さて前回、NASAの観測衛星スウィフトを救うために旅立った宇宙機LINKに不具合が発生し、宇宙で回転が止まらなくなる事態に陥っていたことをお伝えしたが、非常に残念な続報が入った。
LINKを正常な状態に戻す作業が進められていたが、残念ながら姿勢を制御することはできなかった。
NASAとLINKの生みの親、カタリスト・スペース・テクノロジーズ社は2026年8月19日、スウィフトの救出を断念したことを発表した。
スウィフトはは、2026年10月頃には地球の大気圏へ落下することとなる。
だがLINKは、不安定な状態ながらも8月下旬頃にスウィフトのそばに接近し、同じ軌道に入る新たなミッションを与えられ、成功すれば最後に別れの挨拶を告げることができる。
回転が止まらなくなったLINKの復旧作業
NASAの観測衛星スウィフトは、大気圏へ落下しかけている。
自力で軌道を上げる装置を持たないため、ロボット宇宙機LINKが3本のアームでつかんで押し上げる計画だった。
ところが2026年7月末、LINKの姿勢を保つリアクションホイールが3つのうち2つ動かなくなり、宇宙で回転が止まらなくなくなるという事態が発生する。
LINKを開発したカタリスト・スペース・テクノロジーズ社は、スウィフトへ向かうために積んでいた電気推進エンジンを使い、回転を止める作業に取りかかった。
作業は成果を上げ、8月6日までに回転は毎秒9度から毎秒1.47度まで落ち、8月11日には新しい飛行ソフトウェアの書き込みにも成功した。
このソフトは残った装置だけで姿勢を保つための新しい制御プログラムで、LINKはスウィフトへ向かうミッションを続行[https://science.nasa.gov/blogs/swift/2026/08/11/nasa-swift-boost-spacecraft-prepares-to-continue-mission/]すると発表された。
姿勢を取り戻せずスウィフト救出を断念
再び準備が整い、希望の光が見え始めた救出作戦だが、LINKの姿勢制御は、最後まで十分には戻らなかった。
スウィフトを掴むには、ぶつからないぎりぎりの距離まで近づき、3本のアームで正確につかむ必要がある。姿勢を細かく制御できないLINKには、危険すぎる作業だった。
新たに修理をする時間も残されていなかった。
スウィフトの高度は8月11日の時点で約347kmまで落ちており、高度が約300kmを下回れば、軌道を押し上げる作業そのものが難しくなる。
2026年8月19日、NASAとカタリスト社は苦渋の決断を下した。LINKによるスウィフト救出作戦を断念すると発表したのだ。
助けることができなかったスウィフトは、2026年10月頃、大気圏に再突入するとみられている。
20年以上、宇宙を見つめ続けた観測衛星スウィフト
スウィフトは2004年11月、宇宙で最も強力な爆発現象であるガンマ線バーストを観測するために打ち上げられた。
当初の計画では2年間の運用予定だった。それが20年以上に渡って観測を続け、2000個を超えるガンマ線バーストの発生源を見つけている。
素早く向きを変えて宇宙の異変に駆けつける力を持つことから、俊敏に飛ぶ鳥、アマツバメ(Swift)の名がつけられた。
ハッブル宇宙望遠鏡が天体に照準を合わせるのに1日か2日かかるところを、スウィフトは数分で追いかけることができる。
宇宙のどこかが光れば真っ先に駆けつける、NASAの初動部隊のような存在だった。
別れの挨拶に向かうLINK、新たなミッションに挑む
スウィフトを助けることが叶わなかったLINKだが、このまま終わりではない。
LINKには、スウィフトと同じ軌道に入って速度を合わせ、間近に接近するという新たなミッションが与えられた。
宇宙機同士がシンクロできるかどうかの実証実験を行うのだ。
もし成功すれば、スウィフトに別れの挨拶をつげることができるだろう。
宇宙機どうしが接近し、同調して飛ぶことができるかどうかを確かめるのは、将来の宇宙開発に欠かせない技術となる。
NASA長官のジャレッド・アイザックマン氏は、「望んだ結果は得られなかったが、挑む価値はあった」と振り返る。
NASA天体物理学部門長のショーン・ドマガル・ゴールドマン氏も、「前例のない日程で進めた史上初の挑戦であり、どんな結果になっても、得るものは大きい」と語っている。
52年前の老兵旅客機、スターゲイザーが空へ送り出したLINKは、スウィフトの手までは届かなかった。
体の自由を失ったLINKだが、よろよろになりながらもスウィフトのそばへ向かうことをやめない。
長年にわたり宇宙を見つめ、我々に知らせ続けてくれた先輩に、最後の挨拶をするために。
References: NASA Updates Next Steps for Commercial Swift Boost Mission - NASA Science[https://science.nasa.gov/blogs/swift/2026/08/19/nasa-updates-next-steps-for-commercial-swift-boost-mission/]











