2026年8月、X(旧Twitter)で14年近く前の投稿が発掘され、世界中のネットユーザーたちをざわつかせている。
2012年10月、あるTwitterユーザーが「Stop chat gpt!!(ChatGPTをやめろ!!)」と読める投稿をしていたのだ。
だが、OpenAIによる「ChatGPT」が世に登場したのは、それから約10年後の2022年11月30日である。
果たしてこれは、未来のテクノロジーを予言した警告メッセージなのか。それとも、単なる偶然なのだろうか。
チャットGPT登場の10年前に投稿された「Stop chat gpt!!」
2012年といえば、初代iPhone登場から5年後。スマホが一気に我々の日常へと入り込んできた時代である。
日本でもスマホの世帯ごとの保有率が49.5%[https://webtan.impress.co.jp/e/2013/06/18/15465]に達し、ガラケーからスマホへと、「携帯電話」の意味や役割が急速に変わり始めていたころだ。
SNSではTwitterやFacebookがすでに巨大サービスになっていた。
Instagramは同年4月にFacebookによる買収が発表されている。一方でTikTokはまだ存在せず、LINEも2011年に開始したばかりだった。
という時代背景を理解したところで、問題の投稿を見てみよう。
投稿の日付は2012年10月5日。「Marieanne(@Meytrullers17)」というアカウントを使用していた人物が、たった一言、こうツイートしていた。
Stop chat gpt!!
今これを読めば、「ChatGPTをやめろ!」という意味にしか見えない。
ちなみに、GPTとChatGPTは同じではない。GPTは「Generative Pre-trained Transformer(生成的事前学習変換器)」の略で、OpenAIが2018年に発表した言語モデルに端を発する名称である。
これは文章などを生成するAIモデルの系列を指す。ChatGPTは、そのGPT系モデルを使って、人間と会話できるようにしたAIサービスだ。
そしてそのChatGPTが一般公開されたのは、投稿から約10年近く経った2022年11月30日のことだった。
そもそもOpenAI自体が設立されたのも2015年であり、この投稿が行わた2012年にはまだ存在していなかった。
果たしてこの投稿者は、10年後に登場するAIサービスを予言し、なんらかの警告を発していたのだろうか?
投稿者「Marieanne」とは何者なのか?
2026年8月、この14年近く前の投稿がX(旧Twitter)上で突如注目を集め、世界中に拡散していった。
8月23日現在、この投稿には21万件を超える「いいね」、約3万7000件のリポスト、3万3000件を超えるブックマークが付くなど、大きな注目を集めている。
SNSでは「この人物は何を知っていたんだ?」「タイムトラベラーなのか?」といった声が上がり、まるで未来から過去へ送られた警告のようだと話題になった。
では、この「Marieanne」というユーザーはいったい何者なのだろう。過去の投稿の大半にはインドネシア語が使われており、内容も日常的なものだった。
プロフィールにはAIやコンピューター研究との関係を示す記載はなく、投稿を見ても、AI研究者やコンピューター技術者だったことを示す情報は確認できない。
投稿の中の自撮りと思われる写真[https://x.com/Meytrullers17/status/265074978720993282?s=20]を見る限りでは、どうやらかなり若い女性のようである。
件の投稿が「発掘」され、話題になったことで、さまざまなメディアが本人への接触も試みたようだ。だが8月23日現在、回答があったことは確認できていない。
本人が沈黙したままである以上、2012年に「Stop chat gpt!!」と書いた時、「Marieanne」が何を意図していたのか、本人の口から確かめることはできていない。
だが、投稿者がインドネシア語を使う、インドネシアとかかわりのある人物とみられることが、大きなヒントとなった。
インドネシアのネットユーザーたちから、この謎を解く有力な手がかりが寄せられたのである。
「gpt」はインドネシア語の略語だった?
インドネシアのユーザーたちが指摘したのが、「gpt」という3文字である。彼らによれば、これは人工知能とは何の関係もない言葉だそうだ。
この「gpt」は、インドネシア語の「ga penting」あるいは「gak penting」を省略した表記だったのではないかというのだ。
インドネシア語の「penting」は「重要な」という意味で、「ga」「gak」は否定を表す口語での表現だ。
つまり「ga penting」「gak penting」は、「重要じゃない」「どうでもいい」「くだらない」といった意味になる。
インドネシアの2012年当時の携帯文化では、メッセージを送る際、単語の母音を省き、子音だけを残して短縮する書き方が広く使われていたそうだ。
日本のネット文化で言うなら、kwsk(詳しく)とかgkbr(ガクブル)かggrks(ググレカス)みたいな感覚だったのだろうか。
となると、件の投稿にあった「Stop chat gpt!!」とは、「ChatGPTを止めろ!」ではなく、「どうでもいい話はやめろ」「くだらないメッセージを送るな」といった意味だったのではないだろうか。
別の投稿でも「gpt」が使われていた
ただし注意したいのは、「gpt」が当時のインドネシアで、「ga(k) penting」を表す定番の略語だった…とまでは、言えないらしい点である。
それに今のところ、投稿者本人が「gptはga pentingの略だった」と説明したわけではない。だが、この説を裏付ける興味深い手がかりが残されていた。
2012年12月16日付の別の投稿で、「Marieanne」は「Stop BC sg gpt tah」という文章を呟いていたのだ。
前述のように彼女は当時かなり若い女性だったことが伺える。そして過去の投稿を見てみると、普段から「今ドキ」の略語だらけの文章を綴っていたようだ。
そしてTwitterのヘビーユーザーでもあったようで、上の投稿と同じ日には「ツイートの数の上限を超えて制限に引っかかっていた」という投稿も。
この投稿を見ても、彼女のインドネシア語のツイートが略語だらけなのが、なんとなくわかってもらえるんじゃないだろうか。
もちろん、本人に聞いたわけじゃないので、本当にこの「gpt」が、「ga(k) penting」を略した表記だった断定することはできない。
あくまでも現時点では、インドネシアの複数のユーザーたちが、その可能性が大きいと解釈しているというだけである。
時代が変わったことで生まれた「未来からの投稿」
こうして見ると、この投稿は未来予知などではなく、言葉が時代を越えたことで、偶然まったく別の意味を帯びてしまったケースの可能性が高そうだ。
これがもし「gpt」という文字列だけだったなら、単なる略語のひとつとしてスルーされていたかもしれない。
だが現代の我々は、「Stop chat gpt!!」という文章を見たら、「Stop ChatGPT!!」と読みたくなってしまうのである。
2012年の彼女は、何気ない不満を呟いただけだったのかもしれない。だが14年後の世界では、未来からの警告のように読めてしまったのだ。
インターネットの世界では、こんなふうに過去の何気ない投稿が未来の出来事と偶然一致し、「未来を予言していた」と騒がれることが時々ある。
例えば2020年には、2013年に投稿された「Corona virus….its coming(コロナウイルスが…やって来るぞ)」というツイートが発掘され、ネットを騒がせたことがある。
ただし、コロナウイルス自体ははるか以前から存在しており、2012年といえば現在MERS(中東呼吸器症候群)と呼ばれる新型コロナウイルス感染症が、国境を越えて騒ぎになっていたころだ。
また、2012年11月13日には@dotNosoというユーザーが、「コービーは最終的にヘリコプター事故で死ぬことになる」という投稿をした。
それから約7年後の2020年1月26日、NBAのスター選手だったコービー・ブライアント氏は、本当にヘリコプター事故で亡くなった。
この投稿も事故後に発掘されて騒ぎになったが、コービー本人がヘリコプターを日常的に使っていたことは有名で、深い意味はなかったのかもしれない。
事故後、投稿者本人もこの古い投稿に戻ってきて、「Fuck. I’m sorry… Fuck fuck fuck(くそ……。本当に残念だ……。くそ、くそ……)」とコメントしている。
いつか「Marieanne」が再びこのアカウントに現れて、「gpt」の意味を説明してくれる日が来れば、この議論にも決着がつくだろう。
それまではこの「Stop chat gpt!!」というわずか3語の投稿は、インターネットの謎の一つとして残り続けることになりそうだ。
References: Someone tweeted 'Stop chat gpt' in 2012, but it likely wasn't a prophecy[https://www.snopes.com/fact-check/stop-chat-gpt-tweet-2012/]











