本作は、ベトナム戦争に従軍した元米兵アレン・ネルソン氏が、自らの戦争体験と帰還後の葛藤をつづったノンフィクションが原作。戦場で“加害者”となり、帰国後はPTSDに苦しみながらも、後に日本全国で1200回以上の講演を行ったネルソン氏の人生を映画化した。
塚本監督は、ネルソン氏の証言をもとに「戦争加害者の傷」というテーマに挑んだ。撮影はニューヨーク、ベトナム、タイ、沖縄で実施。本作は「第83回ベネチア国際映画祭」コンペティション部門、「第51回トロント国際映画祭」スペシャル・プレゼンテーション部門への正式出品が決まっている。
ベトナムから帰還したアレンは、戦場で目にした光景や、自らが人を殺した記憶によって深いトラウマを抱えていた。大きな音や暗闇に過敏に反応し、わずかな気配にも敵兵の姿を重ねるようになった末、家を追われ、23歳でホームレスとなる。
そんなアレンのもとに、幼なじみで小学校教師のダイアンが現れ、生徒たちにベトナム戦争での体験を話してほしいと依頼する。それは、帰還したアレンが初めて自らの戦争体験を人前で語る機会だった。
映像では、ダイアンに促され、しぶしぶ教壇に立ったアレンが、「ベトナムのジャングルはものすごく暑かった」「虫がうじゃうじゃいて、とても大きかった」と話し始める。仲間の海兵隊員の中には命を落とした者もいたと明かしながら、「でも君たちのパパは、生きて帰ろうと戦っているはず」と、子どもたちの父親を気遣う。
子どもたちからは、「戦場でママが恋しくなった?」「戦いの途中、トイレはどうするんですか?」といった率直な質問が飛び出す。アレンがユーモアを交えて答えると、緊張していた教室に笑い声が広がる。
しかし、ダイアンが「他に質問は?」と問いかけたその直後、ひとりの少女が手を挙げる。「ネルソンさん」と呼びかけるその少女の口から発せられたのは、作品タイトルにもなった衝撃的な一言だった。「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」。アレンが答えられないまま長い沈黙が流れる中、少女は同じ質問をもう一度繰り返す。
戦争を知らない少女の問いは、アレンが心の奥に閉じ込めていた記憶を呼び起こす。同時に、自らの加害の記憶と向き合い、その後の人生をかけて戦争の実態を語り続ける契機にもなる。本編映像は、アレンの活動の原点を描いた一場面となっている。
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