東京ディズニーリゾートとUSJにファンが生まれるのはなぜか。テーマパークコンサルタントの清水群さんは「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが年1回の国際会議のホストを務めるときに、海外の担当者から2つのことについて驚きの声があがる。
これこそが日本におけるテーマパークの成功を支える日本ならではの要素といえる」という――。
※本稿は、清水群『1割の顧客で9割売り上げる「沼るファン」のつくり方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■テーマパーク成功を支える日本独自の要素
東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンが成功できた最大の理由は何でしょうか。
それは、単なるエンターテインメント施設の提供にとどまらず、「沼るファン」を生み出すための哲学を、日本の文化的土壌に深く根付かせたことにあります。
ユニバーサル・スタジオでは年に1回、各国のパークが持ち回りで会場となる国際会議を開催しています。そこに集まった世界中のユニバーサル・スタジオの担当者は、会議だけではなく、アトラクションやイベントも体験します。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンがホストを務めるときには、海外の担当者から必ずと言っていいほど投げかけられる2つの驚きの声があります。
それは、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、世界のユニバーサル・スタジオの中で一番きれいだ(清潔だ)」「日本のスタッフは、なぜあんなにもゲストのことを察することができるのか」というものです。
この「清潔さの徹底」と「察する力」こそが、日本におけるテーマパークの成功を支える日本ならではの要素です。
ディズニーやユニバーサル・スタジオが持っている「世界観を構築する圧倒的なパーク設計力」という土台に、日本人の持つ「細部へのこだわり」と「察する力」という磨き上げられた2つの文化的な強みが掛け合わされたということです。
だからこそ、両社は日本で特筆すべき大成功を収め、沼るファンの強固なコミュニティを築き上げることができたのです。
■合理性と非合理性を掛け合わせる
ここで重要なことは、「パーク設計力」という合理的な構造と「細部へのこだわり」「察する力」という非合理的な人間力が、それぞれ単独では機能しないという点です。

ディズニーランドやユニバーサル・スタジオのパーク設計は、心理学・脳科学・動線設計などの科学的知見を駆使して、徹底的に合理的に計算されつくした結果です。
しかし、どれほど完璧な設計でも、そこで働くスタッフの「察する力」や、夜間の徹底的な清掃という「狂気的なこだわり」が欠ければ、体験はすぐにコモディティー化します。合理的な計算は、なんとなく真似できるからです。
一方で、合理的な設計がなされていなければ、単なる“不便な施設”になりがちです。どれほどプロ意識の高いスタッフが集まっていても、数万人のゲスト全員に目が行き届くわけはありません。
スタッフの気づきは、あたりまえの親切にとどまってしまいます。非合理的な感動は、生まれません。
成功の鍵は、合理性と非合理性の掛け合わせにあるのです。
■「沼る」に必要な3つの要素
それでは、沼るファンはどのように増えるのでしょうか? その疑問を解くために、「沼る」という現象を、「推し活」の心理メカニズムから考察してみましょう。
人が対象に熱狂し、応援したくなる心理には、つながり・自己効力感・自発性という3つの要素が不可欠だと言われています。これはスタンフォード大学オンラインハイスクール校長の星友啓氏が提唱する「心の3大欲求」です。
ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンをよく見れば、この3要素が巧みに設計されていることがわかります。

(1)つながり(Connection):孤独ではない、受け入れられているという感覚
「つながり」とは、単なる物理的な接触ではなく、「ここは私の居場所だ」「この人たちは私をわかってくれている」という心理的な絆です。
例えば、ディズニーランドの「バースデーシール」――誕生日だと伝えるともらえるシールです。これを貼って歩いていると、すれ違うキャスト全員から「おめでとう!」と声をかけられ、ときにはキャラクターやほかのゲストからも祝福されます。1人の客が「祝福される主役」に変わり、パークとの強いつながりを感じます。
このつながりを生み出す源泉が、「スタッフの微差への気づき」です。スタッフがゲストのわずかな差に気づいて特別扱いすることで、ゲストの心理的欲求が満たされるのです。
■「隠れミッキー」が満たす人間の欲求
(2)自己効力感(Self-Efficacy):私は知っている、私が役に立っている
自己効力感とは、推し活における「私が支えている」「私が貢献した」「私は特別なことを知っている」という感覚です。
ディズニーランドの「隠れミッキー」や「BGS(バックグラウンドストーリー)」の発見もその1つです。隠れミッキーとは、パーク内の壁や地面に隠されたミッキーマウスの形をした模様です。BGSとは、例えば「この窓にはこんな物語がある」という秘密のストーリーです。これらを見つけたときに、ゲストは「この秘密を知っているのはごく少数のファンだけ」という優越感を抱くのです。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのスーパー・ニンテンドー・ワールドで使用する「パワーアップバンド」もそうです。
このバンドを購入すると、ゲストのアクションがゲームの点数として反映されます。
自分の点数によってチームが勝利した場合には、「私が頑張ったから勝てた」という強烈な貢献感を味わえます。
「自己効力感」を刺激するのが、「ゲスト側の狂気的なこだわり」です。企業が仕込んだ「こだわり」をゲストが発見することで、彼らは自信と優越感を深め、沼にはまっていくのです。
■「私もやりたい」が推し活のエネルギーに
(3)自発性(Spontaneity):やらされるのではなく、やりたくて動く
自発性とは、企業が提供する楽しみ方だけでなく、自分なりの楽しみ方を見つけ、能動的に動くことです。これが推し活のエネルギー源になります。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィーンイベント「ゾンビ・デ・ダンス」では、ゲストが動画を見て振り付けを覚えて、会場で一緒に踊ります。参加するために事前の自発的な努力を行うのです。時間と労力をかけた分、当日の熱狂が大きくなります。そして、次回も参加しようと思います。抜け出せなくなるのです。
「隠れミッキー」を見つけたゲストは、ほかにもあるのではないかとまた探し始めます。
「こだわり」を数多く用意することで、自発性を刺激するのです。
つながり・自己効力感・自発性という3つの心理スイッチを押すことで、企業は沼るファンを増やすことができます。そのためには、「誰でもできる」ことを完璧に実行するだけでなく、「誰もやらない」領域に経営資源を効果的に投下することが重要です。
「誰もやらない」領域、あなたはその領域に経営資源を投下できますか?

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清水 群(しみず・ぐん)

テーマパークコンサルタント

日本で唯一ディズニーランドとユニバーサル・スタジオ・ジャパンという2大テーマパーク出身のテーマパークコンサルタント。2016年に起業、株式会社スマイルガーディアンを設立。「沼るファン」を生み出す独自メソッド「2%の法則」によるサービス研修や年間50回の講演のほか、多種多様な企業のコンサルティングも実施している。

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(テーマパークコンサルタント 清水 群)
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