シンガー・ソングライターの長渕剛(69)が20日、千葉・松戸市の森のホール21で全国アコースティックツアー(16都市19公演)の初日公演を行った。今年から米大リーグ・マリナーズで活躍したイチロー氏らが師事した「ワールドウィングエンタープライズ」の小山裕史代表(69)のもとで肉体作りに着手。

施設がある鳥取市内で事前合宿を実施した。この度、2人の初対談が実現。「心の友」として共闘を誓った。(加茂 伸太郎)

 小山代表の熱い指導の下、まだ見ぬ自分に出会うため、長渕は懸命に汗を流した。「とんでもなくきつい。でも、そのつらさがうれしいですね」と充実ぶりを語った。

 初動負荷理論(B.M.L.T.)を発表し、スポーツ分野だけでなく故障の早期改善、麻痺(まひ)改善の研究と実践の第一人者・小山代表とはこの春、関係者を通じて初対面した。30代前半からトレーニングジムの名門「トレーニングセンターサンプレイ」の宮畑豊会長(23年逝去、享年81)のもとで肉体改造に励んだ。

 ジムの仲間から小山代表の存在を知らされており、「昔からすごく気になっていた方」だった。小山代表も、長渕の曲が「大好き」で「『乾杯』『とんぼ』。剛ちゃんの20代、30代の頃の音楽を集めていくと、全部知っている曲」というほど。1956年生まれの同学年とあって、すぐに意気投合した。

 この日開幕したツアーに備え、定期的に同社のトレーニング研究施設を訪問。イチロー氏、山本昌氏らも使用した、リラックスした状態の筋肉に負荷を与え、筋肉の伸び縮みを自然と誘発させる「B.M.L.T.カム」マシンでトレーニングを行った。

 「ストレッチマシンとは全く違いますね。そういう軽薄なものじゃない。長年続けてきた筋トレとも違う。トレーニングは苦しさを伴うものですが、その質が違う。もっと行くぞと、やればやるほどやりたくなる。不思議な感覚ですね」

 その効果は、すぐに目に見える形で出始めた。「長年ギターを弾いていて肘が悪くなっていたんです。諦めて(小指以外の)4本で弾くようになっていたのが、先生のところに行く度に良くなっている。人間は弱い生き物だから、簡単に諦めてしまう。でも、諦めていたことが『またできるかも!』と希望に転じると、スッとできちゃったりするんです。

先生は背中の押し方がものすごく上手で、『いけるかもしれない!』って思わせてくれますから」

 故郷の鹿児島・桜島での7万5000人ライブ(04年)、富士山麓のふもとっぱらでの10万人オールナイトライブ(15年)など前人未到の偉業を成し遂げてきた。デビュー48年、今なお第一線を走り続け、未開の地を歩もうとする姿は32年活躍し、日本球界で唯一50歳までプレーした山本氏とダブって見えた。

 小山代表は「彼が50歳までプレーすると予測した人は誰一人としていない。そこ(に取り組む姿や過程)は69歳で現役(バリバリ)の剛ちゃんとすごく重なります」と説明。「昌くんの場合は(ストレートの)回転数を上げる特殊性を持っているから、そちらを磨こうと。(『火の玉ストレート』として最速156キロを誇った)藤川球児君よりも回転数が高かったですから。今は重要視されているけど、回転数という概念がなかった時代。重要視されてもやり方(=プロセス)を知らないから表現できる人は少ない。それができたから、あの記録なんですよね」

 その長渕は「(未知の)その領域までいってみなければ分からないことってたくさんある。どうしてもいくんだ―と言っても、周囲にはなかなか理解してもらえない。その領域、景色がいかなるものかは一口には言えない。でも、先生は『行ってみないと分からない景色があるから行くんだよね』と共感してくださったんです」と絶大な信頼を寄せている。

小山代表にとっても、長渕は自身の研究におけるこれ以上ないサンプルになる。「僕の研究自体が神経系ですから。剛ちゃんの心臓、お歌の時の呼吸法の領域にいくんです。そのことを追求してみたいですね。スポーツ選手は引退するので感覚が変わってきますが、剛ちゃんは(69歳にして)現役。この歳にならなければ追い込めないものがありますから、そこがすごくいい」

 生きてきた世界は違えど、ともに一流同士。そこには感覚的に通じ合うものがある。「同じ時代を生きた」という絆のようなものが、信頼関係をより強固にした。

 長渕は「夕焼けって見ているだけで涙が出るでしょ。それを『ね!』って(共感できる)人がほしいんですよ。先生とは、きっと同じ夕焼けを見ていたと思うんです。それがいいですよね。

心の友の『心友(しんゆう)』や『兄弟』とおっしゃってくださって」と感激。小山代表も「一般的な兄弟以上かもしれないですね。剛ちゃんは僕のエネルギーですから。生涯(共振、共鳴を)お願いしますね。論文には謝辞を述べるところがありますので、その英語論文ができた時には『世界のアーティスト・長渕剛様に感謝をささげる』と。パソコンのタッチボタンを一緒に押せれば」と思いをはせた。

 長渕は「(欲を言えば)20年早く先生にお会いしたかったな~。お会いできていたらグレずにすんだんじゃないかな」と笑った。「そんな話も、笑いながらも本気でできる。本物を目指す人たちが小山先生の門をたたいたように、69歳、この“ロックな年”に先生と共闘して、厳しく険しいトレーニングをして(ステップアップして)いきます」

 固い握手を交わした2人。唯一無二の存在として、これからも第一線を走り続けていく。

 ◆小山 裕史(こやま・やすし)1956年11月14日生まれ。

69歳。(株)ワールドウィングエンタープライズ代表。早大人間科学研究科博士課程修了(博士/人間科学:神経筋生理学、動作科学)。94年に初動負荷理論を発表。イチロー氏、山本昌氏、岩瀬仁紀氏らを指導した。

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