今年3月、衝撃的なキャッチコピーの作品で大きな話題を呼んだセクシー女優・雄乃ゆめさん。
前回は、男性として生きることを選んだ高校・大学時代や、「男性」「女性」という枠組みでは語り尽くせない自身の性自認について語ってくれた。今回は、男性ホルモン治療による体の変化や、トランス男性として過ごした「地獄」と振り返る日々、そこから自分自身を受け入れるまでの過程をさらに深く掘り下げる。そして看護師を経てセクシー女優という天職にたどり着いた理由、同じ悩みを抱える人たちへのメッセージまで、自らの人生を包み隠さず語ってくれた。(記事は全2回の2回目)
初潮の知識はあっても対処法は知らず
――月経はどうなりましたか?雄乃:男性ホルモンを打つと月経は止まります。
――月経に関して子どもの頃はどう思っていましたか?
雄乃:母から月経のことは教えてもらっていたんですが、小学3年生のときに両親が離婚をしたので、実際に初めて月経が来たときには母がそばにいなかったんです。月経という現象自体は知っていたものの、実際の対処法についてはまったく知識がありませんでした。そのため、スカートを血まみれにしてしまうこともよくありましたし、生理用ナプキンの正しい使い方もわからなくて、下半身が血まみれのまま過ごしていたこともありました。
――心は男性なのに月経がくることへの嫌悪感はありましたか?
雄乃:私の場合は生理痛がなかったこともあって、そこまで強い嫌悪感は感じておらず「男性になるにあたって不便だな」と思っているくらいでした。でも、男性ホルモンを打てば止まるんですよ。だから、月経は困難じゃなかった気がします。それより体に対する嫌悪感があって、胸オペをしたい気持ちの方が強かったです。
――第二次性徴を迎えて胸が大きくなったときはどうでしたか?
雄乃:胸の膨らみを小さくするためのシャツ(ナベシャツ)を着ていました。
――自分でブラジャーをつけようとしなかったのですか?
雄乃:知識がなかったんです。それに私の胸があまり大きくなかったんです。でも、男性器があるように見える、股間を膨らませるものがあるんですけど、大学生の頃はそれを付けていました。看護大学時代は戸籍名も変更して男性ホルモンも打っていたので、カミングアウトせずに男子生徒として生活していたんです。カミングアウトしないで、バレてはいけないという状況下がすごいストレスでした。
――どうしてカミングアウトしなかったんですか?
雄乃:男性として生きていくと決めていたので、あえて言わなくてもいいかなと思っていたんです。あと狭い地域で進学したので、高校の繋がりなどから、私が元々女性だったことは多分どこからかバレていたとは思うんです。のちのち、身近な人には伝えたり、直接のカミングアウトはしなくても、性に違和感がある当事者の会を開いていたし、大学4年間同じクラスメイトなので、みんなには知られることになりました。それに隠すことに耐えられなかったこともあります。
高校・大学時代は「地獄でしたね」「私は一体何者なんだ」
――トランス男性として生き始めた高校、大学生活はどうでしたか?雄乃:地獄でしたね。男性へと移り変わる時期でもあったので、事務手続き諸々と、その頃が一番大変でした。他者に受け入れてもらえるのかという不安もありましたし、自分自身を受け入れるという自己受容の葛藤もありました。その二つの間で揺れ動いている時期なので、本当に苦しかったです。それに、私は性に関してすごく寛容だったので、ほかのトランスジェンダーの人たちと比べても、自分はすごく異質なんじゃないかと思っていたんです。「自分は嘘をついているんじゃないか」と疑心暗鬼になることもありましたし、当時は知識もなかったので、本当に苦しかったです。それに、周囲には理解してもらいやすいように「男として生きています」と、わかりやすく説明していました。でも、本当の自分はそれだけでは表現しきれなかったので、言葉にできないもどかしさがありました。「私は一体何者なんだ」と自問し続けていた、まさにモラトリアムの時代でしたね。
――その地獄からどうやって脱出したのですか?
雄乃:看護大学だったので、周りの学生が優しかったことと、精神看護の先生が手を差し伸べてくれて、当事者の語りの場に連れ出してくれたんです。先生が、大阪や京都の大学でトランスジェンダー当事者として研究している方々を、わざわざ看護大学に招いてくださり、さまざまな知識を教えてくれました。「人間の性別は『生物学的性』『心の性』『社会的性』の3つで構成されていて、すべてが男と女の間でグラデーションになっているんだよ」と。それに、「雄乃さんは、生物学的には女性、心は男性、でも社会的振る舞いが女性性寄りなんです」と言われて、それだったら確かに納得だな、と点と点が繋がったんです。
――私が少し混乱していたのはその「社会的性」ですね。
雄乃:どうやって社会の中で振る舞うか、という部分です。現在の私は女性寄りの振る舞いをしていますが、昔はグラデーション的な振る舞いもしていたんです。私は身長が160センチしかなくて細身なので、男性社会に入ってしまうと、どうしても弱者になってしまうんです。もし自分がこの社会で強者として戦うなら、自分のルックスを活かせる女性のフィールドの方がやりやすいな、と判断しました。なので、私は生物学的性は女性、心の性は男性、社会的性は女性なんです。
「私は嘘つきじゃなかった」救いになった一言
雄乃:女性として見られたいというよりは、人間として美しくありたいので、自分の中で女性としてのルッキズムを加速させているんです。それと、男性ホルモンを投与すると肌が荒れるので、耐えられなくなったんです。だから、私は女性に近づいた方が美しくあれるので、女性装をすることに抵抗はないんです。でも、冠婚葬祭の正装時は、男性スーツを着ていきます。私の正装は男性装なんです。
――私たちが常識にとらわれているだけで、自分が正装だと思ったから着るという単純な理由ですよね。そうやって看護大学での学びや知識を得たことで、地獄から解放されたと。
雄乃:はい。知識を得たことで「自分は嘘つきじゃなかったんだ」と思えて、ようやくこの地獄から少し解放されました。でも、お世話になった当事者の方が「トランスジェンダーは進むも地獄、留まるも地獄という言葉があるんだよ」とおっしゃっていて、本当にその通りだなと思いました。地獄そのものが消えるわけではないけれど、仕組みがわかったことで少し楽になれただけです。だからどんどん楽になろうと自分を受け入れ続けた結果、ある種、最強の「モンスター」が誕生したなと思っています(笑)。
――看護大学を卒業したあとはどうされたのですか?
雄乃:看護師になりました。新社会人の辛さは性別関係なくみんな同じですので、普通に必死に働いていましたね。
セクシー女優になった理由「純粋に性的な感情を100%ぶつけ合える」
――そこから、セクシー女優になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?雄乃:ずっと夜職に憧れていたことと、性への興味と関心が高かったことかな。母方の親がスナックのママをやっていたので夜職の家系でしたし、性への興味と関心が高いこともあり、風俗や性病クリニックで働いていたんです。その中で男優さんや女優さんを見ていて、セクシー業界の距離が自然と近くなっていったんです。
――なるほど。
雄乃:それに私は元々、人や性が好きなので、キャバクラのようにお客様が私に尽くしてくれる関係は、お互いにとってウィンウィンだと思っていたんです。でも、だんだんと「お客様は私自身を好きというより、お金をあまり使わずに性的なことをしたいだけなのかな」と感じるようになってしまったんですよ。そう考えるようになってからは、大好きだったはずの性的行為に対して心理的なハードルが高くなってしまい、一時期はプライベートで性的行為ができなくなってしまったんです。そんなときに出会ったのが、成人向け作品だったんです。成人向け作品の世界では、男女のドロドロした駆け引きではなく、メーカーさんや男優さん、事務所のみなさんと一緒に、一つの作品づくりとして純粋に性的な感情を100%ぶつけ合える。その環境が私にはすごく心地よくて、うれしかったんです。だから私にとって、愛情や情熱をぶつける場所が、セクシー女優だったという感覚ですね。
――一般社会とセクシー業界を比べて、トランスジェンダーに対する差別や違いなどは感じますか?
雄乃:元々、看護の世界という比較的フラットな環境で生きてきましたし、セクシー業界も偏見や差別の少ない世界ですよね。振り返ってみると、自分が生きやすく、ありのままでいられる環境を、本能的に選びながら生きてきたんだと思います。
――その境地に至った最大の要因は何ですか?
雄乃:あらゆる障壁を受け入れ続けたことです。
――受け入れることと妥協は違いますからね。そこには強い意志が感じられます。
雄乃:受け入れたら「モンスター」になりました(笑)。
支えてくれた人たちへの、涙の感謝
――かなり深い話が聞けましたが、現在、同じようにセクシャリティで悩んでいるトランスジェンダーの方へ、メッセージをいただけますか。雄乃:「あなたは嘘つきじゃないから大丈夫だよ」と伝えたいです。私がこうして表に出て発信することで、若い世代の子たちが少しでも楽に生きられるように、世間の理解を広げていきたいです。だから、踏ん張って、少しだけ安心して過ごしてほしいなと思います。
なので、私はとりあえずSNSのフォロワー1万人を目指して頑張ります(笑)。
――素晴らしいメッセージです。
雄乃:それに、この問題はトランスジェンダーの子たちだけのものではなく、社会から「男性らしさ」「女性らしさ」を求められて苦しんでいるすべての人にとっても、生きやすさに繋がる話だと思うんです。みんなで考えていくことで、人々がもっと楽に生きていけるのではないかと思っています。
――ちょっと蛇足になりますが、テレビのバラエティ番組などに出演するトランスジェンダーやニューハーフの方が、いわゆる「いじられキャラ」や「自虐」として振る舞うことについてはどう思われますか?
雄乃:私自身も自虐をして生きてきた時期があるので、気持ちはすごくわかります。社会に受け入れてもらうために、先輩方が必死に努力して道を切り開いてくれたんだなと思っています。ただ、だからといって、それを見た一般社会で、トランスジェンダーの人たちが差別的な言葉でからかわれたり、いじめられたりすることは、私は絶対に許しません。「エンタメと一般社会は別物だ」ということをみんながしっかりと理解することや、身近にいる大好きな友達のことだと、もしもの想定をしてほしいです。それに当事者の人には、厳しいことを言いますが、勉強でも容姿でも何でもいいのでひとつ周りの人より努力して、受け入れてもらう体制を整えるのがいいかなって思います。残念ながら、私たちはひとりで生きているわけではなく、社会と共存しているので。
――最後に、これまで支えてくれた周囲の人や友人に向けてメッセージはありますか。
雄乃:自分の人生を振り返って、自分の性と生に正直なだけなんだと思います。この時代の日本に生まれたことは本当にラッキーでした。そして、これまでの人生でたくさん迷惑をかけてしまった周囲の人たちには「ごめんね」ということ、私を今日まで生かし、受け入れてくれて「本当にありがとう」という感謝の気持ちをこの場を借りて伝えたいです。あなたたちがいなかったら、私は絶対に生きていけなかったです。
※ ※ ※ ※ ※
「男か女か」という単純な二択では語れない人生を歩み、自分自身を受け入れ続けた先で「私は私になった」と言い切る雄乃ゆめさん。その言葉には、長年の葛藤を乗り越え、自分らしく生きることを選び続けてきた強さがにじんでいた。
このインタビューが性別に限らず、「自分らしさ」や「生きづらさ」に悩む誰かにとって、少しでも心を軽くするきっかけになれば幸いだ。
X:@onoyume_
<取材・文・撮影/神楽坂文人(X:@kagurazakabunji)>
※性の在り方は多様です。
・性的指向:どのような性別の人に恋愛感情や性的な関心を抱くか
・性自認:自分自身の性別をどのように認識しているか
・身体的な性の特徴:身体的・生物学的な特徴による性
・性表現:服装、髪形、仕草、言葉遣いなどを通じた性の表し方
これらは必ずしも一致するとは限りません。
―[雄乃ゆめ]―
【神楽坂文人】
世界一セクシー女優を取材しているカメラマン、ライター、インタビュアー。元成人誌編集者のため、最後の砦として活躍中。年間イベント取材数300本超え! 年間インタビュー数200本超え! バイクで都内を駆け巡り1日で複数の仕事を受けている。X(旧Twitter):@kagurazakabunji
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年10月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/61-wQA+eveL._SL500_.jpg)
![Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2024年 10月号[日本のBESTデザインホテル100]](https://m.media-amazon.com/images/I/31FtYkIUPEL._SL500_.jpg)
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年9月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51W6QgeZ2hL._SL500_.jpg)




![シービージャパン(CB JAPAN) ステンレスマグ [真空断熱 2層構造 460ml] + インナーカップ [食洗機対応 380ml] セット モカ ゴーマグカップセットM コンビニ コーヒーカップ CAFE GOMUG](https://m.media-amazon.com/images/I/31sVcj+-HCL._SL500_.jpg)



