◆歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」(26日千秋楽)

 客席は大爆笑、大拍手。角書が「四世片岡亀蔵を偲(しの)んで」の「らくだ」だ。

昨年11月に急逝した亀蔵は河豚(ふぐ)の毒で死んだ馬太郎が当たり役。兄・市蔵(67)が初役で奮闘。踊る死人を弟とは違う個性で魅了している。

 馬太郎は裏長屋に住む鼻つまみ者であだ名がらくだ。悪友の半次(松本幸四郎)が通夜に一計を案じ紙屑(かみくず)買いの久六(中村勘九郎)に死人踊りをさせて家主から酒と肴(さかな)をせしめる。

 久六が唄(うた)うのが、かんかんのう。江戸後期から明治にかけて流行した民衆歌謡。今で言うならナンセンスソング。曲に合わせて踊った亀蔵は絶品だった。

 いよいよ踊りへの始まり。半次に抱き起こされ首はフラフラ、両手はへラヘラ。死体を背負わされた久六が嫌がる。

笑いが広がり家主の前で踊る手足、顔まで真っ黄色。市蔵の体が柔らかい。弟が唯一無二の個性なら兄は一生懸命な死人ぶりがかえって笑いを誘った。

 ここで余談。18世勘三郎に呼ばれて馬太郎を演じた亀蔵。平成6年の中座公演では毎日、明け方まで飲み続けたと語った。成田屋一門と活動する市蔵は12世市川團十郎と深夜までワインを痛飲。牡蠣(かき)100個を食べ分けた仲。兄弟は主役に好かれた名脇役なのだ。

 「実盛物語」の老け役・瀬尾十郎で襲名した折、座ったままの状態で前方に宙返りする平馬返りを披露した市蔵。心意気、それが身上である。(演劇ジャーナリスト・大島 幸久)

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