※本稿は、加藤俊徳『1万人の脳を見た名医がつきとめた 機嫌の強化書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■健康長寿者に共通する「最高の機嫌脳」
私の人生を振り返ると、脳のすごさを突きつけられるような奇蹟的な出会いが幾度もありました。
その1つが、機嫌脳の存在に気がつくヒントとなったある番組です。20年前に2回にわたり放映されたNHKスペシャル「老化に挑む(1)――あなたの脳はよみがえる/(2)――あなたの寿命はもっと延びる」で、脳科学監修として参加した私は「百歳超えのスーパーエイジャーは、おしなべてストレス耐性が高く、毎日、楽しく活動的で、人生を謳歌している」という調査結果を示しました。
四半世紀近く経った今、世界の認知症研究者らが、同じことを当然のように指摘しています。
20年前の調査結果をひと言でまとめれば、つまり、「健康長寿の人は、おしなべて上機嫌である」ということになるでしょう。ここでそのメカニズムを脳科学的に少し解説すると、鍵はセロトニン、ドーパミン、メラトニンです。
別名「幸せホルモン」とも呼ばれるとおり、セロトニンにはストレスを軽減し、精神を安定させる効果があり、結果的に、意欲や活力を司るドーパミンの分泌を助けます。
さらにセロトニンは分泌の約12時間後から、睡眠を誘発するメラトニンというホルモンに変換されます。すると良質かつ充足した睡眠が可能になり、翌日の目覚めもよくなるのです。
■脳の機嫌値を上げる2つの習慣
この循環が生涯にわたり続くことは、つまり生涯にわたり上機嫌であるということ。
このリレーには、「適度な運動、特に朝日を浴びて歩くこと」と「睡眠の質・量ともに充実させる習慣」が欠かせません。
というのも、上機嫌リレーの始点とも言えるセロトニンは、太陽の光が網膜に入り、脳の視床下部というところに達することで分泌されるからです。
セロトニンは分泌の約12時間後からメラトニンに変換されます。たとえば、朝7時に朝日を浴びれば、19時から徐々に眠くなる。快眠につながる脳内の上機嫌リレーには、太陽の光のなかでも「朝日」を浴びることが効果的ということです。
このように「朝日を浴びて歩くこと」と「質・量ともに十分な睡眠習慣」が脳の機嫌値を上げ、生涯にわたる上機嫌、そして認知症(特にアルツハイマー型認知症)と無縁の健康長寿につながると言えます。
■ハッピーでピースフルな状態を蓄積する
また、よく歩くことは、足腰から全身の健康をつくってくれます。「健康的にキビキビ動ける身体」もまた、上機嫌の源であることは言うまでもありません。
睡眠も運動も毎日のことです。毎日、睡眠と運動を充足させることで、上機嫌という「脳のご機嫌貯金」が増えていきます。そんなハッピーでピースフルな状態の蓄積が、認知機能の維持につながることは、最新の脳科学でも明らかにされてきています。
逆に睡眠不足と運動不足が続くほどに、不機嫌という「機嫌負債」が溜まります。すると自分の不機嫌に無自覚なまま、わけもわからず能率が下がったり、笑顔が消えて周りとギクシャクしたりすることが多くなるでしょう。
そう考えると、人の不幸は、自分の機嫌のコントロールについて無為無策であることから始まると言ってもいいかもしれません。根本的要因である睡眠習慣と運動習慣を改善せずに不機嫌なままでは、行く末は認知症や寝たきりという余生になるかもしれません。
ならば、今から、できるだけ、脳のご機嫌貯金を増やしていく。そうすることで、「元気で長生きの幸せな人生」を叶えていけるというわけです。
■老廃物が認知症を引き起こし、機嫌も悪くなる
深山幽谷(しんざんゆうこく)での山伏修行をしても100歳を超えても元気な「センテナリアン」の境地には、なかなか到達できるものではありません。そこで私は、センテナリアンの機嫌の秘密を知りたいと、国際的に認知症予防の研究と実践をしているアルツハイマー病協会主催の国際会議に10年以上参加しています。
今年(2025年)は、カナダのトロントでAAIC2025が開催されました。認知症予防のための最先端の情報がこの国際会議を介して世界に発信されていきます。
現状、認知症の予防としては、脳に老廃物であるアミロイドベータが溜まらないようにする対策が必要だと考えられています。
認知機能の低下は、40代頃から15~20年かけて進行していきます。
すなわち、脳の老廃物により、意識しないままに機嫌負債が蓄積している可能性があるのです。
■一日いちにちを朗らかに、楽しく過ごす
そのため、国際的には、14のリスク要因に分けて、認知症を約45%予防する目標を立てたプロジェクトが進行しています。
特に高リスクの因子は、難聴と高LDLコレステロール値で、次に、社会的孤立と教育の不足が続きます。
そしてもっとも重要なことは、「一日いちにちを朗らかに、楽しく過ごすこと。クヨクヨとマイナス思考にならず、気分をアゲアゲにして過ごすこと」です。
「最高の機嫌脳」を見せてくれたセンテナリアンの性格こそが、脳の老廃物であるアミロイドベータを溜まりにくくするということまで明らかになっています。
要するに、機嫌がよい人は、脳に老廃物が溜まりにくいのです。
逆に不機嫌が持続することで、「機嫌負債」が増え続けることがわかります。
不機嫌にならず、積極的にご機嫌貯金をすることが、最高の機嫌脳へのアプローチ。機嫌負債は、今この瞬間からでも、ニコニコと口角を上げ、笑顔をつくることで減らすことが可能です。運動系と感情系の脳番地が刺激され、脳を快状態へと導くことができます。
次に示した「機嫌脳チェックリスト」も、センテナリアンの共通点を基準にし、形にしたものです。私自身、センテナリアンの境地に1ミリでも近づけるよう日々、試行錯誤を重ねています。
■「最高の一日」をかなえるための5つの条件
私にとって「最高の一日」とは、次の5つの条件を満たした一日です。この条件を日々クリアすることで、センテナリアンの境地へと少しでも近づけるよう実践しています。
1 夜10時に寝る
2 一カ月単位で一日の平均睡眠時間を8時間30分以上にする
3 朝7時45分までには起き、かつ日中の眠気はゼロ
4 日中の仕事時間、10時間の間に気分が下がることはゼロ
5 朝起きて散歩して、一日4.5km以上歩く
この5つの条件は、何か一つが欠けても機嫌負債が生じます。
しかし、毎日実践することで、
1 わずかな機嫌力の低下にも気がつく
2 そもそもストレスを感じなくなる
3 生きていることそのものが楽しい
4 夜眠るのが楽しみ
5 明日の朝、起きるのが楽しみ
……などなど、数えあげたらきりがないほど、幸福感に満たされた日々を送る
ことができます。
ここで改めて、あなたに問いかけます。
・いまのあなたは本当のあなたですか?
・いつの間にか自分に期待できなくなっていませんか?
・あなたの周りに、あなたの機嫌をよくする人は何人いますか?
人への期待は、その人が期待に応えてくれたならば上機嫌のもととなりますが、逆に期待に反する結果になった場合は、不機嫌の要因となります。他人に期待する前に、自分に期待する練習をしましょう。
自己肯定感が低すぎて、自分に期待することなど到底できない。
人の世話ばかりで、自分に期待している暇がない。
そんな声が聞こえてくるかもしれませんね。
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加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、加藤プラチナクリニック院長
新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、助詞強調おんどく法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、これまでに1万人以上を治療。
※「脳番地」(登録第5056139 /第5264859)は脳の学校(登録4979714)の登録商標です。
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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)

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