日本も暑いですが、ヨーロッパでは、記録的な熱波です。フランスのパリでは先週、40度を超えました。
ピークは過ぎた でも6月の暑さが異常
「エアコンがフランスには、少ない」と言われていますが、現地はどんな状況なのか。パリの郊外に長年住む、ライターの髙崎順子さんに伺いました。
ライター 髙崎順子さん
暑いねって。私、猛暑の中でパリに仕事で行ったんですけれども、クーラーがそんなに普及してないところは、直射日光がものすごいので暑い。逃げ場がないというか、オーブンの中にいるみたい。で、「クーラーが設置してるとこに行ってください」っていうアナウンスが出る。本当に皆さん涼みに行って、ヨーグルト売り場の前とかに立ってました。冷蔵庫の前なので。うちの子供たち、中学、高校で、親としてはおさんどんで自炊をするのに冷たいご飯を駆使。7月の中旬、来週末ぐらいに一回熱波が来るんじゃないかというので、皆さんも戦々恐々としてるんですけれども。
昨日7月1日のパリの最高気温は25度。この時期のパリの平均気温は18度ほどなのでやはり暑い。
ちなみにフランスは緯度でいうと、北海道の稚内よりさらに北に位置し、ふだんはカラッと過ごしやすい気候です。しかし今回は、サハラ砂漠の熱気が高気圧に運ばれてヨーロッパを覆いました。パリで40度を超えたのは先月24日でしたが、熱波のピークは一旦は越えたようです。過去にも2023年、2019年も異常な暑さでした。とくに今年は6月というタイミングも悪かったようです。
というのも、フランスは9月が年度始まりで、夏の7月・8月は長期のバカンスに入る方も多い。休みに入る8月なら、暑くてものんびり過ごせたはずです。でも6月はイベントも多いし、学校は年度末の試験のさなかです。じっさいに多くの行事が、この暑さで中止になっているそうです。
スポットクーラー、持っていっても使えない
日本とフランスで湿度が違うので、同じ40度でもちょっと違うのかもしれませんが、実はエアコンが少ない中で、現地で奪い合いになっているのが、工事のいらない「スポットクーラー」です。コンセントに差せばすぐ冷える、空気清浄機くらいの大きさで、日本でも売っているタイプです。これだけ需要があるなら、日本のメーカーには追い風なんじゃないか。スポットクーラーを国内で一番多く売っている、長野県の「ナカトミ」の吉永実さんに聞いてみました。
株式会社ナカトミ 吉永実さん
いや、ないです。全くない。事情が違うんですよ。電源環境が違うので、仮に無理やり持っていったとしてもすぐ使えないんですよね。日本は単相100ボルト(電気の規格)。これに対して、国がまたぐと、電源環境が全部違うんですよね。特に日本の単相100ボルトって海外から見るとすごい特殊なんですよね。なので、仮に持ってったとしても使えないのでっていう形ですね。エアコンに関しては「2027年問題」っていうのがあって、駆け込み需要が発生してて、今年中にエアコン買い替えちゃえっていう需要があるらしいです。なので今、ルームエアコンは取り付ける業者さんが間に合ってないみたいで、国内需要の方を、対応していくのが当社としては精一杯ですね、今は。
コンセントの電圧が違うから、そのままの規格だと差しても動かないようですが、海外進出は今年は考えていないそうです。
しかもお話を聞くと、国内で手一杯。
ただ、ミシンやプリンターで知られる「ブラザー工業」は、昨年(2025年)からフランスをはじめ、スペイン、イタリア、ドイツ、ポルトガルなどヨーロッパでの販売を開始しているそうです。同社が展開しているのは、据置型の業務用スポットクーラー。今年の猛暑の後押しもあり売れ行きは大変好調で、倉庫や工場、学校などからの引き合いが昨年の数倍に上るということでした。
景観問題で申請が面倒
では、なぜフランスで、そこまでエアコンの普及率が低いのか。パリを含む北は本来過ごしやすく、エアコンの設置率は1割ほど。一方、地中海側の南は慢性的に暑いので割合としては高まるそうですが、全体で見ると4軒に1軒ほどのようです。髙崎さんにお話を伺うと、単に涼しいだけではないこんな理由もありました。
ライター 髙崎順子さん
室外機の工事。
これフランスって各市町村で景観保護条例みたいなのがありまして、都市計画の。外観工事に結構うるさい。明確に禁止しているわけではないんですけれども、室外機をつけるための工事の許可をまず申請しなきゃいけなくて、その許可が下りるのも結構ややこしい。細かい記入をいっぱい書いて、じゃあいいかなみたいな感じで、皆さん一年また一年みたいな。ただ、やはり公共機関にあるべきところに必要な冷房がないっていうことは、皆さん問題視。ただ今の内閣が、特に病院関係、学校関係は何とかしなきゃいけないみたいな方向で議論はしているので、そういう公共施設の温度管理はちょっとは良くなるんじゃないかなと期待しています。
病院にもないのかというと、今とくに心配されているのが、病院、保育園、高齢者施設。家庭よりもさらに冷房の整備が遅れているところもあります。
そしていまフランスでは、エアコンを増やすべきかどうかについて、政治的にも意見が分かれています。右派・極右側は「学校、病院、介護施設に冷房を」と主張し、左派・環境派は「断熱改修、緑化、日よけ、都市設計の見直し」を重視する傾向。冷房は、命を守るインフラでもあるというのは、私たちにも返ってくる問題ですが、「電力消費」や「排熱の問題」を心配する一方で、冷房はもう贅沢ではないという声も広がっています。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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