自分の良さを周囲に簡単に伝える方法とは。長崎大学准教授・スピーチコンサルタントの矢野香氏は「人は普段から使っている言葉で判断される」という。
周囲に自分の良さをアピールしたいなら、この“5文字”は使わないほうがいい――。
※本稿は、矢野香『いい人で終わらないリーダーは「決めてから話す」 信頼される話し方の本質』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■人の口癖から分かること
口癖には意味のあるもの、ないものがあります。
意味のない口癖の代表例は「あー」「えー」といった言いよどみ。明らかにノイズ(雑音)なので意識して削除します。
語尾がすべて「~と思います」になってしまうのは、よくある意味のない口癖です。「やろうと思います」ではなく、「やります」と言い切るほうがリーダーとして堂々とした言葉遣いです。できるだけ回数を減らしましょう。
逆に、残したいのは意味のある口癖のなかでも、その人の価値観を表しているものです。
たとえば有名予備校講師の林修先生の口癖、「いつやるか? 今でしょ!」。テレビCMや番組などで「今でしょ」という言葉を繰り返し使い、流行語大賞にもなりました。「やるべきことは後回しにせず、今すぐやった方がいい」という彼の価値観がこのひと言に凝縮されています。

また、ある女性クライアントの口癖は「よく考えて」というフレーズでした。理由を探ってみると、何でもすぐリーダーに聞いて、自分で考えていない若手メンバーに内心苛立っていたとのこと。これも「自分の頭で考え、責任を持って行動するべき」という彼女の価値観が現れている口癖といえます。
口癖は、単なる癖ではありません。あなたが何を大切にしているかを無意識に語っています。口癖をチェックすることでよけいな癖は削除し、リーダーらしい堂々とした話し方に修正する。と同時に自分が何を大切にしているかを確認します。まずは、次のワークに取り組んでみましょう。
■自分の口癖をチェックする方法
口癖のチェック方法は、周囲に協力してもらう方法と自分ひとりで行う方法の2通りあります。
①「私の口癖ってある?」とまわりの人に尋ねてみる
自分では気づかない癖でも、他人はよく見ています。率直に聞くと意外な発見があるかもしれません。
②会議やミーティングで自分の発言を録音し、文字に起こす
長さは3分以上あると理想的です。
3分間に複数回出てきた言葉をリストアップすると無意識の口癖が見えてきます。
【ワークの目的】
口癖は、普段なかなか自覚することができません。自分では気づかないまま、印象を決めている。それが口癖です。まずは現状を知ることが改善の第一歩。このワークで無意識を可視化しましょう。
■自分の「キャッチコピー」を作る価値
次に、口癖から気づいた自分の価値観を、キャッチコピーにしてみましょう。なぜ価値観をキャッチコピーにすべきか。それは価値観に共感し集まった人との関係は、永く深い信頼関係を築くことができるからです。
たとえばあなたの笑顔に魅力を感じて、応援してくれている人がいたとします。もっと笑顔の素敵な別の人が現れたときは、残念ながらあなたからは離れてしまうかもしれません。
しかし、あなたの「いつも笑顔でいたい」という価値観に共感した人は違います。
あなたが笑う余裕もないほど辛いときでも応援しつづけてくれるでしょう。なぜならその人は笑顔のあなたではなく「辛くてもいつも笑顔でいたい」と考えるあなたの価値観を応援しているからです。
だからこそ、キャッチコピーは“今の状況説明”ではなく、“変わらない軸である価値観”をもとに作ることをおすすめします。
たとえば、
「大丈夫」「やってみよう」「応援してるよ」が口癖。

→キャッチコピー「あなたの背中を押す矢野香」「つまり」「要するに」「整理すると」が口癖の人。

→キャッチコピー「わかりやすさがモットーの山田花子」
「なんとかします」「やり切ります」「任せてください」が口癖。

→キャッチコピー「あきらめない佐藤彩」
「ありがとうございます」「助かります」「おかげさま」が口癖。

→キャッチコピー「感謝の高橋美穂」

■「この人になら任せられる」と思われるには
うまいキャッチコピーだと記憶に残っている例を紹介します。
以前、講演会に参加してくれた20代のKさんは、職場でもプライベートの集まりでも、自己紹介では必ず「イエスかハイのKです」と名乗っていました。学生時代は体育会系のサークルに所属していたというスポーツ好きの彼女。先輩に「返事はイエスかハイね」と教え込まれてきたそうです。
このひと言で、何にでも体当たりで挑戦しようとする彼女の価値観がストレートに伝わります。
だからこそ、周囲も彼女には新しいプロジェクトや責任ある仕事を任せることが多くなりました。
30代に入る頃には、先輩からも後輩からも慕われるムードメーカーであり、名実ともにリーダーとして認められていきました。キャッチコピーで自らの価値観を印象づけ、キャリアを切り拓いた好例といえるでしょう。
■キャッチコピーは「どんどん使う」
キャッチコピーを決めたら、そこで終わりではありません。大切なのは、その言葉を日常の中でどう活かすかです。
職場でのプロフィール紹介や、X、Facebook、LinkedInなどのSNSプロフィールには、キャッチコピーを入れましょう。コピーそのままでは不自然に感じるときは、「○○がモットー」というフレーズもおすすめです。プロフィールが肩書きや経歴だけの情報羅列でなく、「自分は何者か」をひと言で伝える場に変わります。
さらに、新しいチームでの顔合わせ、会食などでの自己紹介、プレゼンの冒頭挨拶、名刺交換のひと言など、名前を名乗る場面ではどんどん使っていきましょう。
キャッチコピーは、考えただけでは力を発揮できません。日々、口にして記して繰り返すことで、少しずつ「なりたい自分像」である「セルフ・パペット」としてあなたになじんでいきます。
なお「キャッチコピーは変えてはダメですか?」とクライアントから質問されることがあります。
もちろん変えてかまいません。先ほどのイエスかハイのKさんも、最初に出会ったのは本人が20代の頃。30代後半で再会したときには「さすがにあのキャッチコピーは年齢的にきつくなってきました」と苦笑いしていました。
ただし、一度決めたキャッチコピーは周囲に浸透するまでは変えないようにしましょう。「あの人のキャッチコピーはこうだ」と認識するまでには、およそ10カ月を要するといわれています。
また、自分自身もそのコピーに馴染むのに時間がかかると考えると、最低でも2~3年は同じキャッチコピーを掲げ続けてください。
自分が成長し、もうこのコピーはクリアできた、卒業だと思ったら変え時と考えていいでしょう。会社組織でいう中長期計画のようなものです。むしろ異動や昇進のタイミングでは、新しいキャッチコピーにすることを積極的に考えましょう。
■自分のキャッチコピーのつくり方
口癖には、あなたらしさのヒントがあります。口癖として何気なく繰り返している言葉の中には、あなたの思考や価値観が表れているからです。口癖から見える価値観をもとに、自分自身にキャッチコピーをつけてみましょう。

■ワークの目的
キャッチコピーは単なる自己紹介ではありません。自分の価値観をひと言で表しましょう。キャッチコピーをつくるときは、口癖をきっかけに自分の棚卸しをしながら等身大の自分を言葉にします。自分が何者で、何を提供できる人なのかを言葉にすることです。
■ワークの具体例
口癖:「大丈夫」「やってみよう」「応援してるよ」

→キャッチコピー「あなたの背中を押す矢野香」

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矢野 香(やの・かおり)

長崎大学准教授/スピーチコンサルタント

NHKで主にニュース報道番組を17年担当した後、現職。専門は心理学・コミュニケーション論。政治家、経営者やビジネスパーソンに信頼を勝ち取るコミュニケーションを伝授。著書に『世界のトップリーダーが話す1分前までに行っていること』(PHP研究所)、『最強リーダーの「話す力」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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(長崎大学准教授/スピーチコンサルタント 矢野 香)
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