サマーソニック2026東京公演2日目、BEACH STAGEのキュレーションを手がけたカリン・レオン(Carín León)。パロマ・モーフィーラテン・マフィアに続いて登場した彼は、故郷ソノラに根ざした音楽を豊かなアンサンブルとともに届けた。
音楽ライター・渡辺志保が、先日掲載のインタビューに続いて当日の模様をレポートする。

「De Sonora para el mundo(ソノラから世界へ)」。サマーソニック東京公演の二日目。BEACH STAGEの両脇には青空とともに、こう書かれた大きなボードが掲げられ、メキシコからの風を吹かせていた。

カリン・レオンの出番は夜8時30分。直前までラテン・マフィアが盛り上げたビーチに静寂が戻り、二日目のクライマックスを待つ特別な空気感が場を包む。情感あふれるイントロが静かに流れ始めると、スクリーンにはメキシコ・ソノラ州の雄大な山々が映し出される。その風景を背負うようにカリン・レオンがゆっくり姿を現し、「Secuelas de Amor」でライブは幕を開けた。彼を支えるのは総勢15名ほどの大編成バンド。複数のギターにアコーディオン、サックス、トランペット、チューバ、パーカッション、コーラスなど、多彩な楽器が重厚かつ繊細に絡み合い、リージョナル・メキシカンを軸にカントリー、ロック、ソウルまでを飲み込んだスケールの大きなサウンドを鳴らしていく。「Me la Aventé」のイントロが鳴った瞬間、客席からは大きな歓声が上がる。続く「Como Lo Hice Yo」ではバックアップ・シンガーとして参加していたジョアナ・シアルキア(Joahana Siaruquia)を迎え、息の合ったハーモニーを披露。
リッチなアンサンブルの上を美しいユニゾンが駆け抜け、カリンはステージの端から端まで歩きながら何度も客席へ投げキッスを送る。その余裕ある立ち居振る舞いも、世界中のフェスで観客を魅了してきた彼ならではなのかも、と感じた。

【サマソニ総括】Carín León「ソノラから世界へ」日本で体現したメキシコ音楽の新たな可能性

©SUMMER SONIC All Rights Reserved.

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【サマソニ総括】Carín León「ソノラから世界へ」日本で体現したメキシコ音楽の新たな可能性

ジョアナ・シアルキアとのユニゾン(Photo by Gerardo Moreno)

「Según Quién」では、早くも観客による大合唱が巻き起こる。豪華なアレンジの中でも印象的だったのはギターセクション。マリアッチを思わせる華やかな音色が会場を彩り、伝統とポップスを自然に結びつけるカリン・レオンの音楽性を象徴していた。「Ahí Estabas Tú」では繊細なギターの音色に導かれるように歌い始め、演奏陣もステージを練り歩きながら、それぞれの楽器の見せ場を作っていく。続く「Alch Si」では派手なイントロとともに空気が一変。アコーディオン奏者がステージを歩き回り、客席も一気にヒートアップする。一転して「Cuando la Vida Sea Trago」では、揺るぎなく響きわたる歌声を響かせる。幾重にも重なるバンドサウンドの厚みとともに、その圧倒的な表現力を見せつけた。

そして最新アルバム『MUDA』から披露された「Ruca」で、ライブは新たな表情を見せる。打ち込み主体のビートが鳴り始めると、BEACH STAGEはまるで巨大なクラブフロアへと変貌。
加えて、この時ちょうどメインステージからは花火が打ち上げられ、アッパーなビートとカリンの歌声、そして野外のステージの雰囲気が見事にマッチし、サマーソニックならではの高揚感に包まれた瞬間でもあった。

【サマソニ総括】Carín León「ソノラから世界へ」日本で体現したメキシコ音楽の新たな可能性

Photo by Gerardo Moreno

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Photo by Gerardo Moreno

「Tú」ではスクリーンが夜景へと切り替わり、メランコリックな歌声がより際立つ。「Te Lo Agradezco」では女性ボーカルとの掛け合いが楽曲に切なさを添えた。気づけば周囲から聞こえてくるのは、スペイン語によるシンガロングばかり。ステージの前方にはメキシコの国旗を持参したファンもおり、ステージ上のカリンに向けて皆、スペイン語で呼びかけ続ける。その熱気が頂点に達したのが「No Es Por Acá」だった。イントロが鳴るや否や悲鳴にも近い歓声が響き渡り、スクリーンにはソノラの夜の街並みが映し出される。まるで現地の酒場へ迷い込んだような没入感の中、カリンは感情をじっくり溜め込みながら歌い進め、最後のフレーズで一気に解放。ドラマティックな展開に客席からは大きな拍手と歓声が湧き起こり、抱き合いながら身体を揺らすペアの姿もあちこちで見られた。「Lado Frágil」では観客がステージへ歌声を返し、「Te Vi Con Él」では自然発生的な大合唱が起こる。バンドの煽りに合わせて会場全体がウェーブし、その一体感はさらに大きくなっていく。「Qué Más Puedo Pedir」を経て披露された「Que Vuelvas」では、日本語の歌詞がスクリーンに映し出される粋な演出があり、カリン自身も日本国旗を掲げ、我々にリスペクトを示す場面も。


【サマソニ総括】Carín León「ソノラから世界へ」日本で体現したメキシコ音楽の新たな可能性

Photo by Gerardo Moreno

そして、まさに宴もたけなわというころに演奏し始めたのは、「La Boda del Huitlacoche」。メキシコの伝統音楽と結婚式がモチーフになった曲で、リージョナル・メキシカンならではの軽快なリズムとグルーヴが会場を満たす。スクリーンには炎と山々、そしてツノの生えた悪魔のようなアニメーション・キャラクターが映し出され、メキシコの土着的なフォークロア(民間伝承)の世界を思わせる。そしてバンドメンバーらも揃いのステップを踏みながら、ステージ上を所狭しと踊りまくる。まるで地元の祝祭に迷い込んだかのような雰囲気だ。その後、「¡Salud!」という掛け声で会場と乾杯する頃には、まるで家族が集まった大きなパーティーのような温かさが漂う。終盤の「Aviso Importante」ではカリンがキャップを客席へ投げ込み、サックス、チューバ、トランペットが惜しみなく絡み合う濃密なアンサンブルが彼の歌声をさらに引き立てる。観客一人ひとりとアイコンタクトを交わしながら歌い進める姿には、スタジアムを埋めるスターでありながら、目の前の一人に歌いかけるような親密さが同居していた。

「Despídase Bien」では静かなイントロから、ゴスペルを思わせるソウルフルなコーラスが深く響く。スクリーンには神秘的なアニメーションが映し出され、まるで祈りのような空気が会場を包み込む。祝祭の熱狂から一転、ライブは静かな余韻をまといながらクライマックスへと向かっていった。そしてラストは代表曲「Primera Cita」。
バンドが奏でるソウルフルなサウンドに合わせ、観客は大きく手を振りながら歌声を重ねる。スクリーンには「THE END」の文字が浮かび上がり、カリンは手をくるくると回しながら何度もお辞儀を繰り返す。しかし彼が去ったあとも、バンドは演奏を止めない。最後の最後まで鳴り響く音楽が、BEACH STAGEを感動的な余韻で満たしていった。

東京のねっとりとした夜風に溶け込んだソノラのサウンド。BEACH STAGEで鳴り響いたその音楽は、一夜限りのフェスのパフォーマンスではなく、ソノラという土地そのものを東京へ運んできたような体験だった。そしてその体験こそが、カリン・レオンというアーティストが国境や言語を越えて人々を惹きつける理由なのだと、この60分が雄弁に物語っていた。

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【サマソニ総括】Carín León「ソノラから世界へ」日本で体現したメキシコ音楽の新たな可能性

共にサマソニBEACH STAGEを盛り立てたラテン・マフィア、パロマ・モーフィーと撮影(Photo by Gerardo Moreno)
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