■「お腹いっぱい」なのに1日575kcal減
「食事量を減らすのがつらい」という方に、ぜひ知ってほしい考え方があります。食べる量をほとんど変えずに、摂取カロリーを大幅に下げる方法です。「エネルギー密度(1gあたりのカロリー濃度)」を下げるという発想となります。
エネルギー密度とは、食べ物1gあたりに含まれるカロリーのこと。チョコレートは約5kcal/g、白米は約1.7kcal/g、きゅうりは約0.1kcal/g。
同じ100gでも、何を食べるかによって摂るカロリーは50倍近く変わります。胃袋が感じる「重さ」や「かさ」はほとんど変わらないのに、です。
ペンシルベニア州立大学のロールズらは、24名の若い女性を対象にクロスオーバー試験を行いました。同じ食事メニューを好きなだけ食べてよい条件で、「通常版」と「エネルギー密度を25%下げた版」の2パターンで2日間ずつ食べてもらいました。
その結果、エネルギー密度を25%下げただけで、摂取カロリーが1日あたり575kcalも減少したのです。これは24%減という大幅な削減です。
しかも、空腹感や満腹感の評価は両条件で変わりませんでした。「お腹いっぱい」という感覚を保ったまま、カロリーだけが減っていたのです。
■「重さ」と「体積」で満腹を感じる
575kcalといえば、ご飯茶碗3杯分ほどに相当します。それを「我慢した」わけではなく、自然にカロリーが減っていた、という点が驚くべきところです。
私たちの胃は、カロリーではなく「重さ」と「体積」で満腹を感じます。水分や食物繊維をたっぷり含む食材は、胃袋の中でかさを取って満腹シグナルを出してくれます。
一方、揚げ物や菓子パンのようなエネルギー密度の高い食品は、小さな体積にカロリーが凝縮されているため、胃が「まだ足りない」と感じているうちにカロリーが積み上がります。
ただし「野菜だけ」に偏るのは禁物です。野菜はエネルギー密度が低くて優れた食材ですが、それだけではたんぱく質が不足します。
鶏むね肉・魚・豆腐・卵といったたんぱく源を必ず添えながら、野菜でかさを増やす。この組み合わせが、長続きするエネルギー密度低下の基本形です。
食べる量ではなく、食べるものの「密度」を意識するだけで、お腹は満たされながら体がじんわり変わっていきます。
今日の1アクション
今夜の夕食の主菜に、千切りキャベツ・もやし・きゅうりなど生野菜を1つかみそのまま添えてみてください。料理を作り直す必要はありません。かさが増えた分だけ食事のエネルギー密度が自然と下がります。
■たんぱく質の力で食欲を抑える
「食欲を我慢する」というのは、長続きしない作戦です。意志力は消耗品で、夜になるほど力が落ちていきます。
ところが、自由に食べていいのに食欲が静まる状態を、特定の栄養素が作り出してくれることが研究によってわかっています。その栄養素がたんぱく質です。
ワシントン大学医学部のワイグルらは、19名を対象に約16週間の実験を行いました。
最初の2週間は「通常の食事(たんぱく質は総カロリーの15%)」で体重を安定させ、次の2週間は総カロリーを変えずにたんぱく質の割合だけを30%に増やした食事に切り替えました。
そして残りの12週間は、その高たんぱく食を「好きなだけ食べてよい」という条件で続けてもらいました。
自由に食べてよくなったにもかかわらず、参加者たちは自然と食べる量が減り、1日の自発的カロリー摂取量が平均441kcalも低下しました。その結果、体重は平均4.9kg、体脂肪は平均3.7kg減少しています。
食べる量を指示したわけでも、カロリーを制限したわけでもありません。ただ、たんぱく質の割合を上げただけで、体が「もういい」というシグナルを出す時間が延びたのです。
■白米やパンは血糖値を上げやすい
たんぱく質の腹持ちがよい理由は2つあります。1つは消化に時間がかかるため。もう1つは、たんぱく質がGLP-1やコレシストキニン(どちらも「もう十分」と脳に伝える消化管ホルモン)の分泌を促すためです。
GLP-1は、簡単に言うと「お腹いっぱい」を脳に伝えるホルモンです。対して白米やパンのような精製炭水化物は消化が速く、このシグナルが出るより先に血糖値が上がって下がります。これが「食後2時間でまたお腹が空く」現象の一因です。
実践として覚えておきたいのが、「主菜を先に決める」という順序の発想。ご飯の量や野菜の量より前に、主菜に登場しやすいたんぱく源を何にするかを決める。
鶏むね肉・豆腐・卵・魚・豆類、どれでも構いません。主菜が決まれば、食事全体のたんぱく質量が自然と底上げされます。
ただし、腎臓に持病のある方は注意が必要です。たんぱく質の代謝は腎臓への負担を伴うため、摂取量については担当医に相談してください。
今日の1アクション
次の食事の献立を考えるとき、最初に「たんぱく源は何にするか」だけを決めてみてください。鮭の塩焼きにする、卵を使う、豆腐を入れるなど、それだけでよいです。ご飯やおかずの量は後で考えればいい。主菜をたんぱく質で固定するだけで、1食のたんぱく質量は自然とかさ上げされます。
■食物繊維がダイエットにぴったりな証拠
食物繊維というと「腸によい」という漠然としたイメージはあっても、ダイエットとの関係を“具体的に”説明できる方は少ないかもしれません。実は、食物繊維は体重管理において、複数の面で同時に働きかけてくれる「お腹の掃除役」のような成分です。
オタゴ大学のレイノルズらが行った大規模な系統的レビューとメタ分析では、食物繊維の摂取量が多い場合、食物繊維の摂取量が少ない場合と比較して、全死亡・心血管死亡リスクが15~30%低く、体重・血圧・コレステロール値も意味のある形で改善していることが示されました。
繊維量が多いだけで、これほど多くの指標が同時に動くというのは、日常の食事における食物繊維の地位がいかに低くなりがちかを示しているともいえます。
ウェイクフォレスト大学のヘアストンらは、1114名を対象に5年間の追跡調査を行い、水溶性食物繊維の摂取量と内臓脂肪(お腹の奥につく脂肪)の変化を詳細に調べました。
水溶性食物繊維を1日10g増やすごとに、5年間の内臓脂肪の蓄積ペースが3.7%遅くなっていたと報告されています。
■コンビニで買える「もち麦」が大活躍
内臓脂肪は、肝臓や膵臓など大切な臓器の周囲に積み重なる脂肪で、皮下脂肪と比べて生活習慣病との関係が深いとされています。その蓄積ペースを、食事の変化だけで意味のある形で抑えられるという事実は、見過ごすには惜しい発見です。
食物繊維が体重管理に役立つ理由は、腸内細菌のエサになるだけではありません。水溶性の食物繊維は胃の中で水分を吸って膨らむため、少ない量でも満腹シグナルを脳に届けやすくします。
さらに消化を遅らせることで、食後の血糖値の急上昇を抑え、いわゆる「血糖スパイク」後の強烈な空腹感を防いでくれます。
急に大量に摂ると腸が張ったり、ガスが出やすくなることがあるため、白米にもち麦を少量混ぜる、毎食に野菜を1皿プラスする、間食をナッツや果物に変えるといった小さな変化から始めるのがお勧めです。
1つ1つは地味な変化ですが、それを積み重ねることで、腸と代謝の両方が少しずつ整っていきます。派手な食事制限よりもこの繊維の習慣が、長期的には体を確実に変えていきます。
今日の1アクション
白米を炊くとき、もち麦を大さじ1杯だけ加えてみてください。もち麦には水溶性食物繊維のベータグルカンが豊富に含まれており、食感もプラスされます。準備時間は2分。今日の夕飯から試せます。
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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学教授
シカゴ大学大学院言語学部博士課程修了、オズグッドホール・ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得退学。心理言語学、法言語学、コミュニケーション論を専門とし、学術的な知見を「今日から使える知恵」に翻訳することをライフワークとし、著書は70冊を超える。56万部を突破した『科学的に証明された「すごい習慣」大百科』(SBクリエイティブ)のほか、『科学的に元気になる方法集めました』『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』など、科学の力で日常を変えるシリーズは累計137万部を突破。NHKラジオ「ラジオ深夜便」レギュラー・パーソナリティをはじめ、ラジオ・テレビ・新聞・雑誌・WEBなど多彩なメディアで、専門家としての視点を発信中。
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木島 豪(きじま・ごう)
東京メディカルクリニック平和台駅前院 院長
東京医科大学卒業後、東京医科大学病院循環器内科へ入局。循環器専門医と内科認定医を取得後、平成20年より現職。老化防止と体質改善を行う治療法に着目し、内科、皮膚科などの一般診療を主に行いつつ、予防医療を目的としたアンチエイジング内科を併設。
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(明治大学教授 堀田 秀吾、東京メディカルクリニック平和台駅前院 院長 木島 豪)

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