OSAJIは、ブランドの原点となる場所を二つ失いました。
OSAJI一号店である、谷中店。
そして、鎌倉の複合型ショップ「enso」。
ブランドを育ててきた場所が相次いで姿を消すなか、「OSAJIというブランドを、もう一度見つめ直したい」という想いから始まったのが、お匙 京都プロジェクトでした。
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健やかで美しい皮膚を保つためのスキンケアライフスタイルを提案する敏感肌ブランドOSAJI(オサジ)を展開する、株式会社OSAJI(本部:東京都中央区)は、京都・御所南エリアにブランド初となるグローバルコンセプトストア「お匙 京都(オサジ キョウト)」を2026年4月25日(土)にオープン。「食」「香り」「アート」「人」の4つを醸す場所として構想されました。
なぜ今、京都なのか
2025年、OSAJIは大きな転換期を迎えていました。ブランドの一号店である谷中店のクローズ、そして鎌倉の飲食事業を含んだ拠点「enso(エンソウ)」の閉店。大切にしてきた場所が建物の取り壊しという理由で姿を消していく中で、ブランドディレクターの茂田正和は、「OSAJIの思想と美意識を純度高く体現する、新たな拠点を築きたい」という切実な願いを抱いていました。
建物取り壊しのため、ブランドが一時休止中の鎌倉のenso
そんな折に舞い込んだのは、築100年以上の歴史を持つ酒蔵「キンシ正宗」との縁でした。もともと鎌倉にあったensoは元芸妓小屋だった趣ある建物で、旬の野菜を使った発酵料理が楽しめるレストランでした。ensoの世界観を知っていた茂田の交流先の知人(キンシ正宗の親族の方)から「場所を探しているのならば、この酒蔵を使ってくれないか」と声をかけられたのです。
ちょうどブランドの変革期・再定義プロジェクトが重なり、茂田が描いていた「新しさを作るのではない。これまでの歩みを振り返り、ブランドを磨き直す」という構想に合致。
「OSAJI」から「お匙」へ。漢字ロゴに込めたグローバル戦略と、歴史的建造物への挑戦
お匙 京都はブランドロゴと表記をOSAJIと差別化し、ひながなと漢字で表記しています。
プロジェクトの舵取りを担ったのは、経営企画室の津田彩名です。「OSAJIの思想をかたちにする」というミッションのもと、ディレクター茂田の言葉のシャワーを浴びながら、酒蔵という歴史的建造物を現代のOSAJIの美意識と融合させる挑戦が始まりました。
──事業企画担当・津田彩名が挑んだ「ブランドの原点を伝える場所」づくり
「グローバルコンセプトストアの役割として、何をお客さまに伝えていくことが大切かを考えた末、まずはOSAJIのブランド名の由来を知っていただくことからではないか?と思い、コミュニケーションツールとなる漢字を用いた独自の『お匙』ロゴを使用することを提案しました。」
OSAJIの名前の由来は、江戸時代に大名や将軍に仕えた医師を指した「お匙」という呼び名です。当時、医師たちは薬を調合するために匙を用いており、その姿から親しみを込めて「お匙」と呼ばれていました。
私たちもまた、現代における「お匙」として、人々の健やかな暮らしに寄り添う存在でありたい。そんな想いを込めてブランド名をOSAJIと名付けています。
ただ、アルファベットの「OSAJI」だけでは、その背景まではなかなか伝わりません。
一方で、漢字の「匙」を目にすると、多くの方が薬匙や医療とのつながりを直感的に感じ、「なるほど、そういう意味だったのか」とブランド名への理解が深まります。
漢字を再構成するという発想
海外展開を見据えるなかで、日本発ブランドとしてのルーツをどのように伝えるかも重要なテーマでした。そこで着目したのが、同じく「匙」という漢字そのものです。
「匙」の字を構成する要素を見つめ直し、それぞれのパーツに余白を持たせながら再配置することで、新たなロゴとして再構成しました。
特に、「日」と「正」のようにも見える構成は、私たちが大切にしている“健やかな毎日を整える”という思想とも重なります。「ヒ」は「さじ」の形をかたどっているといわれ、実際に「さじ」と読みます。
< 漢字|匙の構成 >
< お匙 京都| ロゴ >
漢字としての意味を残しながら、現代的な記号へと置き換える。
日本の文化的背景を持ちながらも、国や言語を越えて受け取ることのできるアイコンとして、「お匙 京都」のシンボルをデザインしました。
軒先に揺れる大きな暖簾に「お匙」の文字が美しくなびき、通りゆく人たちが足を止める。訪れた人達が写真に収めていく。そんな新たな深化を見せています。
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社内に開発者ゼロ。専用設備の導入と200回以上の試作を重ねた、未知なるお香づくり
次にOSAJIの思想をかたちにするにあたり、欠かせないのは「香り」でした。OSAJIの香りのカテゴリーは伸長し続けており、2025年春にトワレのシリーズを刷新した際には、フレグランス関連の売上が前年比380%と好調に推移、2025年秋には「サロン ド パルファン2025」にも初出展を果たしました。
東京・蔵前にオリジナルのホームフレグランスの調香体験ができる「kako(家香)」がありますが、お匙 京都ではここでしか味わえない、新たな「香りの体験」を生み出す必要がありました。
そこで着目したのがお香です。
日本における「香を焚く」という行為は、平安時代の貴族文化にその源をみることができます。
香料を練り固めたものをあたため、衣や手紙に香りを移す。
季節を映し、個性を映し、ときには想いを届ける。
香りは、目に見えないかたちで存在する、ひとつの文化でした。
──事業企画担当・安藤明日生が挑んだ「誰が作っても美しく仕上がる」線香づくり
「線香は、私を含め社内に開発経験者がいなかったため、孤独かつ独学での挑戦でした。線香における調香の難しさは、香料の液体での状態・線香の燃焼時・線香自体で香りが異なる点。その差をできる限り縮め、自然につながる香りに仕上げることが課題でした。煙の量や燃焼の安定性、折れやすさなど検証項目は多岐にわたり、200回以上の試作を重ねました。」「さらに、ワークショップでどなたが作っても市販品に近い品質に仕上がるよう、オリジナルの型の製作や専用設備の導入など、独自の開発・製造体制を整備しました。また、ワークショップを進行するスタッフが誰になったとしても同じクオリティを担保できるよう、オペレーションを整えています。 」
試作の過程で、特に印象的だったのが「水」の違いです。
「線香づくりでは、お匙 京都の中庭の井戸『桃の井』から湧く水を使用しています。東京で試作したときよりも、生地はより柔らかく、粘りがしっかりと出ました。桃の井の湧水は超軟水でミネラル分が少なく、粉への浸透がよりスムーズになるためではないかと推測しています。その違いに合わせて、水分量を微調整し、扱いやすい状態へと整えました。料理や飲み物と同じように、土地の水が仕上がりを変える。
お匙 京都の目玉コンテンツの一つとなった「線香づくりワークショップ」は京都の静ひつな空気の中で体験する特別な時間として、中国・フランスなどインバウンドの需要にも合致し、国内に限らず世界中のお客様へと広がり始めています。
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無加糖・無添加。鎌倉・ensoのDNAを継ぐ、甘酒スムージーの「引き算の美学」
皮膚常在菌を大切にするOSAJIにとって、「発酵食」はブランドの根幹にあるテーマです。かつて谷中店で提供していた甘酒を、酒蔵という文脈の中で再定義するため、鎌倉のenso料理長である藤井匠が開発に加わりました。
──enso料理長・メニュー開発担当藤井匠がOSAJIのシグネチャードリンクを再定義
「去年の秋にお匙 京都のメインコンテンツが『甘酒』に決まり、開発を任されました。レストランensoのコース料理では、甘みの強いドリンクを合わせるのが難しかったのですが、今回はカフェ業態。これなら過去の経験を活かせる、と。ノンアルコールの開発が得意な僕の真骨頂です。店頭ではあえて大々的に押し出していませんが、この甘酒スムージーは【無加糖・無添加・無香料・植物性】です。フレッシュな季節の野菜や果物を使い、素材の甘味と香りのみで美味しさを成立させる『引き算の美学』をコンセプトにしました。現在も季節ごとの新作開発を続けており、秋に向けて試作を作り始めています。」
寒天ベーストやトッピングをご自身で選び、その日の自分を整える、オリジナルスムージーが楽しめる甘酒スムージー。カスタマイズは全部で105通り。
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感性を耕す。OSAJI初のギャラリーという挑戦と、想定売上2倍の反響
お匙 京都は4つの“醸す”をテーマに、酒を醸す蔵の記憶と養生の文化に着想を得て、OSAJIの美容理念に基づいた体験をお届けしています。
・Apothecary Salon|スキンケア体験サロン
・Scent Lab|オリジナルの香りを作る調香体験ラボ
・Ferment Bar|甘酒スムージーやフードを提供するカウンター
・Cultivate Gallery|アート展示ギャラリー
OSAJIとして初となるアートギャラリー「カルチベートギャラリー」の「Cultivate(カルチベート)」には、“耕す”、“育む”という意味があります。
スキンケアブランドとして皮膚や感性に向き合ってきたOSAJIは、この場所でアートや表現との出会いを育てていきたいと考えました。
ディレクターの茂田正和は、単に作品を展示する場所ではなく、「OSAJIとクリエイター、お客様の感性が交わる余白」としてギャラリーを位置づけています。
これまでに写真家・大矢真梨子氏、アーティスト・山崎円城氏、タトゥーシールブランド oppner(オプナー)を迎え、展示やPOPUP EVENTを実施してきました。
特に印象的だったのが、oppnerとのコラボレーションです。
社内で当初は、「OSAJIとタトゥーシールがどう結びつくのか」という声が少なくありませんでした。
しかし実際には、ネイルカラーをはじめとするOSAJIの商品との親和性が高く、ファッションやセルフエクスプレッションに感度の高い顧客層が多数来店。
結果として、POPUP初日には想定売上の約2倍、購入者数も通常の3倍以上となり開業以来の最高水準に達しました。
これは単なる販売成果ではありません。
OSAJIを知らなかった新しい層との接点が生まれ、互いのコミュニティが交差した瞬間でした。
カルチベートギャラリーが目指しているのは、まさにこうした“感性が交わり、新しい気づきが芽吹くこと”です。
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開店から3ヶ月。100年の空間が、多様なお客さまと対話を始める
混沌としたオープンを乗り越え、京都の地にお店が馴染み始めた今、現場には新しい風が吹いています。お匙 京都 店長:
「オープン以来、他府県からはもちろん、以前 OSAJI京都藤井大丸店(2025年4月閉店)をご利用いただいていたお客様が『京都に戻ってきてくれて嬉しい』と足を運んでくださいます。
OSAJIブランドディレクターの茂田は、「市場のニーズに応えるだけでなく、まだ見ぬ価値への『期待』を創りたい」と語ります。
古い梁(はり)の匂い、中庭を抜ける風、そして微かに漂うお香の香り。お匙 京都は、地域の人や世界中の旅人が交わることで変化し続ける「余白」を残した場所となっています。
事業企画担当・津田さん:
「お店の居心地というのは、そこで働く人によって変わっていくもの。京都は特に、お店と人の結びつきが強い街だと実感しています。オープンからこれまで頑張ってくれたスタッフには本当に感謝しかありません。これからは、スタッフがそれぞれの素敵な部分をさらに発揮できる土台をつくり、みんなでより多くの方に愛される店舗へ育てていきたいと思っています。」
ブランドは、新しいものを作るだけでは育ちません。
時には原点を振り返り、磨き直すことで、次の景色が見えてきます。
築100年以上の酒蔵で始まったお匙 京都。ここは完成形ではなく、人との出会いを重ねながら、OSAJIというブランドそのものを育て続け、新しい価値を醸していきます。