今日は「外濠(そとぼり)」のお話です。外濠というと、皇居を囲むお濠を思い浮かべるかもしれませんが、それは「内濠」。

今回取り上げるのは、その外側、市谷や四谷のあたりにある「外濠」です。

この外濠、夏場に実はかなりまずい状態になっているそうなんです。どんな様子なのか、中央大学・研究開発機構の山田正教授に伺いました。

外濠は「巨大な金魚鉢」

中央大学・研究開発機構・教授 山田 正さん

臭いドブの匂いです。夏場はひどいです。これをね、アオコと言います。皆さんね、子供の時金魚飼ったことあります?水をしょっちゅう綺麗にしないとダメでしょ?掃除しなかったら緑色の藻が付くでしょ。あれがそうなんですよ。で、彼らは水温が高い27、8度以上あって、それから日射がたっぷりあると、どんどんどんどん自己増殖、成長していくんです。どんどん成長して、このドブの匂いがプンプンしてくるんですよ。上から腐っていって。私はそういうものを研究するから、あそこの市ヶ谷の駅から、あの橋の上から、あの汚い表面をパチパチパチパチ写真撮るんですよね。それをやってると、通りがかりの人が、これ何撮ってんだろうと思って、「何撮ってんですか?」って言うから、あの汚い水面を撮ってますと、へーと返ってびっくりされるんですけどね。

外濠は”巨大な金魚鉢”? 江戸の水路を復活への画像はこちら >>

私も実際に見てきましたが、水面は一面「緑」。匂いまではしませんでしたが、水面を見るだけでも、状態の悪さは伝わってきました。この色の正体が「アオコ」。植物プランクトンが大量に増えた状態です。これが死ぬと底に沈んでヘドロになります。それが腐ると臭いのあるガスが発生する。これがドブ臭さにつながっています。

でも、なぜここまで悪化するのか。そもそも外濠の水は、主に雨水。たまった水がなかなか入れ替わらない、まさに「巨大な金魚鉢」です。しかも、大雨が降ると、雨水と一緒に下水も混じって流れ込んで、水はさらに汚れます。

江戸の水路を復活

では、この「巨大な金魚鉢」に、どうやって水を流すのか。そこで目をつけたのが、江戸時代の「水路」なんです。

再び山田教授に聞きました。

中央大学・研究開発機構・教授 山田 正さん

大ざっぱに言うと1600年ぐらいに、徳川家康がやってきて、やってきた途端にどんどんどんどん人口が増えるんで、飲料水をどうやって確保するかっていうんで、抜本的な対策として多摩川から水を引こうと考えた。玉川から引いた水を延々と人工的に川を作って、江戸の中心地まで持ってきた、それが「玉川上水」。そのうちの余った水は、外濠に入れてたんですよ。それをもう一回使ったらどうだということで、東京の地下に入ってる分を手直ししつつ、色んなところ直さないとそのままは使えませんから、実際に動かす予算が計上されたということですね。

江戸時代に飲み水を運んでいた玉川上水のルートを、もう一度使おう、ということなんです。玉川上水は、多摩川の水を江戸の町まで運ぶためにつくられた水路。東京の西「羽村」から、東の「四谷」まで、およそ43キロ続いていて、その水の一部は外濠にも流れ込んでいました。ところがおよそ60年前、水の流れが途絶えます。玉川上水も一時はゴミが捨てられるなど、荒れた状態になりました。

ちょうど今月、この玉川上水の歴史を描いた絵本『絵で読む 玉川上水』も発売されたばかりです。

外濠は”巨大な金魚鉢”? 江戸の水路を復活へ
<『絵で読む玉川上水 江戸のくらしをささえた水の道』(青柳明日香・著)>

今回の計画では、このルートを現代によみがえらせます。

流す水は、昔とは違って荒川の水など。玉川上水を通して四谷まで運び、そこから地下の新しい水路で、外濠へ流します。

「26年かかった」

費用はおよそ340億円。水が流れるのは2030年代半ばの予定。水が流れるまで、まだ時間がかかりますが、ここまで来るのにも、実は26年かかっています。玉川上水の再生や、世界遺産を目指して活動してきた「玉川上水ネット」の事務局長、鈴木利博さんに伺いました。

玉川上水ネット 鈴木 利博さん

あんな玉川上水のね、どぶっこをね、どぶ川を何が世界遺産なんだっていうのが、みんな笑い飛ばされたのが当時です。なぜかっていうとね、私は小平の人間なんです。当時の玉川上水、空堀だった時があるんです。水が流れなかったこと。その時はゴミ捨て場になろうとしてたんです、玉川上水そのものが。それでゴミの清掃から始まって、水を流そうよ、もう一回流し込もうという運動から始まったんですよ。

それで東京都が外堀浄化、予算をつけてくれました。完全に動き始めてるんで、私たち市民は大賛成、もろ手を挙げて。行政ってのは本当にわかったよと言うけど、予算つけて動くには時間がかかるな。私が85歳、26年長いですよ。生き長らえないといけないなと思ってます。

水が入れ替わるのは、外濠のうち、市谷濠など3つの濠。外濠全体ではありません。水が流れ始める2030年代半ばまでは、薬剤をまくなど、今の対策を続けます。そして完成すれば、この水は、首都直下地震などの災害時には、水源としても使える見込みです。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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