認知機能の低下を防ぐには何をするといいか。医師の和田秀樹さんは「認知症の進行を遅らせる秘訣は、体と頭を使い続けることだ。
“全身運動”であるカラオケは脳トレよりも断然、おすすめだ。歌う時にはポイントがある」という――。
※本稿は、和田秀樹『80歳から始めてよかった100のこと』(永岡書店)の一部を再編集したものです。
■40~50代から始まる、のどの筋肉の衰え
よくむせるようになったり、せき込むことが多くなったりしてきたら、「のどの老化」が進んでいるのかもしれません。加齢や病気でのどの筋肉が衰えると、のみ込んだ時にのど仏が上がりにくくなり、誤嚥を起こしやすくなります。
「75歳を過ぎたら、ほとんどの人に嚥下障害の疑いがある」と言う医者もおり、昨今では誤嚥性肺炎で亡くなる人が増えています。のどの筋肉の衰えは40~50代から始まっているので、今からでも「のみ込む力」を鍛えましょう。
嚥下と発声は共通した筋肉を使うため、「音読」でのどを鍛えるといいでしょう。ウォーミングアップを兼ねて、「あめんぼ赤いな」で始まる北原白秋の詩『あめんぼの歌』(五十音)を読んでみましょう。
姿勢を正してお腹をふくらませ、ゆっくり、はっきりと発音することを意識します。のどと舌の筋肉は密接に関係しているため、口まわりと舌をしっかり動かすのがポイントです。
■音読がもっとも脳を活性化させる
また、脳機能イメージング研究のパイオニアで“脳トレ”でお馴染みの川島隆太先生は、「音読がもっとも脳を活性化させる」と言っています。
1日10~15分の音読で、記憶力がアップしたという研究結果も紹介されています。
私が推奨しているのは、覚えたいことを音読する「音読記憶法」です。目で読む、声に出す、耳で聞くことで、大脳の神経細胞が活性化されます。さらに、声帯筋などをくり返し動かすことで、体が覚える無意識の「手続き記憶」となり、忘れにくくなります。
80歳になっても健康体で、老けない・ボケないように、毎日音読に励みましょう。
「声に出して読み上げてみると、そのリズムやテンポのよさが身体に染み込んでくる。そして身体に活力を与える」(齋藤孝/教育学者)――染み込んだ言葉は、心の力につながっていきます。音読で心身に栄養補給を!
■認知症対策には脳トレよりカラオケ
認知症の進行を遅らせる秘訣は、体と頭を使い続けることです。これまで認知症の患者さんを数多く診てきたなかで、認知機能の低下を防ぐには「声を出す」のが重要であることがわかりました。
音読や詩吟、カラオケなどの趣味を楽しんでいる人は、進行が目立たない傾向があるのです。
そこで、認知症対策には脳トレよりも断然、カラオケをおすすめしたいと思います。
認知症予防研究の第一人者である薬学者の杉本八郎先生は、「脳の血流をよくすることが認知症の予防につながる」と言っています。
血流改善の手助けとなるのが、体も頭も使う“全身運動”であるカラオケです。
歌う時のポイントは、大きな声でというよりも「腹式呼吸」で歌うこと。思い切り息を吸って吐いて歌うと全身に酸素がめぐり、副交感神経が優位になって血流がよくなります。また、表情筋をよく動かすと、脳によい影響を与えます。
ストレス発散を目的とした一人カラオケもよいものですが、友人と一緒にカラオケを楽しむといいでしょう。人との交流やおしゃべりは、認知症の進行をゆるやかにすることが期待されます。
■新しい曲への挑戦が前頭葉を活性化
ただ、いつも同じ選曲では、脳は活性化されません。ぜひ新しい曲に挑戦してみてください。流行りの新曲を聴いて覚えてみる。懐かしの曲であれば、歌ったことのないものを歌ってみる。脳の前頭葉は新しいものを見たり、聴いたりすると活性化されます。
新しい刺激は、若々しさを保つ源でもあるのです。
誰もが気軽に楽しめるカラオケで、脳細胞を元気に保ち続けましょう。
「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ」(岡本太郎/芸術家)――太郎さんいわく、「平気で下手に、明るく歌ってやればきっとうらやましがられる」のだから、得意になって気持ちよく歌えばいいのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)
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