サイバー攻撃で、商品が作れない、届けられない、そんな影響が身近な企業でも起きています。先月は、冷凍食品大手のニチレイがサイバー攻撃を受け、冷蔵倉庫の入出庫や食品の出荷が一時ストップ。

去年9月には、アサヒグループでも物流を管理するシステムが止まり、ビールの生産が一時ストップするなど、私たちにも身近な企業で被害が相次いでいます。

1秒間に100回?増えるサイバー攻撃

では、実際にサイバー攻撃はどれくらいあり、なぜここまで増えているのか。サイバー攻撃対策を手がける、株式会社サイバーセキュリティクラウドの代表取締役 CTO 渡辺 洋司さんに聞きました。

株式会社サイバーセキュリティクラウド 代表取締役 CTO 渡辺 洋司さん

サイバー攻撃でシステム停止 病院はどう備える?の画像はこちら >>

我々のデータですけれども、この3ヶ月ですね、4月から6月の検知件数っていうものが約8億回ぐらいの攻撃を検知してます。1秒の間にも100回ほどのサイバー攻撃っていうのを検知してます。「攻撃ってこないんでしょ、どうせうちなんて」って言ってますけど、「いやあの、サーバー公開した瞬間めっちゃきますよ」っていうのがこういうのでもすぐわかるのかなとは思うんですけれども、 ツールも一般公開されていますし、AIも使えば素人でもできるっていうことになるので。これまでは専門知識がないとできなかった攻撃だったんですけども、素人っていう人が攻撃できるようになったので、それによって攻撃が増えているっていうのは現実的にあるんじゃないかなって思います。

この会社では「攻撃遮断くん」というサービスを国内 2万以上のウェブサイトに提供していて、ウェブサイトの前で不正な通信を見分けて遮断する、「門番」の ような仕組みで攻撃を防いでいます。ただ、どれだけ対策しても攻撃を100%防ぐのは難しく、バックアップから本当に復旧できるのか、異常が起きた時に誰が判断するのかまで、あらかじめ決めて訓練しておくことも重要だといいます。

電子カルテが止まったら?

そして、備えが必要なのは企業だけではありません。埼玉県川口市の川口工業総合病院では、サイバー攻撃で電子カルテが使えなくなる事態を想定した訓練を行っています。なぜ病院で訓練が必要なのか、システム管理課 課長 堀岡 一茂さんに聞きました。

川口工業総合病院 システム管理課 課長 堀岡 一茂さん

医療現場では、今や電子カルテを始めとした多くのシステムが使われています。そのため一つのシステムが障害を起こすことで、いろんな診療に影響があります。

例えば電子カルテが見えなくなると、患者さんのアレルギーだったり持病だったりこれまでの治療内容がすぐに確認できない状態となりますので、1分1秒患者さんの命に関わるような場面もあるため、システム障害が単なるパソコンのトラブルで済ませられない場面とかがあると思っています。だからこそ今病院では定期的にバックアップを取るだけとかではなくて、もしシステム障害があった場合どうするかっていう訓練を今行っています。 

この病院では、サイバー攻撃を想定した訓練を、2014年から毎年行っていて、今回は院内のすべての部署を対象に実施しました。サイバー攻撃によって電子カルテが使えなくなり、紙カルテへの切り替えが決まると、外来で使う紙カルテの用紙を、およそ10分で各受付に届ける想定。さらに、システムを使わず、紙のカルテで60分以内に外来診療を再開することを目標にしています。 

実際の訓練はどう動く?

では実際、職員はどう動くのか。病棟の電子カルテ端末がウイルスに感染したという想定で行われた訓練の様子を聞いてください。

ポップアップが出ました。はい。私のパソコンも出ました。はい。Wi-Fiをオフにしてください。Wi-Fiをオフにしました。

デスクトップはそのまま、LANケーブルは抜いてください。抜きました。 

訓練でWi-Fiを切ったり、LANケーブルを抜いたりしていたのは、感染が疑われるパソコンをほかの端末から切り離して、被害が広がるのを防ぐため。そして診療を続けるため、紙のカルテに切り替えます。ただ、この紙は患者さんの過去の診療情報があらかじめ入っているものではなく、決められた書式です。電子カルテが見られなければ、患者さんの情報を一から確認することもあります。

紙カルテで見えた新たな課題

つまり、紙に切り替えればそれで安心、というわけでもありません。では、実際に訓練をして、どんな課題が見えてきたのか。川口工業総合病院 看護部部長 佐藤 泉さんに聞きました。

川口工業総合病院 看護部部長 佐藤 泉さん

紙カルテを経験したことないスタッフはやはり電子カルテがない状態で診療を続けることをうまくイメージできてないと感じました。一番のリスクは、これまでシステムが自動で行ってくれていた安全確認ですね。そちらを全ての人の目と手作業に頼らなければならなくなることだと思っています。

例えばアレルギー情報が登録されていれば、アレルギーの方に造影剤の検査をオーダーしようとした際に、システムが自動で警告を表示します。また薬を処方する際には併用注意や禁忌の薬剤がないかを自動でチェックします。このように電子カルテでは何重にもチェック機能が働き安全を確保しています。今回の訓練でも改めて、電子カルテが使用できなかった場合の具体的な運用方法が決まっていない部分があることがわかりました。そのため今年度の災害対策委員会では、紙カルテを知らない世代にもわかりやすいマニュアルを作成するというテーマとして取り組んでいます。

ほかにも電子カルテは、患者さんの腕についたバーコードを使って、薬を渡す相手が合っているか確認したりしています。紙に切り替わると、こうした確認やカルテを運ぶ作業も、人の手に戻ります。だからこそ、止まった時に備えた訓練が重要です。私たちも病院に行く時は、紙のお薬手帳を持っておくと、薬の情報を確認する手掛かりになるそうです。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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