馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はケイティラブが勝った2010年のアイビスSDを取り上げる。

不祥事でドン底を味わい、一時は騎手免許返上にまで至った西田雄一郎騎手(現調教師)が千直のスペシャリストと14年ぶりの重賞制覇を果たした。

 庭のように走れる得意の舞台を一直線に伸びてきた。新潟の直線1000メートルで3勝を挙げているケイティラブがスタートダッシュで勝負を決めた。最初の2ハロンは何と11秒6、9秒9で21秒5。08年の21秒7を上回る歴代最速のラップを刻んで飛ばす。

 グングンと加速。ライバル17頭を全く寄せつけない。スピードは最後まで衰えることなく、食い下がるジェイケイセラヴィを3/4馬身退けて、重賞初挑戦Vを成し遂げた。

 「自信を持っていたんですよ。去年、(直線1000メートルで)自己条件を勝った時が強かったので、アイビスに使えれば、と思っていたんです。“千直”のスペシャリストですよね」と西田。自身にとっても96年七夕賞(サクラエイコウオー)以来、実に14年ぶりの重賞制覇だ。

「ずいぶん昔ですね。いい馬に乗せてもらって、期待に応えたいと、がむしゃらに頑張ったら、結果が出ました」

 試練を味わった。98年8月に犯した速度違反などで、懲役4か月、執行猶予2年の判決を受けた。翌99年10月には騎手免許を返上。宮城の山元トレセンで「自粛期間」として5年間、働いた。地道な積み重ねが認められて、05年3月には騎手免許を再取得。今や35歳の中堅騎手として、着実に腕を磨いてきた。「応援してくれる人がいるから頑張ってこられました」と周囲への感謝の気持ちを忘れない。

 野元調教師にとっても喜びの1勝だ。来年2月いっぱいで定年を迎える。「最後も余裕があったし、本当に強くなってきた。最後(の年)だから重賞を取れてうれしいね」。

8番人気とは思えぬ会心の勝利で、トレーナーとジョッキーに大きな幸せを運んできた快速牝馬。夏の新潟に笑顔の輪が広がった。

 一方、牝馬初のJRA同一重賞3連覇がかかっていたカノヤザクラはゴール前で大きくバランスを崩し、10着に敗れた。左第1指関節脱臼の発症で安楽死処分。悲しい形で天国へと旅立った。

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