■健康体に欠かせない不飽和脂肪酸
栄養素は、体の様々な場所を巡り、消化・吸収され、活用されます。糖・脂質・タンパク質が体内でどのように変化するかという代謝の流れを理解することは、栄養学を深く学ぶ上で欠かせません。
少し内容は難しくなりますが、体の仕組みの「中心」を一緒に丁寧に押さえていきましょう。
我々は食を通じて33種類の栄養素を取っており、この栄養素は糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルに大別されます。
糖質には、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース、ラクトースなどの糖(糖類)が含まれます。糖質と食物繊維を合わせて炭水化物と呼びます。脂質には、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、コレステロールなどがあり、この中の不飽和脂肪酸には体内で合成できない必須脂肪酸も存在します。
不飽和脂肪酸の中で、炭素間の二重結合を一つ持っているものを一価(いっか)不飽和脂肪酸、複数持っているものを多価(たか)不飽和脂肪酸と呼びます。
脂肪酸はメチル基とカルボキシ基を両端に持っており、その間は炭素が連結した直鎖(ちょくさ)となっています。ヒトではメチル基の炭素を1番目として数えて、9番目以降の炭素に脂肪酸デサチュラーゼによって二重結合を導入できますが(9番目と10番目の炭素間で二重結合ができる)、これより手前の炭素には二重結合を導入できません。
■魚食「n-3系不飽和脂肪酸」のチカラ
この酵素による二重結合の導入は滑面小胞体(かつめんしょうほうたい)で行われます。
6番目の炭素(6番目と7番目の間)に二重結合を持っている脂肪酸をn-6(ω6)系多価不飽和脂肪酸と呼び、リノール酸とアラキドン酸があります。
これらのn-3系とn-6系の多価不飽和脂肪酸は食事から摂取しなければいけない必須脂肪酸です。リノール酸からアラキドン酸、α-リノレン酸からEPAとDHAを体内で合成することもできますが、必要量を合成できないので、アラキドン酸、EPA、DHAは必須脂肪酸となっています。
EPA、DHA、アラキドン酸は体内で重要な役割を果たすと考えられています。疫学調査では、魚の消費量の低い国ほどうつ病の有病率が高い、また、母親の妊娠時の魚食習慣が少ないとIQの低い子どもの割合が高くなることが指摘されています。
魚食の中に含まれるEPAとDHAなどn-3系不飽和脂肪酸がこの要因であると指摘されています。n-3系不飽和脂肪酸が脳に及ぼすメカニズムはまだ明らかになっていませんが、少なくとも魚を食べてn-3系不飽和脂肪酸を摂取することのメリットは大きいといえそうです。
■記憶能力に欠かせないビタミンB1
ビタミンB1(チアミン)は水溶性ビタミンです。ビタミンB1の欠乏症として運動障害を引き起こす脚気が有名です。脚気の症状はビタミンB1の補給により改善されます。
一方、重度のビタミンB1の欠乏症はウェルニッケ・コルサコフ症候群です。この主症状は記憶能力の低下です。
ビタミンB1欠乏や脚気はあまり聞かれなくなりましたが、アルコール依存症では体内のビタミンB1量が低下してウェルニッケ・コルサコフ症候群に陥りやすくなります。日本では100万人以上がアルコール依存症ですが、少なくともその数%はウェルニッケ・コルサコフ症候群による記憶障害を持つといわれています。
認知症の発症過程にもビタミンB1欠乏が関与しているのではないかともいわれています。
■脳を疲れにくくする糖分とビタミンB1摂取
ビタミンB1はピルビン酸からアセチルCoAを生成するピルビン酸脱水素酵素、TCA回路のα-ケトグルタル酸脱水素酵素の補酵素として働きます。そこで、ビタミンB1欠乏により特にTCA回路の障害が導かれ、エネルギー産生ができなくなります。
脳の神経細胞は常にグルコースやケトン体の分解によるエネルギー産生を必要としているため、ビタミンB1欠乏は特に脳への障害を導きます。記憶の中枢である海馬はエネルギー不足の影響を受けやすく、ビタミンB1欠乏により海馬に神経変性が起こり、記憶能力に永続的な障害が生じます。
以上のように、記憶するにはグルコース(糖分)とビタミンB1が必要ですので、勉強(デスクワーク)する時には糖分とビタミンB1の両者を補給して、海馬が活動しやすく、また、脳を疲れにくくすることが、効率よく勉強するコツであるといえるでしょう。
■筋肉のオン・オフを握る栄養素
マグネシウムは骨の構成成分です。体内の6割のマグネシウムが骨に存在し、カルシウムと置換された形態でヒドロキシアパタイトに含まれます。
血液中のマグネシウムの濃度が低下すると副甲状腺ホルモンが分泌され、マグネシウムの骨からの溶出が増大して、血液内のマグネシウム濃度が保たれます。
筋肉の収縮と弛緩においてマグネシウムとカルシウムの作用は拮抗しています。筋細胞の小胞体からカルシウムイオン(Ca2+)が細胞質内に放出されると筋細胞が収縮します。
一方、マグネシウムイオン(Mg2+)が小胞体のカルシウムポンプに結合すると、このポンプが活性化してCa2+が小胞体内に取り込まれます。その結果、細胞質内のCa2+濃度が低下して筋細胞は弛緩します。
■脳を目覚めさせるマグネシウム
神経伝達においてもMg2+は重要な役割を果たしています。NMDA型グルタミン酸受容体は、イオンチャネル共役型受容体です。
Mg2+はこの受容体の開口口を塞いでいるため、グルタミン酸が結合するのみではチャネルが開口しません。グルタミン酸の結合に加えて、受容体の周辺に脱分極が起こることで、開口口のMg2+が外れると、ようやく開口します。
したがって、この受容体は強い刺激が起こった時、すなわち、グルタミン酸(リガンド依存性)と脱分極(電位依存性)の二つの条件が揃って初めて開口します。この受容体の別の特徴はCa2+を通過させることであり、脱分極を導くのではなく、Ca2+を細胞内に流入させてCa2+細胞内情報伝達を活性化させます。この受容体は記憶する場合などの強い刺激を受けて働く特殊な受容体です。
興味深いことに、脳内マグネシウム濃度が高まると記憶力がよくなることが示されています。一方、マグネシウム欠乏では記憶力が低下します。マグネシウムはDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、DNA修復関連酵素など、数多くの酵素の補因子にもなっています。
----------
喜田 聡(きだ・さとし)
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授
1994年3月、東京大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士課程修了。東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科教授などを経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授。日本神経精神薬理学会理事、日本農芸化学会理事を歴任。文科省科研費新学術領域(領域提案型)「マイクロ精神病態」領域代表、ムーンショット型研究開発事業として「食の心理メカニズムを司る食嗜好性変容制御基盤の解明」のプロジェクトマネージャーなども務めた。
----------
(東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授 喜田 聡)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
