仕事中の外部からの誘惑を回避するには何をするといいか。実行管理コンサルタントの佐藤彰太さんは「仕事中にスマホ通知などの外部情報により離脱しそうになったら、誘惑を受け入れる姿勢を自分自身に示したうえで、実行をためらうようなハードルを課すことが効果的だ」という――。

※本稿は、佐藤彰太『絶対に「終わらせる」時間術』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■いつも使う逃げ道に「名前」を付ける
たとえば、ある症状に悩まされてきた人が「あなたは○○症です」と診断されたとする。すると「なんだ、そういう病気だったんだ」と納得して、むしろ安心して治療に臨める。そういう心理作用が働くことがある。
おそらく、客観的に下された診断名によって、自分の心身に内在している症状が、「治療対象」として一気に客体化されるからだろう。それは「病気のせい」であり、しかるべき対処法があるものなのだ、と。
これは「回避の誘惑」にも適用できる。使いがちな逃げ道に「名前」を付けるのだ。
どういうことかというと、「ついタスク中にSNSを見てしまう」という逃げ道を使いがちなら、その症状に「SNS見ちゃえよ星人」と名付ける、という感じだ。
そのほかにも、「ちょっとだけ休もう野郎」「やる気が出たらやるぜ太郎」「明日でいいじゃん大魔神」「気分転換したいな悪魔」などなど。
そして、その逃げ道を使いそうになったら、戦隊ヒーローにでも変身したつもりで「出たな、○○星人! その手には乗らないぞ!」「○○大魔神め! これからは負けないからな!」と唱える。これだけだ。

■自分の中にいる「○○星人」を飼いならす
たびたび誘惑に負けそうになる自分を「なんて僕はダメなんだ」と責めても、自分を追い詰め、自己肯定感が下がるだけ。そうではなく、まず自分の逃げ道の傾向を把握し、「そうか、○○星人が僕をさらおうとしてるんだな。これは守ってやらなくちゃ」と意識する。自分という弱い存在を誘惑から守り、完遂に向かわせるイメージだ。
回避の誘惑は、たいてい、つかみどころがない。でも、それを名前ひとつで擬人化・客観視すると、あたかも目の前に現れた「敵」を倒すかのように撃退できる。
「○○星人」なんて荒唐無稽だと思っただろうか。しかし、これはコーチングの世界では「感情の分離」と呼ばれ、よく使われる手法。あなたもぜひ一度、試してほしい。
■「脱線のハードル」を高くする
外部からやってくる感覚的な刺激は、逃れようにも逃れられないことがある。
視覚、嗅覚、聴覚への魅力的な刺激によって、集中力が切れる。その魅力的な刺激に、意識がすべて持っていかれてしまう。

こうなると、意志の力はほとんど頼りにならない。
そこで、別の対策をたてよう。すなわち、「タスクから脱線するなら、これをやってから」という「脱線のハードル」を設けるのだ。
たとえば、うっかりスマホを出しっぱなしにしていて、タスク中に、ふと手に取りたくなったとする。「何となく手に取ったが最後、SNSを見はじめて気づいたら30分が溶けていた」というのが今までのパターンだったかもしれない。
でも、その際にひとつ「脱線のハードル」を設けておくと、話が変わってくる。
たとえば、「脱線する前に、今、取り組んでいるタスクを確認する」「ここまでの途中経過を、ざっと見直す」「脱線後に戻ってくるタスクを、脳内でシミュレーション」などでもいいだろう。
とにかく「脱線前に、ひと手間かける」ルールを設けることがポイントだ。
■「意識のフック」をタスクに引っかける
ハードルを設けるメリットは2つある。
まずひとつ。いったん「ハードルを越える」という工程を挟むことで、誘惑から意識が逸れ、脱線せずに済む可能性が出てくる。
そして2つめ。
本当に脱線したとしても、ハードルを越えていることで、いわば「意識のフック」がタスクに引っかかった状態になり、タスクに戻ってきやすくなる。
知らないうちに時間が溶けるのは、決まって「何となく環境に流されて脱線したとき」だ。だから、まず自分の「脱線傾向」を把握し、脱線したくなったときに必ず越えなくてはいけないハードルを設けておく。すると、タスクそっちのけで脱線してしまうという完全敗北は避けられるのだ。
■誘惑を受け入れ、「スクワット50回」を設定
このときの、「ハードルの高さ」は要検討だ。
一番いいのは脱線しないことだから、何時間でも溶かしかねないような“強い誘惑”ほど、「越えるのが大変なハードル」を設けておくことが理想となる。
たとえば、うっかりスマホの通知を切るのを忘れていて、動画サブスクのアプリが、「ドラマ『○○』の最新話、ただいま配信中!」という通知を表示したとする。
それがずっと追いかけていたドラマだったら、すぐにでも見たくてたまらなくなってしまう。もはやタスクへの集中は風前の灯……いや、もうほとんど切れている。
ここで何となく誘惑に流されたら、もうその日のタスクが未遂に終わることは不可避。かといって、「ダメダメ、集中集中!」とハッパをかけても、おそらく効果は薄い。
まずは、誘惑を受け入れる姿勢を自分自身に示そう。
そのうえで、実行をためらうようなハードルを課すのだ。たとえば「スクワット50回」なんてどうだろう(笑)?
■脳内で開催する「対策会議の中身」
言っておくが、そのドラマを永遠に見てはいけないわけではない。その日のタスクを完遂したら、堂々と見ていいのだ。しかも、スクワットなしで!
では、スクワット50回のハードルを越え、「タスクを中断した」という罪悪感まで背負ってドラマを見るか。それとも最後までタスクを終わらせてから、晴れやかな気分で見るか。
この選択肢ならば、後者のほうが合理的かつ楽しい、という判断になるはずだ。
誘惑に流されるかどうかは、ちょっとした心の扱い方で変わる。
この対策のポイントは、「高いハードルを越えてまで脱線したくはない」と自分に思わせること。そのために、ぜひ「脱線がめちゃくちゃ面倒くさくなる対策会議」を脳内で開催してほしい。
意志の力に頼るのではなく、こうした遊び心溢れる仕組みによって、自分の弱さと向き合い、うまく誘惑を交わしていこう。

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佐藤 彰太
実行管理コンサルタント

1991年、北海道旭川市出身。高校卒業後、海上自衛隊に勤務。
徹底した時間管理と厳しい規律の洗礼を受け、「先を読んで行動する力」を身につける。その後、衛生兵(准看護師)として自衛隊横須賀病院勤務を経て、2013年研修商材を販売するフルコミッションセールスマンとして独立。3カ月間成約ゼロ、無収入が続くなか、忙しいのに余裕がある人の行動を徹底的に研究し、最短ルートで成果を出す方法を追求。その頃から徐々に成約件数が増え始め、やがてトップセールスに登りつめる。2017年株式会社シャイニングステージを設立。以降、商品開発やセールスシステムの開発コンサルティングを1万5000件以上実施。その傍ら、1000人以上の経営者に「時間管理術」を指導するように。「計画」「着手」「完遂」の不全に対応した、実践的かつ再現性の高い時間管理術が「時間を味方につけ、人生を充実させる技術」として好評を博している。

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(実行管理コンサルタント 佐藤 彰太)
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