健康に良い食事について日々研究が進んでいる。たとえば、血管や心臓の健康を守るには、魚介類の選び方や食べ方を少し工夫するだけでいいという。
内科医の工藤孝文さんが監修した『「血管と心臓にいいこと」、ぜんぶ集めました。』(青春出版社)より、一部を紹介する――。(第1回)
■コレステロール高めでも体に良いイカとタコ
コレステロール値が高い人は、イカやタコはあまり食べてはいけない、と聞いたことはないだろうか。いまもこう信じている人は、早く健康情報をアップデートし、昔の“常識”を捨てるようにしたいものだ。イカやタコ、貝にコレステロールが多いのは本当の話。それでもいまは、これらを積極的に食べるべきだとされている。
考え方が正反対になったのは、イカやタコには交感神経の働きを抑え、血圧を低く保つタウリンがたっぷり含まれているからだ。栄養学の研究が進むうちに、コレステロール値は少々高いけれども、そのデメリットをタウリン効果のメリットが上回る、という結論に大きく変わった。タウリンは貝やエビ、カニにも豊富。コレステロールのことなんか気にしないで、積極的に食べるようにしよう。
ヒラメやフグに代表される白身の高級魚は、家庭の食卓にはなかなか登場させられない。一方、イワシやサバ、サンマ、アジといった安い大衆魚は、気軽に塩焼きや煮付けにして食べることができる。
これらの大衆魚は、背中の青い「青魚」。
■血管や心臓を強くするのは「青魚」
体にいい不飽和脂肪酸の一種、「EPA(エイコサペンタエン酸)」と「DHA(ドコサヘキサエン酸)」がたっぷり含まれている。肉の飽和脂肪酸とは性質が違い、血液をサラサラにする働きがあり、血栓をできにくくして、心筋梗塞の発症リスクを下げてくれる。
マルハニチロと島根大学などの共同研究によると、DHAには認知機能をアップさせる効果もあるという結果が出た。心臓に不安があり、物忘れも増えてきた人にとっても、青魚はこれ以上ないほどおすすめできる食品だ。
血管や心臓を強くするたんぱく源といえば、やはり肉ではなく魚。血液をサラサラにする不飽和脂肪酸の「EPA」「DHA」の供給源になるからだ。毎日、魚を食べている人は、中高年になっても、血管の若さを保てる可能性が高い。
では、どのように食べるのか。刺身や塩焼き、煮付け、天ぷら、フライなど、魚料理のバリエーションはさまざま。そうしたなか、血管の健康維持に最も役立つのは刺身や酢の物、カルパッチョにして食べることだ。じつは調理の仕方によって、EPAやDHAはかなり失われる。
塩焼きやムニエル、煮魚などにすると約2割、揚げ物にいたっては約半分が流出してしまうのだ。
EPAやDHAをまるごと利用したいのなら、生のまま食べるのがいちばん。加熱するのなら、ホイル焼きにして、流れ出る汁も利用するのがおすすめだ。
青魚のEPAやDHAの作用は素晴らしいが、ほかの魚にも目を向けてみよう。
■シワやシミを防いでくれる「赤い魚」
なかでも、「赤い魚」を食卓にもっと上げてはどうか。身の赤い魚といえば、代表的なのはサケ。それだけではなく、タイをはじめとする皮の赤い魚も健康効果が高いものだ。
こうした魚が赤いのは、身や皮にアスタキサンチンというカロテノイドが含まれているからだ。植物プランクトンの一種に多い色素で、食物連鎖によって魚に蓄えられて、身や皮が赤くなっていく。ほかに、エビや桜エビなどの殻にも多く含まれている。
アスタキサンチンの特徴は、非常に強い抗酸化作用を持っていることだ。この働きから、活性酸素の発生を抑えて、動脈硬化を予防してくれる。
シワやシミを防いでくれるのも、中高年にはうれしい効能だ。
シメサバ、煮付け、味噌煮、塩焼き、竜田揚げ、フライ……。サバを使った料理がいろいろあるなか、血管が丈夫で心臓も健康な人は、どのメニューを好むのか。答えはシメサバ。
その逆に竜田揚げやフライなど、揚げ物が大好きな人は、血管がかなり老化しているかもしれない。魚を生で食べると、EPAやDHAを効率良く摂取できるが、ここで取り上げたいのはまた別の話。
■ごはん大盛、丼ものは老化を早める
「糖化」という現象だ。糖化とは、余分な糖がたんぱく質と結びついて、熱が加わって劣化する反応のことをいう。活性酸素による「酸化」と並んで、体を老化させる大きな要因として、近年大いに注目されている。体の組織が糖化すると、「AGEs」という老化を促進する物質がつくり出される。
AGEsは、体のさまざまな部分に少しずつ蓄積。血管では動脈硬化、骨では骨粗鬆症、目なら白内障、皮膚にはシワやシミなどを引き起こし、老化を進めていく。
体の中の糖化は、糖質の多い食品を食べ過ぎるのが大きな原因だ。
血糖値が急激に上がると、血管からブドウ糖が染み出して、細胞などのたんぱく質と結びつき、体温の熱を受けてAGEsが生み出されてしまう。こうした糖化を防ぐには、ごはんの大盛りや丼物など、糖質の多いものを食べないようにするのが肝心だ。
しかし、それだけでは十分ではない。食品自体にもAGEsは含まれていて、消化吸収されると、その一部が体内で蓄積されるからだ。食品中のAGEsは、高温で加熱されるほど多くなっていく。サバ料理の場合、シメサバにはほとんど含まれていない。
■手軽で生魚より栄養抜群な「缶詰」
煮付けや味噌煮にするとAGEsが発生し、塩焼きにすると増えて、揚げ物にするとさらに多くなる。調理法でいうと、「生」「蒸す」「ゆでる」「煮る」「炒める」「焼く」「揚げる」の順にAGEsが増えていく。老化を遅らせたい、心臓病になりたくないと思うのなら、生食や蒸し料理を増やして、揚げ物は少なめにするのが賢明だ。
魚が体にいいことはわかっているが、調理するのが面倒……。料理が得意でない人は、こう思うかもしれない。
そんな人に向けて、手軽な魚料理を提案しよう。サバやイワシ、サンマ、サケなどの缶詰を使うのだ。
缶詰を甘く見てはいけない。旬の脂ののった魚が閉じ込められているので、栄養が抜群なのだ。文部科学省の食品データベースを見ると、サバやイワシなどの缶詰は軒並み、生の魚と比べて、含まれているEPAやDHAがずっと多い。調理に使いやすいのは、味付けされていない水煮缶。汁にも体にいい油がたっぷり入っているので、捨てないでまるごと使おう。
おすすめのメニューは、トマト缶といっしょに調理し、汁ごと食べるトマト煮。トマトに含まれている抗酸化作用の高いカロテノイド、リコピンの作用も加わって、血管を一層若々しくしてくれる。

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工藤 孝文(くどう・たかふみ)

内科医

工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。
著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。

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(内科医 工藤 孝文)
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