2ndアルバム『REAL POP 2』を引っ提げた、11都市を巡る全国ツアー<Aile The Shota Oneman Tour 2026 “キセキセツ”>が大成功を収めた〈BMSG〉所属のシンガーソングライター・Aile The Shota。その彼が2026年8月8日(土)・9日(日)に東京・下北沢で、オーガナイズイベント<ADRIFT presents Place of Mellow organized by Aile The Shota>を開催した。
下北沢の新たなエンタメ拠点でAile The Shotaらしい“場づくり”
東北沢駅から世田谷代田駅間の地下化に伴い、全長約1.7kmの線路跡地に誕生した“下北線路街”。その一角に2021年9月にオープンした「ADRIFT」は、ライブ・アート・マーケットなど多様なカルチャーが交差するエンターテインメントスペースであり、隣接する個店街「reload」やライフスタイルホテル「MUSTARD HOTEL」とともに、新しい下北沢の表情を見せている。
そんな同施設で、暑さの厳しい8月8日、Aile The Shotaのオーガナイズイベント<Place of Mellow>が開催。DJ&ライブコンテンツのオープンは15時だったが、昼過ぎの時点で建物の前にはすでに人だかりができている。その多くが、過去の<Place of Mellow>などAile The Shota関連のイベントグッズを持参。なかでも印象的だったのがスカーフで、首元やバッグなどにそれぞれのスタイルで身につけられたキーアイテムが、集まった人々の一体感を高めていた。
そして、なぜ人々が早く集まっていたかというと、両日ともにAile The Shotaがセレクトした古着の販売が予定されていたからだ。結果として、各日50点ほど用意されたという古着は、ものの10分でそのほとんどが売り切れに。
15時、来場者が続々と会場入り。ADRIFTの特徴のひとつは、ステージとフロアの距離の近さだ。大きな会場でアーティストを遠くから眺めるのとは違い、演者の表情や息遣いが感じられる距離にあり、この規模のハコだからこそ生まれる親密さは<Place of Mellow>も同様だった。イベントはAile The ShotaとShun IzutaniのDJで開幕。ドリンクを飲みながら、音楽に耳を傾ける観客たち。そしてDJブースでは、音に乗って楽しそうに身体を揺らすAile The Shotaの姿が。アーティスト本人もフロアの観客と同じ(かそれ以上の)テンションで過ごしている。
イベントの効率だけを考えるのであれば、自分のライブだけに集中すればいいのかもしれない。しかし、Aile The Shotaはオーガナイザーとしてそうはしない。その一見すると非効率にも思える振る舞いこそが、彼の“場づくり”の真骨頂であり、そこには泥臭いほどの人間味がある。
オーガナイザーで、アーティストで、観客でもある<Place of Mellow>
オープニングDJが終わると、スムーズな流れで今宵のライブがスタート。16時、最初に登場したのは荒谷翔大だ。
17時からは冨岡愛がギター弾き語りで、CUTEかつPOPな世界観のライブを展開する。“恋する惑星「アナタ」”や“グッバイバイ”など、愛をさまざまな想いや視点で描き出した楽曲は、この日多くの女性の観客たちの心に響いたことだろう。MCでの「かわいい」の言い合いで場の雰囲気も和む。たとえ彼女のライブを初見だとしても、出演者と観客の間に壁は存在しなかった。
続いて18時からは、前の2組とはまた異なるテイストを持つシンガーソングライター・Haruyが登場した。代表曲の“Lovely”から、5月リリースの新曲“Corsora”まで、終始タイトなライブ。その様子を、荒谷翔大や冨岡愛もフロアの後方から観ている。出演者が出演者のライブを観る。そしてその姿を観客も観ている。アーティスト同士が刺激し合う循環が、早くも生まれていた。
A.G.Oのこの日2回目のDJ を経て19時、いよいよAile The Shotaがステージへ。 “Shy なBaby”で姿を見せた瞬間、観客の待っていた気持ちがそのまま爆発したかのような歓声が上がる。コール&レスポンスで熱が高まり、ダンスパフォーマンスに喝采。1曲目で早くもAile The Shotaが呟いた「最高」の一言から、この場にいることを本人が一番楽しんでいるのが伝わってくる。
続く“Yumeiro”では、何度も彼のライブを観てきたファンたちが自然と共有している動きで手を振り、MCを挟んだ“ENOSHIMA ORANGE BLUE”では曲名通りのORANGEとBLUEのライトが会場を染める。“DEEP”からはAile The Shotaのシンガーとしてのレベルの高さを感じ、スポットライトに照らされて始まった“無色透明”は、会場全体を静かに染み渡る音の世界へと誘った。
さらに「いけますか!」「ふざけた曲」と紹介して始まった“りんごじゅーす”へ。この曲におけるAile The Shotaは、より自然体かつ楽しげ。また、同曲をプロデュース&この日のDJを務めたHIRORON渾身の「りんごーじゅーす!」に観客も歓声と拍手で応える。そしてラストにふさわしい、盛り上がるためのナンバー「踊りませんか? (Shun Izutani & ItoShin Remix)」でフロアの熱気は最高潮に。
Aile The Shotaが舞台袖にはけると、拍手とATS(Aile The Shotaの頭文字)コールが会場中に響く。その大歓声に呼ばれて、Aile The Shotaが再登場。
盟友から初対面のアーティストまで仲間と共に盛り上げるPOPのシーン
8月9日、暑さが少し落ち着いた日曜日のDAY2。 ところが、フロアは昨日以上に熱を帯びていた。 オープニングDJは、Aile The Shotaのデビュー曲“AURORA TOKIO”でのサックス&フルート参加をはじめ、楽曲共作やライブ共演など多岐にわたってコラボレーションしているKenT。このDJタイムではブース前にスペースが生まれ、Aile The Shotaが即興でダンスを披露した。
イベントを通じてだが、Aile The Shotaはフロアのさまざまな角度からDJやアーティストのライブを観て、出演アーティストごとの様子を律儀にインスタグラムのストーリーズへアップしていく。ここでも彼は、自分のイベントを自分だけのものにしない。出演者一人ひとりを丁寧に紹介し、観客と共有。そこには仲間と一緒にPOPのシーンを盛り上げたい気持ちが表れている。
16時、Salaがドラム&ギターの編成でステージに立つと、1曲目から観客の心をつかむ。MCでは、「メロウな場所をつくりたい」というAile The Shotaの言葉を引用。“Bossa”や“Loved More”などデビュー初期曲も披露し、曲終わりにフロア後方でAile The Shotaが「フォー!」と声を上げる。
続くDJ Sam is Ohmの選曲がフロアをガッツリとつかみ、まだ夕方なのに会場にはすでにNIGHT感が漂う(DJ終わり、Sam is Ohmと握手を交わしたAile The Shotaは「かましすぎ」とご満悦)。
その盛り上がりを受けて 17時からは、2022年6月発表の“常懐”を共作し、同年に開催された第1回の<Place of Mellow>にも出演した春野のライブがスタート。ライブ途中でイヤモニのトラブルがありながらも、それをものともせずにステージを成立させるのは、春野の唯一無二の歌声。物語性のある世界観の“鬼ごっこ”から、メロウナンバー“Kidding Me”でライブを締めた。
ヒューマンビートシンガー・YAMORIのDJでは、Aile The Shotaも並び、ファンが前方へ詰めかける。ラストにヒューマンビートボックスも披露し、それがのちの伏線となった。
18時からは、宮崎出身の本格派シンガー・HIKKAが登場。スタートの“Taboo”から圧倒的なグルーブの歌声が会場中に響き渡る。その後も乗らせる曲から聴かせる曲まで、その実力を遺憾なく発揮し、Aile The Shotaも「ヤバイ」と興奮気味。神々しさまで感じたラストの“あなたのそばに”でステージを終えた彼女は、近い将来、Aile The Shotaとのコラボレーションを予感させた。
「音楽は好きか──」というメッセージAile The Shotaがつくる新しい“Place”
そしてSam is OhmによるラストのDJタイムを経て、いよいよ2日間にわたったイベントを締めくくる、Aile The Shotaのライブが始まった。
そしてMCでは、「J-POPシーンから日本の音楽をこうやって(ジェスチャーで上げて)いきたいので」 と語る。自分自身がPOPスターになるだけではなく、日本のPOPシーンそのものを押し上げていきたいという想いが、ここまで2日間のオーガナイズの端々からも感じた。
“ENOSHIMA ORANGE BLUE”では、昨日以上の掛け声と観客が振る手によって、フロアに波のような動きが生まれたのち、この日ならではの瞬間へ。DAY2のゲスト・春野を迎えた“常懐”を、ファンの期待に応えてお届けする。歌詞の一部を“下北”にアレンジしたり、観客にシンガロングを求めたり。曲終わり、ハグをするふたり──「みんなの曲になってる」という言葉が印象的だ。
まだまだサプライズは終わらない。本日はDJを務めていたKenTがサックスを手にステージに現れ、“AURORA TOKIO”! フロアは熱狂の渦に包まれ、さらに「マイクを持ちたがっている人が」(Aile The Shota)と誘われてYAMORIが登場し、ヒューマンビートボックスを重ねると、最高のセッションを展開。文字通り、ひとつのピークを迎えた曲に観客は恍惚の表情だった。
この季節にもリンクする“向日葵花火”では、ライティングも相まってフロアに無数の向日葵とも花火とも思える光景が広がる。平成のJ-POPを昇華した同曲は、この日も“踊れるポップス”としての魅力を発揮し、ラストはコーラスの大合唱。間髪入れずに始まった本編ラストナンバー“開花宣言”で歌うAile The Shotaのメッセージは、2日間を経て、さらなる説得力を持っていた。ライブ終了。ただし誰も帰らない。この日もお決まりのATSコールが起こり、「オーガナイズイベントでアンコールやるなって」と照れくさそうにAile The Shotaが再びステージへ。「こうやって音楽を好きでいてくれる人は、日本全体で考えたら本当に少ないので。改めてこういう場所を作ったときにたくさんの人が集まってくれて、ただ集まるだけじゃなくて、どのアーティストも言ってくれたけど、本当にお客さんが温かかった、楽しんでくれた。音楽が好きな場所、輪、縁をつくるイチ人間として、人生の中でやるべきことをできたんじゃないかなと。自分のアイデンティティが縁なので、これからもそれを広げていけたらなと思います」(Aile The Shota)
アンコールはこの日も“ONGAKU”。「音楽は好きか──」 というAile The Shotaのメッセージに、フロアにいる観客はみな、噛み締めるように心の中で、「好きだ」と答えたはず。2日間かけて、音楽が鳴った。古着が並んだ。DJがフロアを温めた。出演者同士が交わった。アーティストと観客が同じ音を聴いた。そしてAile The Shota自身も、その場の一員として踊り、笑い、音楽を楽しんだ。誰かひとりが場を完成させるのではない。そこにいる全員が、少しずつその場所をつくっていく。それこそ<Place of Mellow>が大切にするスタンスだと感じた。「音楽が好きだ」と答えた人たちが、それぞれの日常へと帰っていく。そしてきっと、次にどこかでAile The Shotaの音楽が鳴ったとき、その場所もまた新しい“Place”になるのだろう。
Text by RASCAL(@rascaaaaal), NaNo.works(@nanoworks_shonan)Photo by Kazuma Kobayashi(@kindai_punks)、Satoshi Hata(@satoshihata87)Movie by Sato Jay Kent(@jay_474_inst)Edit by Sanae Akechi
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