469[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aea7469]

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