※本稿は、三宅美絵子(著)、岩井俊憲(監修)『アドラー流子育て 50の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「ダメ!」は子どもの心に響きすぎる
「ダメ!」と思わず大きな声で言ってしまう経験、誰にでもあるのではないでしょうか。
危険から守りたいとき、困った行動をやめさせたいときなどに、瞬間的に行動をやめさせるための効率的な言葉かもしれません。
しかし、「○○ちゃん、ダメ!」と大きい声を出して制することは、子どもがまだ小さいと、必要以上に子どもの心に響いてしまうことがあります。
と言うのも、小学校低学年くらいまでの子どもは、「○○ちゃん、ダメ!」という言い方を、「自分はダメな人間なんだ」と受け取ってしまうことがあるのです。
この頃の子どもは、「ママの言うこと=自分の価値」と結びつけて考えがちです。
自分を大事に思える気持ちを作っている時期だからこそ、人格ではなく「行動」に焦点を当てて伝えていくことがとても大切。
たとえば、熱い紅茶の入ったカップに手を伸ばそうとしたときの第一声を、
「○○ちゃん、ダメ!」から、
「○○ちゃん、ストップ!」に変えるだけで、
怒られたと感じることを減らせます。
「ダメ!」という言葉は、短くて強いので、インパクトがあります。ですので同じくらいに、「ストップ!」という言葉を印象的にするために、日常の遊びの中に親の工夫を入れてみませんか?
■子供の価値を認める「名前+プラスの言葉」
私が開催していた赤ちゃんママ向けのお教室の中でお伝えしていたのが、「ストップ遊び」です。
夢中になっている子どもの耳には、聞きなれない「ストップ!」という言葉は、はじめのうちは、ダメに比べて効果があまりありません。
そこで使うのが「よーい、ドン!」。
お子さんたちはこの言葉を聞くだけで、ワクワクと一斉に動き出します。
ワクワクしているときは、吸収もしやすいとき。「よーい、ドン!」とスタートをさせるだけでなく、「よーい、ドン!」と、「ストップ!」をセットにして遊びの中に取り入れましょう。
子どもは急に止まれません。ですので、「ストップ!」の掛け声がかかったら、「だるまさんがころんだ」の要領でその場でピタッとわざとコミカルな動きで止まってみてください。お子さんは大喜びですよ。
「○○ちゃん、ストップ!」の声かけで、お子さんが一瞬でも動きを止められたら、
「○○ちゃん、よく気がついたね!」
「熱くてやけどしちゃうから、触らないでおこうね。」
と、「名前+プラスの言葉」で伝えます。
行動は正しながらも、躊躇したという子どもの行動のよい面を積極的に伝えることで、子ども自身の価値を認めていることが伝わります。
意識をしていても、危険な場面でとっさに「ダメ!」と出てしまうこともあるでしょう。そんなときは、後から
「びっくりさせちゃったね。でも、火傷しないように止めたんだよ。」
とフォローをすれば子どもは「ダメ!」を親の愛情として受け取ることができます。
名前は親から子どもへの一生モノのプレゼント。大事な名前に「ダメ!」をつけることを少し減らして、プラスの言葉をつけることを少しずつ増やしていってみてはいかがでしょうか。
親が「どんなふうに伝えようかな?」と考える時間の分だけ、お子さんの中で自分自身のことを好きになれる心が育っていきます。
■1日4万~6万回の「セルフ・トーク」
あなたが子どもの頃に、よく親や教師など、周りの大人からかけられていた言葉を覚えていますか? いくつか思い出してみてください。
では、現在あなたが「今日はなんだかうまくいかないことが多いな」「また失敗しちゃったよ……」などと、不調を感じているときに頭の中に浮かんでくる言葉は?
表現は違っても、子どもの頃にかけられていた言葉に近いものや、自分が劣等感を感じていることに対しての言葉が混じっていませんか。
私たちが日頃、周りの人とのコミュニケーションツール、伝達の手段として使っている言葉を「外言」といいます。一方、音声を伴わない思考のための言語を「内言」といい、声に出さずに自分に対して発するので「セルフ・トーク」と呼ばれます。
大きくなるにつれて、「外言→内言」へと移行すると言われています。
■「自分は不器用な子」は大間違いだった
「自分は不器用だ」という、セルフ・イメージを持っていたAさんがいます。
「自分は不器用だから、親になってもできないことがたくさんあって、子どもにも夫にも迷惑をかけている」と、感じていたそうです。
非常に責任のある職に就きつつ、3人のお子さんを育てているエネルギッシュな方にもかかわらず、です。
ご自分の中にあるマイナスのセルフ・トークを一度、机の上に取り出してみるご提案をしたところ、親や先生、きょうだいなどから、子どもの頃に
「あなたは不器用な子」
と言われたことを、セルフ・トークとして自分の中に取り入れていたことに気がつかれました。
「自分は不器用な子」
と自分を決めつけていたのです。
でも、子どもの頃も、本当は「不器用」ではなかったのです。
小さい頃の年齢差による“できる”“できない”は、大きいですよね。
入学したての小学1年生と、高学年に入った4年生を比べたら、上手にできないことがあって当然。末っ子だったAさんは、上のきょうだいに比べて、できないことがあるのはあたりまえだったのです。
■自分の限界を勝手に決めて持ち続けない
あなたの中にもありませんか?
「あなたは○○な子=自分は○○な子」
と変換し、自分の限界を勝手に決めて持ち続けている言葉。
一説には、無意識的なものも含めて、一日に4万から6万回も、行われていると言われるセルフ・トーク。このようなマイナスのものもあれば、プラスのものもあります。
「この頃、私がんばっているなあ」
「やっぱり運が強いわ!」
「頼りにできる人がいてありがたい」
言葉には出さなくても、プラスのセルフ・トークが頭の中でくり返されると、元気が湧いてきそうですね。
現在の自分にはすでに必要がなくても、心の中に数十年にもわたってとどまり続ける言葉。
プラスの言葉にも、同じ作用があるといえます。
■プラスの言葉が数十年、子どもを支える
あなたが発するお子さんに対するプラスの言葉がセルフ・イメージを作り、数十年にもわたって、お子さんを支えることになります。
自分を大切に思えたり、励みにしたり、踏ん張れたりと、自分で自分に勇気を与えられる、「自己勇気づけ」の言葉になるのです。
親からあげられる一生涯のプレゼントを今日から渡していきましょう。
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三宅 美絵子(みやけ・みえこ)
公認心理師
保育士・日本アドラー・カウンセラー協会/シニア・アドラーカウンセラー・池川ブレインアナリスト・プロ。1970年東京都千代田区生まれ。アドラー心理学に基づく勇気づけと、笑顔の親子関係・人間関係づくりの専門家。子どもと大人が自分らしく、しあわせを感じながら生きられる関係づくりを支援している。SOH(Seed of Happiness)主宰。2008年より13年間で約8000組以上の親子に関わり、ベビーサイン講師として乳幼児期のコミュニケーション支援を実践。2015年より(有)ヒューマン・ギルド提携講師として活動。アドラー心理学をベースとした『SMILE 愛と勇気づけの親子関係セミナー』の開催や、『ALIVE よりよい人間関係と自分らしい人生を築く対話的コミュニケーション講座』の開発などを行う一方、アドラー心理学の知見を背景に、講座・講演・個別カウンセリングを全国で行っている。 著書に『幸せ親子になれる 0歳からのアドラー流怒らない子育て』(秀和システム)がある。
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岩井 俊憲(いわい・としのり)
ヒューマン・ギルド代表
早稲田大学卒業後、外資系企業の管理職などを経て、1985年、アドラー心理学の普及を目的にヒューマン・ギルドを設立。
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(公認心理師 三宅 美絵子、ヒューマン・ギルド代表 岩井 俊憲)

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