プロフィギュアスケーターの羽生結弦さん(31)が、7月19日にプロ転向から4年を迎えた。4周年を記念した特別インタビューの最終回で、5年目への抱負に「つづきのはじまり」を掲げた。

(取材・構成=高木 恵)

 羽生さんは振り付けを完成させていく際、おおよそ3段階の過程に分けて行う。まず振り付ける。次に映像でつなげる。そして前回の最後にあった「フィギュアスケーターあるある」が、最後の締めとなる。

 「編集した映像を見たときに思うんです。あそこのリンクを使っていないな、こちらばかりにいるなとか、360度から見られているからこそ、余計にどこかに偏っちゃいけないというのが出てくるんです。自分の中に、殻にこもっていると、1か所だけに止まっていたりしてしまうので。同じ方向にしか回らなかったりもするので。これを反対に回そう、これをこういう風にこちら側に回そうとか、このステップをここに入れよう、難しいターンをここに入れようとか、そういうことをどうしてもやっていってしまうんです。これは競技スケートをやっていた人間の性な気がします」

 羽生さんは演目を作る際、500回以上曲を聞き込む。驚きの数字に映るが、羽生さんにとっては当たり前のことだ。

 「『幾重』(注1)を作っていくにしても、『Prequel』(注2)の振り付けを作っていくにしても、そのままの思いで滑るパートもありつつ、そのままの思いだけで滑ってしまうと、ただ感情のまま滑っているだけにしか見えないということもあります。

かといって逆に整えてしまうと、整ってしまった寂しさみたいなものも、やはりありますし。そこもまた、表現の奥深さだと思います」

 出演と制作総指揮を手掛けた4月の単独公演「REALIVE」。演目間の映像演出で、4回転トウループを決めた羽生さんが「おかえり」と口にするシーンが印象的だった。

 「やっと帰ってきたな、という気持ちでした。やはり、スケートをやっていない期間が本当に長かったので。氷上に上がれない期間が本当に長かったので。正直去年、ジャンプの練習も全然できなかったんですよ。技術的にも体力的にも落ちたところがたくさんありましたし、体の協調性がどんどんどんどん変わっていっていたので。それまでのように、ただ力を入れてフッて跳ぶ、だけだと跳べなくて」

 メンテナンス期間を経て、再始動。しかし試練はあった。今年1月半ばに右足首を痛めた。診断名は骨挫傷。

座長を務めるアイスショー「羽生結弦 notte stellata」まで2か月を切っていた。

 「腫れて靴が入らなくなってしまって。そのままにしていたら、靴擦れで表面の皮膚も痛んでしまって。ステロイドを打ったりもしました」

 仲間の支えもあり、全力で3公演をやりきった。魂のこもったスケートを届けた。その1か月後には「REALIVE」が控えていた。今度は一人で滑りきらなくてはならない。映像中の「おかえり」は、本番19日前の3月23日に行われた、通しのリハーサルでのものだという。

 「なかなか、うまく練習もできないし、痛いし、でも、どんどんショーは近づいてくるし、焦るし。こんなんじゃ見せられないみたいな。こんな自分見せたくないみたいな感じで、ずっと焦っていた時期ではあったんですよね。その時に初めて4回転トウループをバーンって跳べたんです。

『おかえりー!』って思って、『帰ってきたー!』って思って、叫んでいたという経緯はあります。やはりフィギュアスケートをやっている限りは怪我はつきものですし、右足の捻挫というのが癖になっているところもあるので。今後も付き合わなければならないんですけど。やはりその焦りと、怪我と、自分のイメージとの体のギャップと、みたいなものが、すごく大変だったなとは思います」

 強度の高い演目を詰め込みながら、2時間15分の公演を完走。第1部は「Otonal」(秋によせて)など7曲。第2部の「Prequel」は、20分近く出ずっぱり。1年2か月ぶりの単独公演で、成熟した表現を生み出した。昨年のインタビューでプロ4年目の抱負に「つづきのつづき」とつづった。5年目のテーマは? 羽生さんは熟考の末、導き出してくれた。

 「『つづきのはじまり』です。やっと始められるという気持ちが、今はあります。正直去年、メンテナンス期間を取るということは苦しかったです。

ずっと練習もしていたかったし、皆さんのために努力していたことを、1回捨てなきゃいけない時期でもあったので。やはりすごく大変でしたし、『人前で演技をできるレベルじゃないな』と思いながら過ごしてきていました。痛みもなくなり、今は『やっと始められる』というような気持ちでいます」

 現在はアイスストーリー第4弾に向け、多忙な日々を過ごしている。これまでの努力、これからの進化。期待しかない「つづきのはじまり」がスタートする。

【注1】「ゆず」とコラボした震災伝承ソング。自ら振り付けし滑った

【注2】「REALIVE」の第2部で演じた長編作品。映画「国宝」の音楽担当、原摩利彦氏が書き下ろした曲

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