※本稿は、河田真誠『質問の魔力「よい質問」がすべてを解決する』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■「みんなの意見を聞かせて」が会議を迷走させる
会議が終わった後、こんなことを思った経験はないでしょうか。
「結局、何も決まらなかったな……」
会議にはたっぷり1時間を使った。参加者からも、それなりに発言はあった。それなのに、仕事が前に進んだ感じがしない。こうした会議が続くと、上司は「最近の若手は積極性がない」「もっと自分の意見を持ってほしい」と考えがちです。
しかし、会議が停滞する原因は、若手の意欲でも、参加者の意見不足でもありません。多くの場合、会議を迷走させている原因は、上司が最初に投げかける「質問」にあるのです。
ある会社の会議で、部長がメンバーにこう問いかけました。
「最近、売上が苦戦している。
一見すると、部下の意見を尊重する、開かれた質問に見えます。しかし、この質問を投げかけた瞬間、会議の迷走はすでに始まっています。なぜなら、質問の範囲が大きすぎて、どうとでも答えられてしまうからです。
■締めくくりに「各自でもう少し考えて」は×
質問された側は、頭の中で迷います。
「売上の話ということは、営業方法について答えればいいのか」
「商品の魅力が足りないという話だろうか」
「価格やマーケティング戦略の問題かもしれない」
考える対象が明確になっていないため、参加者はそれぞれ別の論点について話し始めます。ある人は「営業のやり方が問題だ」と言い、別の人は「商品力が弱い」と主張する。さらに別の人は「価格が高い」と指摘する。発言だけを見れば、活発な会議に見えるかもしれません。
しかし、実際に起きているのは、論点の異なる発言の応酬です。話があちこちに広がり、議論が深まらないため、当然ながら明確な結論も出ません。そして最後は、部長のこんな言葉で締めくくられます。
「いろいろ意見が出たので、各自でもう少し考えておいてください」
これでは、何のために全員が集まったのかわかりません。
ここで厄介なのは、上司自身は「自由に意見を出してもらおう」と、よかれと思って質問しているケースが多いことです。質問の範囲を広くすれば、多様なアイデアが出てくると思っている。しかし実際には、選択肢が多すぎるほど、人は「何から考えればいいのか」がわからなくなります。つまり、自由に答えられる質問が、必ずしも答えやすい質問とは限らないのです。
■“ぼんやりした質問”は部下を沈黙させる
上司が間違えたのは、質問が大きすぎて、ぼやけていたことです。会議で大切なのは、「何について考えればよいのか」を明確にすることです。たとえば、先ほどの質問は、次のように変えられます。
「今月の売上が落ちている原因を、まずは新規顧客の獲得に絞って考えると、どこに課題があると思いますか」
「次に、既存顧客へのアップセルに絞って考えると、どこに課題があると思いますか」
あるいは、さらに具体的に、「リピート率を2倍にするために、来店後のお客さまの体験で改善できる点は何ですか」と尋ねてもいいでしょう。
ここまで質問が絞られていれば、参加者は何について考えればよいのかがわかります。発言が具体的になり、議論も深まり、意思決定のスピードも上がります。
反対に、ぼんやりした質問をされた人は、不安を感じます。
「この答えで合っているのだろうか」
「見当違いなことを言って、評価を下げたくない」
「上司が求めている答えは別にあるのではないか」
そして、最も安全な行動を選びます。
「発言しないでおこう」
しかも、一度「発言しても話がまとまらない」「結局、上司が何を求めているのかわからない」という経験をすると、次の会議ではさらに口が重くなります。上司には「主体性がない」ように見えても、部下の側では「余計なことを言わないほうがいい」と考えを変えてしまっている可能性があるのです。
■毎回「次回考えよう」「いったん持ち帰ろう」は×
会議で誰も発言しないとき、参加者のやる気ばかりを疑ってはいけません。発言しにくい質問を投げていないか、まずは上司が振り返る必要があります。発言の少なさは、人の問題ではなく、質問の「質」の問題であることが少なくないのです。
質問を具体的にすれば、意見は出やすくなります。しかし、活発に意見が出たからといって、有意義な会議になるとは限りません。ある営業戦略会議で、来期の方針について参加者が意見を出し合っていました。
「SNSをもっと活用して、若い世代にアプローチしましょう」
「新規顧客より、既存のお客さまへのフォローを強化したほうが効果的です」
「年4回の紹介キャンペーンを実施して、紹介制度を広げてはどうでしょうか」
ホワイトボードはさまざまな提案で埋まり、参加者も互いの意見にうなずいています。雰囲気のよい会議でした。ところが、最後に進行役の部長がこう言いました。
「どれもいい意見ですね。
結局、どの案を実行するかは決まりませんでした。次の会議でも同じように意見を出し、また結論を先送りする。これを繰り返せば、参加者の間に「会議をしても何も変わらない」という空気が広がるのは当然です。
特に、毎回「いったん持ち帰りましょう」で終わる会議は要注意です。持ち帰ること自体が悪いのではありません。問題なのは、「誰が、何を、いつまでに判断するのか」が決まっていないことです。そこが曖昧なままだと、次の会議でも同じ議論を繰り返すことになります。
■“誰が、どう決めるか”を明確にしておく
意見が出ているのに結論が出ないのは、意思決定の方法が決まっていないからです。組織上は部長に決定権があっても、本人が決定者としての自覚を持っていなければ、会議は「会議のための会議」になります。
アイデアを出すだけ出して、その後どうするかを曖昧にしておくと、参加者の意欲は下がります。そこで、話し合いを始める前に、次の二つを確認しておく必要があります。
「この会議では、どうやって結論を決めるのか」
「最終的に、誰が決めるのか」
部長が決めるのか、担当者が提案して役員が承認するのか。
さらに、「何をもってよい案とするのか」という判断基準も、あらかじめ言葉にしておくことが重要です。
たとえば、「3カ月以内に実行できるか」「既存顧客のリピート率向上につながるか」「短期的な売上ではなく、来期以降の成長につながるか」といった基準です。
基準が決まっていれば、アイデアを出す側も、その条件を意識して考えられます。
■多数決に頼らず、責任を取る人を決める
意思決定の方法として、安易に多数決を選ぶことにも注意が必要です。
多数決は公平に見えますが、最も優れた案が選ばれるとは限りません。多くの人は、前例のない案やリスクのある案よりも、これまでと大きく変わらない無難な案を選びやすいからです。
特に変化の激しい時代には、「まだ誰もやっていない」という理由だけで案を退けることは、大きな機会損失になりかねません。
必要なのは、「うまくいくかどうかは、やってみなければわからない。私が責任を取るから、この案を試してみよう」と言える決定者です。
会議では、全員が納得するまで話し合えばよいわけではありません。
会議で発言が出ない。意見は出るのに、何も決まらない。決まったとしても、実行されない。そんなとき、「参加者の意識が低い」と結論づけるのは簡単です。しかし、その前に上司は自分自身に問いかける必要があります。
「何について考える会議なのかを、明確に示しているか」
「質問の範囲が広すぎないか」
「誰が、どの基準で決めるのかを決めているか」
部下に意見を求めるだけでは、会議は前に進みません。よい会議は、参加者の人数でも、会議時間の長さでもありません。最初に投げかける「よい質問」と、最後に責任を持って決める人の存在なのです。
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河田 真誠(かわだ・しんせい)
経営コンサルタント
1976年生まれ。ビジネスにまつわるあらゆる問題を解決し、理想の未来に導いていく質問の専門家。一方的に知識や技術を教えるのではなく、質問をすることで自らの内側にある答えを引き出していくスタイルを貫く。コンサルタントや研修講師として、多種多様な業界・業種の業績アップ、業務改善をサポートをする。主な著書に『a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776212773/presidentjp-22" target="_blank"質問の魔力』『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(共にアスコム)、『売らずに売れる技術革新的な会社の質問力』(日経BP)、『人生、このままでいいの?』(CE メディアハウス)などがある。
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(経営コンサルタント 河田 真誠)

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