2026年、今年もまたあの熱気が戻ってくる!

65歳以上のシニア世代が集結、チームでダンスを披露する大会「FIDA GOLD CUP」が今秋、いよいよ開幕となる。今年で5回目となるこのダンス大会、普通のダンス大会ではない。
ヒップホップやロックダンスなど、これまで若者のダンスと思われてきたストリートダンスに高齢者チームが挑む。


この大会を一から立ち上げたのが、一般社団法人日本国際ダンス連盟FIDA JAPANの名誉会長を務める杉良太郎さん。役者として数多くの作品に主演する傍ら、世界の恵まれない人々に惜しみなく時間とお金を捧げてきた杉さんが、どうして今、シニア世代にダンスを奨励しようと思ったのだろうか、その並々ならぬ熱意に迫ってみたいと思います。

(構成、文:塩見弘子)

GOLD CUP 発足の原点と想い

「人生で一番大切なものは・・・、お金です。今日は賞金を100万円に大幅にアップしました。生活費を切り詰めました。いのちがけで頑張ってください」

昨年の「FIDA GOLD CUP 2025」の本番前、出場者を前にしてこう激励すると、会場にわあっと大きな歓声があがりました。

大会終了後、閉会の挨拶のなかで、再び「人生で一番大切なものは・・・」と切り出すとああ、お金ね、みんなの顔にそう書いてある。でも、今度は違う。

「健康です。お金より大事なのは、元気で長生きすることです」

その瞬間、みなさん、ハッとしたように、何度も大きく頷かれた。そうなんです、みなさん、一番大事なことをわかっている。健康で元気だからこそ、この日、この場に集い、ダンスバトルにも出場することができた。
健康で長生きが一番。そのためにはどうしたらいいのかーー。 

―――国民の健康全般に関わる仕事をしていただきたい、と厚生労働省から、「特別健康対策監」を永久委嘱された杉さん。高齢化社会とダンスは、どのように結びついていったのだろう。

たまたま小中学校でダンスが必修科目になるという記事を新聞で見たとき、素晴らしい取り組みだと思いました。でも少し気になることもあった。現況では、子どもたちが小中学校でどんなにダンスを好きになっても、一定の年齢になると、学校の必修科目ではなくなり、そこから先はダンスとの縁も途切れてしまう。もったいないなと思いましたね。ふと頭によぎったのは、自分が舞台に立っているとき、バックで踊っていたダンサーたちのことだった。あの人たち、今、どうしているんだろう? プロでダンスをやってる人たちは、体を壊したり、ある程度の年齢になると、いわゆるイベントステージショーに呼ばれなくなる。引退したあと、ほかの仕事に就こうとしても、そう簡単には仕事が見つからない。

―――ダンサーたちには、音楽業界やスポーツ業界のように、権利が守られる仕組み、組織がない。
まず、そこをきちんと確立したうえで、子どもから高齢者まで、社会全体でダンスを楽しむ土壌ができたら、プロのダンサーたちの活躍の場も広がるのではないか。

一般社団法人日本国際ダンス連盟「FIDA JAPAN」の名誉会長に就任した杉さんは、そうした思いもあって、2021年、第一回日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)」を開催した。

もうひとつ、私が注目したのが65歳以上のシニア世代でした。高齢者が健康で長生きするためには、リズムを身体に取り入れていくことが大事です。年をとると、どんどん身体からリズムがなくなっていく。そうならないためにも、食事を作るときも、リズムをとりながら作る。歩くときも、リズムをとりながら歩く。音楽に合わせて、楽しみながら体を動かすことが若さにつながっていくんですね。

ダンスはシニア世代の日常を根本的に変える力を持っている

―――2021年5月、東京・永田町の衆議院第一議員会館で、協力してくれる議員たちを前に、杉さんはマイクを持って立ちあがった。

「各都道府県に65歳以上のメンバーによるダンスチームを結成します。そしてダンスをしている人と、しない人で、健康状態に違いがでるかなど、5年かけて検証していきます。ダンスを通して、健康で長生きできる世界を作っていきたい」

やると決めたら、のんびりとはしていられない。高齢者と若い人とでは時間の重みが違います。
まず「FIDA JAPN」内に65歳以上のシニアのための「ダンス健康クラブ」を創設。そこに登録していただいたダンスチームに大会へ出場してもらい、パフォーマンスを競っていただくことにしました。大会名は「FIDA GOLD CUP」。GOLDには、「Good OLD=古き良き/良い形で歳を重ねている」という意味が込められています。

―――こうして2022年9月、第一回目「FIDA GOLD CUP」がスタートを切った。全世代交流のダンスイベントにはプロチームや高校生チームたちに混じって、ダンスを始めて三カ月という77歳の女性も参加して、勝利チームに貢献。翌年からは少しずつ登録チームも増えてきたおかげで、GOLDダンサーだけで競う大会が実現、次第に「GOLD CUPにはどうしたら出られるのでしょう?」と問い合わせがくるまでに成長してきた。

ようやく4、5年かけてここまできたという感じでしょうか。2027年からは15枠をかけて一日目に予選大会、二日目に本選大会を予定しています。現在、21都道府県、40チームが活躍中。初めて見た方はみなさん「こんなに面白いとは思わなかった」とおっしゃる。「65歳以上の高齢者のダンスなんてどうせつまらないだろうと思っていたが、こんなにステージからエネルギーをもらえて、見にいったこっちが元気をもらえた」と喜びの声を寄せてくださる方もおられた。
47都道府県すべてにGOLDチームを作るのが私たちの目標です。もうひと頑張りだ。

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■GOLDダンサーたちへの期待

――「FIDA GOLD CUP」は、ダンスの美しさを追求するだけでは優勝を手にすることができない。そこがプロのダンサーたちの大会「D.LEAGUE」とは違うところだ、と杉さんは強調する。65歳以上のダンスの審査基準は、「団結力」「表現力」「生命力」「衣装・ヘアメイク」「ダンススキル」の5項目を設定。さらに「GOLDポイント」として、75歳以上のメンバーの人数に応じて加点される。

この審査方法は私が考えました。そもそもプロのように踊ってくださいというほうが無理な注文です。うまく踊りました、ミスがありませんでした、というところに注目して、私は点数をつけたくない。1歳、年齢が変わると天と地獄。自分がその年齢に近くなってくると、本当によく分かってくる。たとえば89歳のチームが90歳になりました。 踊ってもらうと、いや~、1年前は体が動いたのにという方が実に多い。
5歳違ったら、もう別世界です。

―――確かに観客席から見ていると、60代が多いチームは、スピード感もあるし、力強い。つい、そのチームを推したくなる気持ちもわからないわけではないが・・・。

80歳ぐらいの人が、ちょっとペースがゆっくりで、振りを間違えたとか、よろよろっとしても良いと思うのです。その年齢でやってみろと言われたら、誰だってできない。ほかの審査員の方たちにもその点を加味して審査してもらうようにしています。

さらに言うなら、遠いところですと、九州から飛行機に乗ってやってくる。 86、7歳のメンバーがいるチームだと、東京に来るだけで、三分の一くらい体力を使い果たしているんじゃないかな。もう気力だけでステージに立っている。その気力が生命力につながっていくと、私は思っています。

私はこんな風にちょっと甘い見方をするんですが、本人たちに聞くと、そんなことより負けたほうが悔しいという。「自分たちが何で優勝できなかったのか」「あのチームより自分たちの方が良かったんじゃないか」と。
大会が始まるまでは「笑顔で頑張ります!」とか言って私のところへ挨拶に来たのに、終わって負けた後は、遠くからこちらをじーっと睨んでいる。でも実は、そのへんが私の狙いどころでもあります。そういう気持ちを持って大会に出てくるのは最高じゃないですか。こちらは、相手が高齢者だと思うから、優しく接しなきゃと思っていますが、そうじゃない、向こうは完全に闘いに来ている」

―――ということは、杉さんの前でも、泣き言は言わない?

言わないですね。足がつるとか、肩が上がらないとか、膝が痛いとか、一切言わない。自分の出番が終わった後でぽろっと口にするぐらい。私としては、このGOLD CUPのステージ上で、神経痛で痛てててとなったり、筋が突っ張っちゃったり、こむら返りが出ちゃったり、そういう素直なところも出してほしい。

―――頑張って、完璧を目指さなくてもいい。ありのままの姿でいい、と?

全然、かまわない。だって最初、私はメイキャップの仕方から指導したんですよ。みなさん、知らなかったから。

「まつ毛もつけていいですか?」「つけていいに決まってんだよ」

「でも私、85なんだけど、まつげなんてつけたこと今までないんで」

「一枚じゃダメだよ。まぶたの上に10枚、下にも10枚。まばたきをするたび風がおきるくらいつけなきゃだめだ」

「そんなことしたら前が見えない……」

舞台裏では、こんな調子。やるなら、それぐらい徹底しろと言っている。客席から舞台を見てると、どんなにどぎついメイキャップをしていても可愛く見える。その方が映える。薄い化粧だと駄目なんです。

―――このあたりは、やっぱり長年舞台に立ってきた杉さんだからこそ言えることだ。

それがいわゆるエンターテインメントというもの。 ステージに立つ人は、そういう心構えでないといけない。舞台は面白くなきゃいけない。一生懸命なんだけど、面白い。一生懸命やるから、面白いの。そのためには自分はプロなんだという意識を新人でも持たないといけない。汗をかいて、できないところまでやる。そうすると見ている人は勇気をもらえる。私も「今日が命日だ」という覚悟で、毎回、舞台に立ってきた。これが舞台にでる人間の覚悟だ。

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―――杉さんご自身は舞台に立つために、どんな風に体を鍛えられたのだろう。

体を鍛えるという意識は若い頃から持ったことがなかったですね。18歳のとき、歌手になることを夢みて、神戸から東京へ単身上京。奉公先は向島のカレー屋。給料は一切なし、休みは正月元旦の一日だけ。お金がないから、電車にもバスにも乗れない。週に2、3回、歌のレッスンに通うため往復5時間ぐらいは歩いていた。こんなことを2年間も続けていたら、やっぱり足腰が知らない間に強くなる。貧しかったおかげで、体に筋肉の貯金ができたんでしょうね。厳しい芸能界に入ってからも、疲れるってどういうこと?と理解できなかったぐらい疲れなかった。台本はバ―ッと見てパンと閉めたら全部覚えている、覚えようとしなくても覚えられた。でも80代になると、さすがに若いころのようにはいかないですね。今は朝起きると、誰にいわれなくてもスクワットやって、柔軟体操もするようになりました。

■ダンスによる健康効果

―――ヒップホップダンスをしている人と、していない人とではどんな違いがあるのかーー?

FIDA GOLD CUPの参加者に協力してもらい、数年にわたって追跡調査をした検証結果が東京大学先端科学技術研究センター 身体情報学特任講師 宮﨑敦子氏より、今年7月に発表された。それによると、情報を理解・処理して、適切に判断・行動する「認知能力」や、目で見た情報を脳がどう理解し、動きに活かすかという「視空間認知」、音楽に合わせて足を運ぶタイミングを計る「歩行速度」において、両者には差が出ることが示された。早い話が、よく杉さんが言っている「振り付けを覚えることで脳が活性化する」ということが証明されたのだ。

実際、ダンスをしている高齢者はとても元気です。たぶん、これは体を動かしていることに加えて、ダンスの振りつけを覚えたり、音楽のリズムに乗るという、普段の生活では経験できないようなことが元気に繋がっているんだと思うんですね。特にストリートダンスはリズムが速いので、そのリズムについていくこと自体が「脳の活性化」につながっていく。

―――さらに、人から見られることもいい刺激になると?

65歳以上になって、まさか自分がステージに立つとは誰も思っていませんよね。しかもアイドルが着るような華やかなコスチュームに身を包み、濃い舞台メイキャップをして、「見られている」を意識して踊るんだから、体じゅうの細胞が活性化しないわけがない。”見ていただく“ことによって健康になる、同時に”見ている“人、応援する人もどんどん元気になっていく。これが「FIDA GOLD CUP」です

―――ダンスを始めたきっかけについて聞かれた方のなかには、「最初は脳トレのつもりで始めたのですが、今は毎週ダンスに行くことが楽しみになっています。他のメンバーと会って話をすることも楽しみの一つです」という声も。

そう、まず楽しいという気持ちが大事です。楽しいという気持ちが脳を活性化させ、若返っていく。

日頃、自分はもう年だ年だといっている人がいますが、あれは逃げてる言葉かなと思いますね。労わってほしいから言っているのかなって。人間はね、どうしても嘘をつけない瞬間があるんですね。それは、自分が年を忘れて何かに夢中になっている瞬間(とき)。一日のうちに何回もあると思う。たとえば90歳の人なら、朝から晩までずっと自分は90歳だと意識しながら生きていることはまずない。ただちょっと調子が悪い時に自分の年を思い出す。だからダンスバトルで、ステージに立って踊っている時は、おそらくみなさん自分の年のことを思っていないはずです。 自分の若い頃の青春、そのなかで、体を動かしてると思いますね。

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■GOLD CUPが目指す未来、これからの日本

―――現在、ダンス経験者は国内に約2000万人いると言われる。2012年に小中学校でダンスが必修科目となり、2021年に日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」が開幕、シニア世代を対象とした「FIDA GOLD CUP」もスタートする。そしてブレイクダンスが、2024年、パリ五輪の正式競技になった。

非常にいい雰囲気。土壌ができてきた。健康とダンスがひとつに繋がって、日本中に踊れるGOLD世代が増えたらすばらしいことになる。90歳大会、100歳大会だって夢じゃない。すでに引退したプロのダンサーや、長年演出をやってきた振り付けの人たちが 今度は指導者となって戻ってきてくれれば、プロを目指す子どもたちの大きな目標にもなる。全世代がダンスで繋がるという、大きな道の一端が見えてきた。これからが楽しみです。

―――結局、杉さんがこれまでやってきたことは、一見、多種多彩に見えて、実はひとつだったのかもしれません。それは、いくつになっても“やればできる”という自信に火をつけていくこと。その自信が、さらに大きな目標を掲げ、実現する力になっていく。実際、GOLD CUPのチームのなかには、ベトナムやシンガポールでダンス交流を果たし、アメリカのNBAでは「D.LEAGUE」に負けない熱気で会場を沸かせた。

「FIDA GOLD CUP」に出場した人たちが、杉さんに必ず言う言葉があるという。

『目標を作ってくれて、ありがとう』。

ダンスがすべてを超えてひとつになる、その瞬間をぜひ、ご自身の目と耳と肌で体験していただきたい!

舞台と観客がひとつとなる! 熱い旋風が巻き起こる!ありそうでなかった日本発シニアによるダンスバトル


\第5回 FIDA GOLD CUPの詳細はこちらから/

https://fida-gold-cup-3.jimdosite.com/
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