近年のイギリスとアイルランドには、明らかにギターバンドの新たなルネッサンスが訪れている。ウェストサイド・カウボーイ、フローレンス・ロード、Keo、Bleech 9:3など、注目の若手を挙げればきりがない。
そしてそんな活況を呈する現在のシーンで頭角を現しつつあるのが、マンチェスター出身の若き5人組であるザ・ゲスト・リスト(The Guest List)だ。

このたび彼らが送り出したデビューアルバム『Something Real』には、マンチェスター出身のバンドらしいアンセミックなメロディがぎっしりと詰まっている。2010年代後半から英国インディを支えてきたサウスロンドン勢はシュプレヒゲザング──歌と語りの中間にあるようなボーカルスタイル──が多かったことを考えると、ゲスト・リストのようにまずソングライティングを大切にする姿勢は新鮮に映るだろう。だがもちろん、彼らは「歌」だけのバンドではない。メロトロンを前面に押し出した「Sick Animal」ではレディオヘッドとフォンテインズD.C.の間を行くようなサウンドを聴かせ、「Mundane」ではグランジを想起させるヘヴィなギターリフを響かせる。その意味で『Something Real』は、彼らの音楽的語彙の多彩さも証明している。

先日のサマーソニックでは初来日ライブを披露したが、そこでは新人らしからぬタイトなアンサンブルを聴かせてくれた。メンバーはもともとジャズバンドをやっていて、ピンク・フロイドやキング・クリムゾンのようなプログレッシブ・ロックが好きだというが、それも納得の基礎体力の高さである。この日のライブは、彼らが今後さらに飛躍していくポテンシャルを感じさせるものだった。

以下のインタビューは、サマーソニック開催前日にメンバー全員とおこなった。なお、サマソニでも流暢な日本語MCを披露したギタリストのレイオ・ハンターは、日本人の母親を持つミックス。今回の取材でも幾つかの質問に日本語で答えてくれている。


ザ・ゲスト・リスト、日本滞在中の映像

レディオヘッド、ピンク・フロイド、ザ・ストロークス──5人の共通言語

―ゲスト・リストは高校の友人同士で結成されたバンドですが、どのようなところで意気投合して、一緒にやることになったのでしょうか?

カイ・アルティ(Vo, Gt):僕らのうち4人は、学校のジャズバンドを通じて知り合ったんだ。僕とトムとアンガスはそこでかなり一緒に演奏していて、レイオはリハーサルに1回くらい来てたよね。

レイオ・ハンター(Gt):基本的には、このバンドに入るためにジャズバンドに入ったんだ。

カイ:うん。それでシドとはパーティーで知り合った。最初のベーシストが辞めたとき、その穴を埋めてもらうなら彼だなと思ってたんだ。だから、バンドを始める前からすごく仲が良かったというわけではなくて、僕らを結びつけたのは音楽だったんだと思う。でも今では当然、一緒にものすごく長い時間を過ごしているから、すごく仲のいい友達になったよ。

アンガス・ギルクリスト(Dr):たぶん、他の誰よりもメンバー同士で会ってると思う。

カイ:家族よりも会ってるよ(笑)。

The Guest Listが語る──レディオヘッド、プログレ、グランジの影響をアンセミックに昇華する新世代バンドの感性

左からレイオ・ハンター(Gt)、シド・ウォレス(Ba)、カイ・アルティ(Vo, Gt)、アンガス・ギルクリスト(Dr)、トム・クイグリー(Gt)Photo by Takuya Maeda

―ジャズバンドでの経験は、自分たちの音楽的素養を培ったと思いますか?

カイ:うん、僕らは学校同士のコンペティションみたいなものにもよく出てたんだ。だから、僕らの音楽的な基礎にはジャズがあるし、シドも自分の学校のバンドで演奏してたんだよ。


シド・ウォレス(Ba):それも、ジャズバンドだったんだ。

カイ:それで、そういう経験が僕らの基礎になってる。特にハーモニーとか、コードをどう組み立てるかみたいなところではね。

シド:またジャズの世界に戻ろうとしてるところだよね?(笑)

カイ:うん(笑)、実はこの前も、またちょっとジャズをやってみようかって話してたんだ。

―では、ゲスト・リストの5人にとっての音楽的な共通項というか、欠かすことが出来ない重要な影響を与えたアーティストを挙げるとすれば、誰になりますか?

シド:どうだろう、レディオヘッドとか、ストロークスかな。

カイ:うん、レディオヘッド、ピンク・フロイド、ストロークスあたりは、僕ら全員が聴いていて好きな、確実な3組だと思う。

トム・クイグリー(Gt):ただ、ピンク・フロイドについては、みんなそれぞれちょっと好みが違うんだ。たとえばシドは初期の作品が大好きで。

シド:僕は1stアルバムと『Atom Heart Mother(邦題:原子心母)』が好きなんだ。あの牛のアルバムね。あれはすごく好き。でももちろん、ピンク・フロイドのいわゆるクラシックな作品も全部好きだよ。


―じゃあ、ピンク・フロイドでも、みんなそれぞれ違うアルバムが好きってこと?

トム:いや、そういうわけではないかな。僕らはみんな、いわゆるクラシックな4作……『Meddle(邦題:おせっかい)』も数えるなら5作かな、その流れは好きだと思う。そう、『Meddle』から『The Wall』まで。僕ら全員、あのあたりのサウンドがかなり好きなんだ。ちょっとプログレっぽくて、なんというか、夢見心地な、ドリーミーなサウンドって言えばいいのかな。

―なるほど。ピンク・フロイドに関してはドリーミーなサウンドが好きだとしたら、他の2つのバンドに関しては?

カイ:ストロークスについては、これはUKの多くのバンドにとってもそうだと思うし、世界中のバンドにとってそうだと思うけど、ギターミュージックのアレンジの仕方に大きな影響を与えたと思う。彼らは2本のギターを左右に振り分けることで知られていて、基本的には4つの楽器と1つのボーカルだけという、すごくシンプルなアレンジなんだ。それにローファイなサウンドで、ディストーションなんかもあまりアグレッシブにかけすぎず、すべてが半分くらいに抑えられてる感じがある。だから僕らは、間違いなくストロークスからそういうところを取り入れてる。特にアレンジ面では、2本のギターを単にハーモニーを作る楽器として使うんじゃなくて、ボーカルとの間でメロディ的なバランスを取ろうとするところだね。

それからレディオヘッドは、アルバムごとに変化するバンドだよね。
だから影響を受けたのは、どちらかというと音楽に対する姿勢なのかもしれない。彼らからは、常に音楽の中で何か新しいところへ手を伸ばして、自分たち自身をプッシュしようとしている印象を受ける。僕らも、そういう姿勢を自分たちなりに再現したいと思ってるんだ。

―あなたたちが、いわゆる「マンチェスターのバンド」と括られるのを好まないことを踏まえた上で訊きますが、マンチェスター出身であることは、自分たちの音楽性や考え方に何かしらの影響を与えたと思いますか?

レイオ:僕らはマンチェスター出身であることをすごく気に入ってるし、そのおかげでたくさんのチャンスも得られたと思う。音楽シーンがすごく豊かな街だし、オアシスやジョイ・ディヴィジョンみたいに僕らが尊敬しているバンドもたくさんいて、そこから影響を受けてもいる。でも、単に次のオアシスとか、次のジョイ・ディヴィジョンとか、次のニュー・オーダーになりたいわけじゃないってことで。

カイ:それと、マンチェスターに限った話ではなくて、もっと広く北部のバンド全般に言えることだと思うんだけど、北部のバンドには自分たちをどう見せるかという点で、ある種の違いがあると思う。たぶん、もう少しオーセンティックというか……まあ、これは僕の偏見かもしれないけど、北部のバンドは、メディアで自分たちをどう表現するかというところでも、もう少しリアルであろうとする傾向があると思うんだ。だから、そういう姿勢も僕らに多少は染みついているのかもしれない。

The Guest Listが語る──レディオヘッド、プログレ、グランジの影響をアンセミックに昇華する新世代バンドの感性

サマーソニック東京会場のライブ写真(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

―実際ゲスト・リストは、ある意味でマンチェスターらしい、ソングライティングを重視した、非常にアンセミックな曲を書くバンドだと思います。ただバンドが結成された2021年当時は、まだサウスロンドンのバンドシーンの勢いが強く、ソングライティングよりもサウンドの実験性が重視されていた印象があります。自分たちは、当時のイギリスのシーンとは違うことをやっているという意識はあったのでしょうか?

トム:サウスロンドンっていうと、The Windmill周辺のシーンだよね。


シド:スクイッドとか、ブラック・カントリー・ニュー・ロードとか。

―そうそう、その辺との距離感は?

シド:どうだろう。ソングライティングに関しては、ブラック・カントリー・ニュー・ロードから多少影響を受けているところはあるかもしれない。すごくぶっ飛んだ曲じゃなくて、なんていうか、(『Ants From Up There』収録の)「The Place Where He Inserted the Blade」みたいな曲だよね。ああいうところから僕らが取り入れたものは、たぶんあると思う。だから、そういう影響はあるね。

アンガス:僕らはずっと、曲のコンポジションそのものがものすごく重要だという考えでやってきたと思う。当時成功していたバンドやアーティストのことを考えると、「この人たちはそこまで曲の構成そのものを重視していないのかもしれない」と感じることもあったかもしれない。でも僕らが何年、何十年と遡って聴いてきたアーティスト、つまり素晴らしいアーティストとしてレガシーを残し、時代を超えて聴き継がれている人たちを見ると、僕としては、そういう人たちはいつも優れた曲を書く人たちだったと言いたい。僕らも、そういう衝動を受け継いでやっているんだと思う。

―では、特に自分たちが共感できる同世代のバンドを挙げるとすれば?

シド:僕らとかなり仲がいいバンドは幾つかいるけど、音楽的な共通点となるとちょっと難しいかな。友人関係という意味では、普段つるんでいるバンドの中に仲のいい人たちがいて、アーケイラ(Arkayla)というバンドとはよく一緒になる。
それからセブ・ロウ(Seb Lowe)は厳密にはバンドじゃないけど、彼のバンドのメンバーとも友達なんだ。でも、音楽的には……。

カイ:フォンテインズD.C.はもうそこまで新しいわけでも小さいバンドでもないと思うけど、僕らは彼らに似ているとよく言われるし、それはもっともだと思う。実際、彼らからかなり影響を受けているからね。

アンガス:必ずしも音が似ている必要はないなら、トゥース(Tooth)かな。彼らは本当に曲のコンポジションを大切にしていると思う。たしかサウスロンドンのシーンにいたと思う。最近EPを出したばかりだけど、ものすごくよく考えて作られていると思うよ。

ノルウェーで広げた『Something Real』の音世界

―では、デビューアルバムの『Something Real』について訊かせてください。このアルバムは、ゲスト・リストらしいアンセミックなメロディが満載であると同時に、これまでよりもさらに音楽性の幅が広がっている印象です。自分たちとしてはどのような作品を目指したのでしょうか?

カイ:僕らは、それぞれの曲をまったく別の生き物として扱うような感じで作ったんだ。レコーディングのやり方自体もそうで、8カ月くらいの間に3回に分けてスタジオへ行って録音した。だから最初のセッションのときと最後のセッションのときでは、僕ら自身もミュージシャンとしてかなり変化していたと思う。曲と曲のレコーディングの間にそれだけ期間が空くというのは、アルバム制作としてはちょっと珍しいと思う。

―そうですね。

カイ:それで、すでにリリースしている曲について言えば、共通するサウンドがあると思うんだ。ギターをかなり前面に出しつつ、マティアス・テレズ(アルバムのプロデューサー)が持ち込んだドリームポップ的な要素もある。「feeding」と呼ばれるやり方を使っているんだけど、それは強く歪ませてリバーブを深くかけたギターを、ミックスのかなり低いところに混ぜるっていう。そうすると、あのドリーミーなサウンドになるんだ。それから、たくさんの曲でメロトロンも使っている。特に「Sick Animal」や「Craven」みたいなスローな曲では、メロトロンはかなり大きめにミックスされている。そういうものがこのアルバムのサウンドや、音の厚みに繋がっていると思う。それがどうやって作られているのかを分解して説明されなければ、何があのサウンドを形作っているのか、なかなかわかりにくいと思うんだ。

―私も「Sick Animal」は、このアルバムの中でもユニークなサウンドを持つ、とても面白い曲だと思いました。この曲を作るにあたってインスピレーションになったものはありますか?

カイ:「Sick Animal」は、たぶんアルバムの中でいちばんレディオヘッドっぽい曲だと思う。僕自身、アルバムの中でいちばん好きな曲なんだ。それに、ギター以外の楽器をサウンドの真ん中に置こうと決めたのは、僕らにとってこれが初めてだったと思う。だから、この曲はメロトロンから始まるんだよ。

シド:コーラスはかなりキング・クリムゾンっぽいよね。

カイ:うん、かなりキング・クリムゾンっぽい。キング・クリムゾンも僕らが好きなバンドなんだ。

アンガス:これもアルバムの中ではかなり早い段階で録音した曲なんだ。レコーディングした時点では、自分たちがアルバムを作っていることすらわかってなかった。そう、「Sick Animal」と「Mary」は、僕らが初めてマティアスのスタジオに行った時に録ったもので、彼に会ったのもそのときが初めてだった。だから、慣れない新しい状況でちょっと不思議な感じだったんだけど、そんな中でいきなり、それまで一度も使ったことのないメロトロンという楽器を前面に出してみたりしてね。でも、うん、アルバムの中でも僕らのお気に入りの曲のひとつだと思う。

―マティアス・テレズをプロデューサーに起用するのは面白い人選だと思いましたが、なぜ彼に頼んだのですか?

レイオ:最初はザ・コーラルのジェームズ・スケリーと仕事をしてたんだ。彼はすごく優秀な人で、僕らも彼からたくさんのことを学んだ。それまで僕らはスタジオに入ったことすらなくて、初めてのスタジオレコーディングだったから、基本的なプロダクションについていろいろ教えてもらった。たとえば、対位法的なメロディを使ってギターをどうアレンジするか、とかね。でも僕らは、もっと野心的なサウンドを目指したかった。ただ生々しいギターバンドというだけではなくて。もちろん、今でも自分たちはれっきとしたギターバンドだと思ってる。でも、そういうことはもう過去にやられてきたから、僕らは何か新しいことをやりたかったんだ。

マティアスはノルウェーに住んでいるから、基本的にはレーベルを通じて紹介してもらった。それで最初のレコーディングに行って、「Sick Animal」を作ったんだけど、それですごくしっくりきたんだ。彼のプロデュースのやり方は、朝9時くらいに起きて、のんびり座ってコーヒーを飲んだりして、すごくリラックスした雰囲気だった。それが制作のプロセスにもいい影響を与えたんだと思う。

シド:それに、彼がそれまでプロデュースしてきた作品も聴いてたんだ。正直、かなり感銘を受けたと思う。単純に、サウンドが素晴らしかった。

―どの作品を聴いてたんですか?

シド:僕がいちばん好きなのは、たぶんスポーツ・チームの『Boys These Days』かな。あのアルバムには素晴らしい曲がいくつも入っているし、プロダクションが本当にすごい。ちゃんとひとつの音響体験になってるんだ。

カイ:とにかく奇抜だよね? 彼自身がすごく奇抜な人なんだ。でも僕らは、そこまで奇抜なバンドではないと思う。

シド:マティアスは、その間をうまく取り持ってくれる人なんだよ。

カイ:うん。だから、彼の性格から来るちょっとした奇抜さは、僕らの音楽にも入っていると思う。特に「Something Real」みたいな曲ではそうだね。あの曲のバッキングボーカルのスタイルを彼はすごく気に入ってた。もちろん、もともとのアイデア自体は僕らから出てきたものだけど、彼がそこをさらに押し広げて、「もっとそっちに行こう」って背中を押してくれたんだ。彼がいちばん好きなバンドはビーチ・ボーイズで、いちばん好きなアルバムは『Pet Sounds』なんだ。だから、ところどころでああいうコーラス的なサウンドを目指すというのは、もともとの僕らにはなかった発想だった。でも今では、そういうことをいろいろな曲でやるようになってる。

―レコーディングはマティアスの拠点であるノルウェーのベルゲンでやっていますが、その環境自体からも影響を受けたところはありましたか?

トム:うん、実際かなり影響はあったと思う。面白かったのは、僕らはベルゲンに3回行ったんだけど、そのうち1回は夏至の時期だったことだね。ほとんどずっと明るくて、暗くなるのは3時間くらいしかなかった。それとは逆に、別のときは12月の初めに行ったんだけど、そのときはほとんど陽の光がなかった。朝9時に暗闇の中を歩いてスタジオへ行って、スタジオから帰るときもまた真っ暗で。一日のうちで光を見るのは、昼食の時間くらいだったんだ。だから、実際にそれは音楽にも影響したと思う。冬だった2回目や3回目のセッションで作った曲、たとえば「The Only Ones」や「If Ever Your Devil Is Kind」には、夏に作った曲よりも少しダークな雰囲気があると思う。そういう意味では、間違いなく影響を受けてるね。それに、ベルゲンの谷間にいること自体もそうだった。周りにはフィヨルドが広がっていて、景色が本当に素晴らしいんだ。ああいう場所にいると、制作そのものが少し魔法がかったような感覚になるんだと思う。

社会を歌いながら、悲観的にはならない

―「Sick Animal」のようなドリーミーなサウンドの曲とは対照的に、「Mundane」はヘヴィなギターリフが強烈で、グランジ的なエネルギーが漲っていますよね。

シド:僕らはみんな90年代のグランジバンドが好きだと思う。特に僕とトムはそうだね。アリス・イン・チェインズとかニルヴァーナとか。まあ、ニルヴァーナはみんな好きだけどね。だから、ああいう音楽のスタイルは、僕らがそういう曲をどう演奏するかにも間違いなく影響してると思う。でも「Mundane」のリフ自体を最初に思いついたのはカイだから……。

カイ:うん。そういう影響が頭のどこかにある状態で、ボーカルメロディではなくリフから曲が生まれると、自然とよりヘヴィでグランジっぽい方向に進みやすいんだと思う。たとえば「Sick Animal」は、最初のアイデアがバースのボーカルメロディとアコースティックギターだった。最終的にはメロトロンから始まる曲になったけど、それが最初のアイデアだったわけじゃない。それに対して「Mundane」は、最初のアイデアがあのリフだったんだ。「Ruine」を作ったときも、リフがかなり早い段階で出来ていた。だから、ギターが強く前面に出るのは、曲作りの出発点になったものが、すごく強いメロディックな要素を持ったギターだったからなんだと思う。そうなると、そのギターにもっと焦点を当てたくなる。ミックスの中に埋もれさせるということではなくて、単に機能的な役割を担わせるのではなく、リード楽器として扱いたくなるんだ。

―最近はロンドンのKeoとか、アイルランドのBleech 9:3とか、90年代のグランジやオルタナに影響を受けたバンドも増えていますよね。そういったアーティストたちのことはどのように見ているんですか?

レイオ:(日本語で)最近イギリスではグランジ・リバイバルみたいなのがトレンドになっていて、「(それも)いいんじゃない?」とは思うけど、新しい音じゃないから、自分はあんまり好きではなくて。でも理解はできるっていうか、新しいジェネレーションのバンドは90'sのグランジのバンドを聴いていなかったから、新しい世代の耳には新しい音だと感じられる。ただ、ああいうバンドの性格は、こうやって……(しかめっ面をするような仕草)。

―ハハハッ(笑)。

レイオ: あんまり笑わないシリアスなバンドで、そこは好きじゃない。わかる?

―なるほど、わかります(笑)。

*ここで通訳がレイオが何を話したか、他のメンバーに説明。

カイ:まあ、公平に言えば、どのバンドもわかってることだと思うんだけど、ギターミュージックが60年も作られ続けてきたわけだから、ギターを手に取ってこういう編成のバンドのために曲を書けば、誰かに似た音になるのは避けられないんだよね。極端に実験的なことをやらない限り、それは避けられない。もちろん、そういうことをやっているバンドもいるし、僕らもそういうバンドは聴いてる。でも、もっと王道のところでやろうとするなら、どうしたって誰かに似た音にはなる。だから僕らとしては、これからも唯一無二であり続けられるものがあるとすれば、それは曲そのものに徹底的にフォーカスして、ユニークな曲を書くことだと思ってる。サウンド自体はどうしても、それ以前に存在したほかのギターバンドから影響を受けることになる。でも、曲そのものがユニークなら、それによってほかとは違う存在になれるんだ。

―「Something Real」の歌詞は、SNSでのヘイトの広がりや戦争といった現代的な問題を掘り下げていますが、そのサウンドは決してダークではなく、むしろジャングリーで疾走感がありますよね。そういったコントラストは意識的だったのでしょうか?

カイ:悲観的な感じにはしたくなかったんだ。この曲の歌詞の内容は、世界の現状とか、そういうことについてかなりストレートに言っていると思う。だからこそ、アレンジやレコーディング、ミュージックビデオを使って、バンドのちょっと風変わりなところや、軽やかでユーモラスなところを引き出したかった。歌詞だけを読んだら、そういう部分は感じられないかもしれないからね。それが狙いだったんだ。そういう要素って、曲に本当の意味で奥行きを与えてくれると思う。曲作りのそれぞれの段階で、「ここからさらにどうクリエイティブなことができるか?」「どうすれば自分たちらしいものを作り続けられるか?」と考え続けることによってね。曲そのものが出来上がった時点で、「よし、これで完成だ」と思ってしまいたくなる誘惑はある。たとえば、社会的な問題を扱った曲ができて、歌詞もいいものになったと思えば、「じゃあ、これ以上何をする必要があるんだ?」と思うかもしれない。でも僕らは、そこからさらに先へ進みたいんだ。アレンジも面白いものにして、サウンドも面白くして、ミュージックビデオではまた別の角度を加えてみよう、というふうにね。

―「Weatherman」は気候変動、「Mary」は家庭内暴力を取り上げていますよね。そのように社会問題と積極的に向き合ってメッセージを発することは、アーティストにとって重要だと思いますか?

カイ:うん、自分がそれをやりたいと思える立場にいるのなら、重要だと思う。ただ、アーティストが追い詰められたり、政治的であることを強制されたりするように感じるべきでは絶対にない。そういう状況では、何か有益なことを発信できるような精神状態には、なかなかなれないと思うからね。僕らのようにある程度の発信力を持つようになったら、それを使って、自分たちが世界の中で目にしている問題を認識し、それについて話すことは重要だと思う。でも同時に、僕らも他のどんなバンドとも同じように、音楽への情熱があってここまで来たわけだし、音楽業界に入ったそもそもの目的もそこにあった。だから、僕らとしては、それが自然だと感じられるとき、自分たちに何か提供できるものがあると感じたときに、そういうことをやりたいと思ってる。

―では、『Something Real』というアルバムタイトルに込めた意味合いを教えてください。

カイ:シンプルに、このタイトルがアルバム全体と、僕らがバンドとして伝えようとしていることをいちばんよく表していると思ったからなんだ。それは、できる限り自分たち自身でいること、自分たちにとって本物だと感じられる音楽を作ることが大事だっていう。だから僕にとっては、このタイトルがアルバム全体をひとつに括って、まとめてくれている。それから、アートワークなんかにも、このタイトルを起点にいろいろなテーマが生まれていった。もちろん、制作を始めた時点ですべてが決まっていたわけじゃなくて、時間をかけて徐々に発展していったものなんだけどね。でも、もし別のタイトルだったら、あれほどそのテーマを掘り下げることはできなかったと思う。一時期は、たとえば「Sick Animal」をアルバムタイトルにしようという話もあったんだ。でも、もしそうしていたら、まったく違う作品になっていたと思う。もっとプログレッシブというか、ちょっと変わった、アルバムのダークな側面を押し出さなければならなかったと思う。それに対して『Something Real』というタイトルなら、僕らが世に出すものについて、もっとオープンで、もっと楽観的でいることができたんだ。

―よくわかりました。では最後に、バンドとしての究極のゴールは何かと訊かれたら、どう答えますか?

カイ:アリーナツアーかな(笑)。いや、もちろん、それができるくらいのところまで行けたら、やってみたいことではあるけどね。でも、僕らはみんな、自分たちの好きなことを仕事としてやれていること自体を楽しんでるんだ。それをこの先ずっと持続していけるなら、少なくとも僕は、それで十分に満足できると思う。僕らは今、すごく特別な立場にいて、恵まれた機会を与えられていると思う。僕にとっては、世界征服みたいなことが必ずしも僕らを幸せにしてくれるとは思わない。でも、今やっているように曲を書いて、演奏し続けて、バンドでいろいろな場所を旅したり、そういうことを続けていけたら、長い目で見ても充実した人生になると思う。だから、それがゴールかな。

―みんなも同じ考えですか?

レイオ: (日本語で)自分は日本ツアーをやりたいです!

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