保守色の濃い二つの法案が参院本会議で可決、成立した。国旗損壊罪法と改正皇室典範である。

 高市政権の政治理念を反映しており、前者は自民、維新の与党と、野党の国民民主、参政などが賛成。後者はこれらの政党に加え、公明も賛成した。
 国論を二分する法案にもかかわらず、熟議が尽くされたとは言い難い。
 国旗損壊罪では法案提出者への質疑が衆参両院で計15時間、改正皇室典範では衆参両院の委員会審議が計8時間にとどまった。
 国旗損壊罪は、公然と国旗を「著しく不快、嫌悪の情を催させる方法」で損壊した場合に刑罰を科す。
 しかし「公然」との範囲や「著しく不快」の基準、処罰対象となる行為の線引きは最後まで明確にならなかった。
 立法事実は乏しく、成立を急ぐ理由は見当たらない。しかも、参院内閣委員会で参考人の識者3人のうち、憲法学者2人が「合憲性を論証することは困難」などと反対意見を述べた。
 看過できないのは「国旗を大切に思う国民感情」を保護法益と位置付けた点だ。国民感情を刑罰で守る考え方は、刑事法体系の根本に関わる。
 内閣法制局の審査を受けていない議員立法で定義や要件が曖昧なため、今後の運用が警察や検察などの現場任せになる懸念がある。
 国民が国旗を敬う気持ちは自然に醸成されるのが本来の姿である。
憲法が保障する表現や思想の自由を脅かしかねず、法成立は民主主義の将来に禍根を残す。
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 改正皇室典範も、大きな疑問が残ったままだ。
 政府は(1)旧宮家から迎えた養子本人は皇位継承資格を持たないが、その男子子孫には資格を与える(2)婚姻後も皇族として残る女性皇族について、住民基本台帳に記録する一方で配偶者と子は一般国民とする-という2点を盛り込んだ。
 衆参両院議長が各党協議を踏まえてまとめた「立法府の総意」では結論が出ておらず、政府が独自に踏み込んだ部分だ。
 男系男子に固執する姿勢は、憲法が定める男女平等の理念にも反している。
 憲法は天皇の地位について国民の総意に基づくと定める。養子制度には、国会でも世論調査でも賛否が割れているのである。
 国民の理解と納得を得る努力を欠き、十分な合意形成を経ずに皇室制度の根幹に手を加えたことは、数の横暴と言うほかない。
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 高市早苗首相は1月に衆院解散を表明した際、「国論を二分する政策に挑戦するため、国民の信任が必要だ」と理由を語った。
 しかし、国旗損壊罪や皇室典範改正について詳しい説明はなかった。選挙の歴史的勝利をもって国民の負託を受けたとは言えない。
 今国会では首相の「答弁回避」も目立った。
出席時間は岸田首相や石破首相に比べても格段に少ない。2法案で首相自らが説明する場面はほとんどなかった。
 国民の総意をないがしろにするような暴走は認められない。
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