写真に映る角度によって人の印象は変わるのか。法政大学教授の越智啓太さんは「自分の魅力を最大限に引き出すセルフィー(自撮り)の撮影角度には、科学的な法則が存在する」という――。

※本稿は、越智啓太『恋愛の科学 交際戦略編』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。
■データに基づく魅力的な「自撮り」の撮り方
モテるためには、イケメンや美人でなくても大丈夫ですが、だからといって外見的魅力の効果がなくなったわけではありません。それは確実に存在しますし、アプリではその傾向が大きくなるのも確かです。こういう状況下で私たちにできることは何でしょうか。
ひとつは、自分のプロフ写真を少しでも魅力的にしていくことです。とりあえずここでは、セルフィー(自撮り写真)を使うことにして、では、魅力的なセルフィーを撮るためには、どういう工夫をすればよいかについて検討してみましょう。
具体的な研究を見る前に、まず、みなさん、自分をもっとも魅力的に見せるセルフィーを撮る場合、どの角度から撮影するか、ちょっと実際にポーズをとってみてください(想像でなく、実際に自分でやってみてください)。
ポーズをとったら、その方向と角度を覚えて、ここから先に進みましょう。
■魅力的に映るのは「顔の正面」じゃなかった
シュナイダーとカーボンは、さまざまな角度から撮られたセルフィーを使って、どの角度から撮られたものがもっとも魅力的かを実験しました(※1)。彼らはまず7人(男性3人、女性4人)の顔を3Dスキャンしました。
そして、スキャンした顔の左顔30度、左顔15度、正面、右顔15度、右顔30度の5つの角度からの写真を作成し、172人の実験参加者にこれらの写真の魅力度などについて7段階で評定してもらいました。
その結果、正面から撮られた写真よりも斜めの角度から撮られた顔の魅力度が高く評定され、この傾向は女性で顕著でした。
ベストな角度は、15度で左顔を見せている場合でした。
第2実験で彼らは、角度と上下を組み合わせて、30度左上側と下側からの写真、30度右上側と下側からの写真について同様な検討を行いました。実験参加者は67人でした。その結果、30度左上からの写真がもっとも魅力的だと評定されました。
■自撮りは「左顔を斜め上」からが正解
ところで、先ほどみなさんにもセルフィーを撮るときの角度についてお尋ねしましたが、どの角度だったでしょうか。もし、左顔を斜め上から撮っていたとすれば、それはシュナイダーらの研究で見いだされた「もっとも魅力的な角度」だったということになります。
多くの人は、セルフィーを撮るときにいろいろな角度から試してみて、自分が一番魅力的に見える角度を意識的・無意識的に把握して、その角度から撮っていることと思います。
そのため、多くの人のセルフィーは次第に「左斜め上」の角度に向かって収束していくのです。日本で大学生にこの課題をやらせると、女性だとだいたい7割くらいの人がこの角度からセルフィーを撮っていることがわかります。
そうすると、世の中にあるセルフィーはこの角度が多いということになりますが、本当でしょうか。
■世界中のセルフィー合計3200枚を分析
ソランゾとブルーノは、インスタグラムのセルフィーを大量に集めて、それが上から撮られているか、正面から撮られているか、下から撮られているかを分析しました(※2)。その結果、女性は全体の49.3%が上から撮られていることがわかりました。

男性は正面から撮られていることが一番多かったものの、それ以外のうち61.8%が上から撮られていました。
また、ブルーノらは、2013年12月4日から12日にかけて世界中の都市(ニューヨーク、サンパウロ、ベルリン、モスクワ、バンコク)で撮られたセルフィーを各都市640枚ずつ、合計3200枚収集して、それが撮られている角度について分析しました(※3)。
その結果、通常モードで撮られた写真は右顔のものよりも左顔のものが多く、ミラーモード(左右反転)で撮られた写真は右顔(つまり実際は左顔)のものが多いことがわかりました。
■なぜ「左顔」は魅力的なのか
そもそもなぜ、この角度が一番魅力的に見えるのでしょうか。まず、上からの角度が魅力的に見える理由は幼型(ネオテニー)効果といわれるものです。
とくに女性の場合、幼い特徴を持っているほうが生物学的に生殖に有利なことが多いために、魅力的に感じられるのです。
男性の場合には、幼型効果で魅力が高まることもあるのですが、下から撮影した場合も、あごが強調されて成熟と力強さの印象が高まるために、幼型効果は女性に比べれば弱くなる傾向にあります。
では、左顔はなぜ魅力的なのでしょうか。じつは脳の働きと関連しています。私たちの脳は左脳(左半球)と右脳(右半球)では異なった認知処理をしていることがわかっています。これを大脳半球機能差といいます。
■左顔のほうが表情が豊かで魅力を高める
左脳は言語処理、論理的思考などに優れ、右脳は感情処理、音楽・芸術的知覚などに強いとされます(注1)。
この脳の機能差は、神経経路が錐体交叉により反転するので、反対側の身体に強く現れます。
たとえば、左脳の障害は言語障害と右半身麻痺を引き起こしやすいのはみなさんもご存じだと思います。これは顔でも同様です。そのため、左顔は右顔に比べて、より感情表出が豊かになります。
私たちがセルフィーを撮るときは、だいたい笑顔やハッピーな表情であるため、右顔よりも左顔のほうが表情豊かになり、魅力を高めると考えられるのです。
(注1)実際にはこの脳の働きのプロセスはもっと複雑なのですが、ここではおおざっぱに理解しても問題ありません。
■「アイドル雑誌の表紙」の顔の向きの割合
もし右顔よりも左顔のほうが魅力的ならば、アイドルのグラビア写真も左顔を撮ったものが右顔のものよりも多くなることが予想されます。これは本当でしょうか。
私たちの研究室では、まず、女性アイドル雑誌の「BOMB」の創刊号から最新号までの表紙写真をすべて対象にして、その顔の角度を7段階に分類しました。その結果、正面とやや左顔の比率がもっとも多くなりました。
また、男性アイドル雑誌の「POTATO」と「DUeT」についても同様の分析を行いました。その結果、やはり同様の結果が得られました。
正面写真の比率は男性アイドル雑誌のほうが多いことがわかりました。
■「坂道アイドル」の写真合計2354枚を集計
男女いずれも正面顔がもっとも多かった理由について、岸川・越智は「目が合いやすい」ことを挙げています(※4)。目を合わせることの魅力向上効果については、クロースらが実験的な検討をして確認しています(※5)。
また、私たちの研究室の水戸有希さんは、乃木坂46、櫻坂46、欅坂46、けやき坂46、日向坂46がシングルを発売したときのアーティスト写真合計2354枚についてその顔の向きを集計しました(※6)。
その結果、やはり左顔が写っているものは右顔が写っているものに比べて有意に多いことがわかりました(左=999,右=816,正面=539,p<.001)。グループごとに集計してもこの傾向は同様に見られました。
■クールな印象を強調したいなら「右顔」
セルフィーにおいて、左顔が魅力的なのはポジティブな表情、特に笑顔がより表出されているからだという話をしてきました。
ただ、人によっては、とくに男性などでは、もっとクールなイメージで自分を見せたいという人もいると思います。では、そのような場合には、表情が現れにくい右顔をセルフィーにしたほうがよいのでしょうか。
実際にそうだということがわかっています。右顔の写真は、クールさや知性を強調するのです。
チャーチズらのグループは、世界大学ランキングに掲載された200校からランダムに抽出された30校のウェブサイトに掲載されている教員の広報写真5829枚を分析しました(※7)。

結果を下記に示します。横軸は教員の所属専攻、縦軸は割合で、棒グラフの赤が左顔、黒が右顔を示します。
これを見ると、感情や芸術的な側面が重視される文科系の教員の写真は左顔の写真が、論理や分析的な思考が重視される理科系の教員の写真は右顔の写真が多く掲載されていることがわかりました。

(※1)Schneider, T. M., & Carbon, C. C.(2017). Taking the perfect selfie: Investigating the impact of perspective on the perception of higher cognitive variables. Frontiers in psychology, 8, 971.

(※2)Soranzo, A., & Bruno, N.(2020). Nonverbal communication in selfies posted on Instagram: Another look at the effect of gender on vertical camera angle. PloS one, 15(9), e0238588.

(※3)Bruno, N., Bertamini, M., & Protti, F.(2015). Selfie and the city: a world-wide, large, and ecologically valid database reveals a two-pronged side bias in naïve self-portraits. PLoS One, 10(4), e0124999.

(※4)岸川礼依・越智啓太(2025). 男性アイドルも左顔で微笑むか. 日本心理学会第89回大会発表論文集

(※5)Kloth, N., Altmann, C. S., & Schweinberger, S. R.(2011). Facial attractiveness biases the perception of eye contact. Quarterly journal of experimental psychology, 64(10), 1906-1918.

(※6)水戸有希(2026). アイドルは左右どちらをみせている? ~坂道アイドルグループのアーティスト写真における顔の向き~ 日本心理学会第90回大会発表論文集

(※7)Churches, O., Callahan, R., Michalski, D., Brewer, N., Turner, E., Keage, H. A. D., ... &Nicholls, M. E. R.(2012). How academics face the world: A study of 5829 homepage pictures. PloS one, 7(7), e38940.

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越智 啓太(おち・けいた)

犯罪心理学者・法政大学文学部心理学科教授

1965年、神奈川県横浜市生まれ。92年、学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授(当時)、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。著書に『美人の正体』『犯罪捜査の心理学』、『法と心理学の事典』(共著)ほか多数。

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(犯罪心理学者・法政大学文学部心理学科教授 越智 啓太)

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