健康維持に控えるべき飲み物は何か。医師の池谷敏郎さんは「お米やパン、甘いものを控えていてもダイエットが進まずに血糖値が怪しいときは、飲み物を疑ってみるといい。
甘いという意識がないのに糖質を含むものは要注意だ」という――。
※本稿は、池谷敏郎『血管の専門医が30年間欠かさない すごい習慣』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
■糖質制限を成功させるために持ち歩いたもの
糖質制限を成功させるための第一歩、それは「自分が口にしている食品に、どれくらいの糖質が含まれているか」を頭に入れておくことです。
私もゆる糖質ライフをスタートした当初は、ポケットサイズの「糖質量事典」を常に持ち歩いていました。そして、食事の前にさっととり出し、これから食べる食材やメニューの糖質量をチェックする。これを、徹底して習慣にしていたのです。
実際に調べてみると、予期せぬ発見の連続でした。「ヘルシーだと思っていたあの根菜が、意外にも糖質たっぷりだった」と驚いたり、逆に「こってりしたステーキや揚げ物も、衣に気をつければ糖質は心配ないな」と安心して箸を伸ばしたり。
最近は、スマホで食品の写真を撮ったり、商品のバーコードを読み取るだけで糖質量がわかるアプリなどもありますから、それらを活用するのも便利でしょう(私が糖質制限を始めた当時は存在しませんでした……)。
複雑な食事記録機能は使わず、単に「この食材の糖質は?」と検索することに特化したシンプルなアプリもあるので、自分が使いやすいものを探すのも楽しいと思います。
最初は毎回調べるのが手間に感じるかもしれません。しかし、繰り返しているうちに、よく食べる食品の糖質量は自然と頭の中に定着していきます。
一度覚えてしまえば、調べなくても感覚的に正しい選択ができるようになりますよ。
■甘くないけど血糖値が上がる「隠れ糖質」
「糖質制限を頑張っているのに、なぜか全然やせないんです……!」
ゆる糖質制限を指導した患者さんの中には、そんな訴えをしてくる人が時々いらっしゃいます。食事の内容を聞いてみれば、主食のご飯やパンはしっかりと控えている……しかし、詳しくその食生活を掘り下げてみると、こうした患者さんたちからは、ある共通点が見えてきます。
それは、無意識のうちに口にしている「隠れ糖質」の存在。本人は糖質を減らしているつもりでも、知らず知らずのうちに糖質の高いものを摂取し、それがダイエットを邪魔しているケースがよくあります。
一番多いのが、「甘くないから大丈夫」と思い込み、お煎餅やあられ、スナック菓子を口寂しいときにつまんでしまっているケース。これらは塩味や醤油味ですが、原料は米や小麦、ジャガイモといった「糖質の塊」です。体内に入れば、ケーキを食べたときと同じように血糖値を急上昇させます。
「甘くない=糖質が少ない」ではないことを、肝に銘じておく必要があります。
次に注意したいのが、ヘルシーなイメージの強い「野菜」です。もちろん葉物野菜は積極的にとるべきですが、土の中で育つ根菜類(ジャガイモ、サツマイモ、レンコン、ニンジンなど)やカボチャは、お米やパンと同じくらい糖質が高い食品です。
例えば、ポテトサラダやカボチャの煮付けは、野菜料理というよりも「主食」に近い存在。
少量ならまだしも、お茶碗一杯分食べていればご飯を抜いた意味はゼロ。
■現代特有の落とし穴といえる食材はこれ
そして、現代特有の落とし穴と言えるのが「果物」です。「果物はビタミンもとれるし体によい」と思われがちですが、最近の果物は昔とは別物だと考えてください。品種改良が重ねられ、驚くほど糖度が高くなった果物は、もはや「天然のスイーツ」。
特に果物に含まれる果糖は、中性脂肪に変わりやすいという特徴もあります。健康のためにと毎日甘い果物を食べていれば、やせないのは当然とも言えます。
主食を半分にしたり、低糖質食品をとり入れたりと工夫をしているのに、こうした「隠れ高糖質」で帳消しにしてしまっては本当にもったいないことです。
まずは、自分が「健康的だ」「甘くない」と思い込んでいる食品を、疑ってみることから始めましょう。成分表示を確認し、正しい知識で食材を選び直せば、停滞していた体重は必ず動き出します。
図表2の「要注意な隠れ高糖質食品」一覧をぜひ頭に入れておいてください。
■血糖値を乱高下させる危険すぎる飲み物
主食は半分にしている。隠れ糖質もとっていない。
なのに、ダイエットが進まず、血糖値も怪しい……そんなとき、真っ先に疑うべき「犯人」は、飲み物です。
糖質の多い食べ物を控えることを頑張っていても、甘い飲み物を習慣にしている限り、その努力は水の泡になってしまいます。ゆる糖質制限を成功させるための最大の敵、それは「清涼飲料水」です。
まず、コーヒーや紅茶など、「飲み物に砂糖を足す」という習慣がある場合、やめられるならばやめたほうがベター。どうしても甘味をつけたいなら、エリスリトールやラカントなど、糖類ゼロの甘味料を使うことをおすすめします。
そして、一番気をつけて欲しいのが、ペットボトル入りのジュースやコーラなどの清涼飲料水です。これらに注意が必要な理由は、単に糖質量が多いからだけではなく、その「吸収スピード」にあります。
ご飯やパンなどの固形物は、噛んで消化されるまでに時間がかかるため、血糖値の上昇はある程度緩やかです。
一方、液体である清涼飲料水はそうした消化のプロセスをほぼ経ずに、そのまま小腸へと直行します。その結果、糖分が短時間で大量に血液中に流れ込み、血糖値をジェットコースターのように急激に跳ね上がらせてしまいます。
■血管にとって最悪のシナリオを避ける
特に、清涼飲料水に使われる「異性化糖」は、血管の敵とも言えるもの。異性化糖はトウモロコシやジャガイモなどのデンプンを酵素で反応(異性化)させてつくった「液状の糖」のこと。

商品の原材料名では、「果糖ブドウ糖液糖」「ブドウ糖果糖液糖」などと表記されています。
異性化糖は砂糖と違い、温度が低いほど甘みが強く感じられるのが特徴。そのため、冷やして飲む清涼飲料水のほか、アイスクリームなどに多用されています。砂糖よりも安く大量生産でき、液体なので溶かす手間もかかりません。
その手っ取り早さは私たちの体内でも発揮されます。すでに分解された状態に近い異性化糖は、飲んだ瞬間に小腸から吸収されます。これが「血糖値の急激なスパイク」を招いてしまうのです。
例えば、運動中や風呂上がりの喉が乾いているときに冷えたスポーツドリンクを一気飲み――などは、血管にとって最悪のシナリオ。大量の糖質を一瞬で体に叩き込むことになり、強烈な血糖値スパイクを引き起こしてしまいます。
■やせ型でも「急性の糖尿病」に陥るメカニズム
特に暑い時期などは糖分を多く含む清涼飲料水を水代わりに飲み続けることで、「急性の糖尿病」に陥ることがあります。
喉が渇く



甘い飲み物を飲む



血糖値が急上昇する



高血糖によりさらに喉が渇く



また飲む

こんな悪循環で、最悪の場合は意識障害を起こして倒れてしまうことも。一般に、「ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)」と呼ばれるこの現象は、肥満の人だけでなく、やせ型の人や若い人にも起こりうる怖い病気です。

血管を守りたい皆さんは、飲み物は基本的に「水」か「お茶(無糖)」を選択することを基本としていきましょう。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)

池谷医院院長、医学博士

1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎 イラストレーション=小坂タイチ)
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