阪急淡路駅付近の高架化、さらに5年延伸へ 事業費2681億円...の画像はこちら >>

大阪市は2026年8月18日の大規模事業リスク管理会議で、阪急電鉄京都線・千里線の淡路駅付近の連続立体交差事業について、事業期間をさらに約5年延びる見通しを示しました。高架への切り替えは2028年度から33年度へ、事業全体の完了は31年度から36年度へ変更する見込みです。

事業費も現在の2326億円から約355億円増え、約2681億円となる見通しです。大阪の鉄道工事の中でも長期にわたる大型プロジェクト。その背景を大阪市の資料から見ていきます。

【参考】【なにわ筋線】総事業費「6425億円」へほぼ倍増 増額分の半分強は工事費単価上昇、それでもB/C1.05で継続「妥当」 https://tetsudo-ch.com/13036777.html

淡路駅付近を高架化する事業、踏切17か所除却

この事業では、阪急京都線と千里線の淡路駅付近約7.1キロを高架化します。京都線は3.3キロ、千里線は3.8キロ。崇禅寺、淡路、柴島、下新庄の4駅を高架駅とし、17カ所の踏切を除却します。このうち4カ所は、列車の運行本数が多く遮断時間が長い「開かずの踏切」です。

踏切をなくすことで道路交通を円滑にするだけでなく、線路によって分断されている市街地を一体化する狙いがあります。淡路駅周辺では土地区画整理事業もあわせて進められています。

事業期間は1996年度から始まり、97年度に用地取得へ着手。鉄道高架工事は08年度から順次始まりました。大阪市の最新資料では、26年3月末時点の進捗率は全体事業費ベースで78%。完成した高架構造物も増え、淡路駅の新しい駅施設は外観からもその規模が分かる段階まで姿を見せています。

なぜさらに5年? 新幹線を越える橋と働き方改革

今回、延伸理由として最も大きいのが、安全性を考慮した施工方法の見直しです。これだけで34カ月の延長を見込みます。

中でも大きいのが、東海道新幹線と交差する部分の橋梁工事です。大阪市は当初、すでに施工したJRおおさか東線との交差部分での実績を参考に工期を想定していました。しかし関係者との協議を進めた結果、施工方法を見直すことになり、24カ月長くなる見通しとなりました。

新幹線交差部では、橋桁を組み立てるための仮設設備が多く必要となるほか、作業場所が狭く、橋桁を所定の位置まで降ろす量も大きくなります。さらに中央部分だけでなく側面の橋桁を架ける工程も必要です。大阪市は、こうした条件を積み上げた結果、JRおおさか東線との交差部より工期が長くなるとしています。

阪急淡路駅付近の高架化、さらに5年延伸へ 事業費2681億円、完成は36年度見通し
JRおおさか東線交差部(画像:大阪市)
JRおおさか東線交差部(画像:大阪市)

下新庄駅周辺でも施工方法を変更します。

周辺には幅約4メートルの道路があります。工事中に道路を車両通行止めにする影響を避けるため、工事用地の中にタワークレーンや仮設ステージを設置する方法へ変更。これによって10カ月の延長を見込みます。

阪急淡路駅付近の高架化、さらに5年延伸へ 事業費2681億円、完成は36年度見通し
下新庄駅付近の施工状況(画像:大阪市)
下新庄駅付近の施工状況(画像:大阪市)

そして、近年の建設現場を取り巻く環境変化も工期に影響します。

24年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。現場では週休2日を基本とする4週8閉所を導入。夏場には猛暑日を不稼働日として扱う工期設定も必要になります。大阪市はこうした働き方改革などによる影響を20カ月と見積もりました。

さらに、工事を進める中で地中からコンクリート基礎構造物などが見つかっています。その撤去などの追加工事に伴い、6カ月の延長を見込みます。

阪急淡路駅付近の高架化、さらに5年延伸へ 事業費2681億円、完成は36年度見通し
大阪高槻京都線交差部の施工状況(画像:大阪市)
大阪高槻京都線交差部の施工状況(画像:大阪市)

合計すると60カ月。これが今回示された「5年延伸」の内訳です。

工期延伸で事業費はどのくらい増加する?

工期が延びれば、当然、事業費にも影響します。

現計画の事業費は2326億円。このうち都市側の負担が2129億円、鉄道側となる阪急電鉄の負担が197億円です。

今回、新たに見込まれる増額は約355億円です。

最も大きいのは物価高騰で254億円。

20年から26年までの資材費や人件費などの上昇を反映します。

大阪市は以前の計画で、25年度以降の工事費について一定の前提を置いていました。しかし実際には上昇が続き、直近5年間の平均上昇率は年7%となっています。前回1月の会議では物価高騰による増額を220億円としていましたが、今回さらに26年分を反映し、254億円まで膨らみました。

このほか、現場調査で判明した地中障害物の撤去などに11億円、下新庄駅周辺で交通への影響を抑える施工方法へ変更するため18億円を追加します。

積算基準の改定に伴う増額は51億円。一般管理費率や現場管理費率、鉄筋工などの基準変更を反映します。

安全対策では、交通誘導員、作業指揮者、列車監視員などの増員に加え、工期延伸に伴って借りている工事用地を長く使用する費用などを含め21億円を見込みます。

これらを合わせ、変更後の事業費は約2681億円となる見通しです。

最大のリスクは今後の物価上昇

ただし、2681億円で最終確定したわけではありません。大阪市は鉄道事業者などとの協議により、増額内容が変わる可能性があるとしています。

最大のリスクは、今後も続く可能性がある物価上昇です。

直近5年間と同じ年7%の上昇が36年度の事業完了まで続いた場合、さらに263億円の影響が見込まれます。

施工中や未施工区間から、これまでと同程度の地中障害物が見つかった場合には12億円、積算基準が再び同程度改定された場合には22億円の影響を想定しています。

一方、施工方法や安全対策については関係者との協議がおおむね整っており、この部分からさらに大きく増額する可能性は低いとしています。

用地についても、高架工事に必要となる土地の取得はすでに完了しています。残っているのは主に側道整備に必要な用地で、高架への切り替え時期に用地取得の遅れが影響する可能性は低いとみています。

高架下空間を活かす動きも

長い工事期間の一方で、完成した部分を先に街へ生かす動きも始まりそうです。

大阪市は、淡路駅周辺で放置自転車などが地域課題となっていることから、完成済みの高架構造物の下に暫定的な駐輪場を設けることを検討しています。それ以外の場所についても、地域のニーズを確認しながら高架下空間の活用を進める考えです。

都市計画決定は1994年。鉄道高架工事の着手から数えても20年を超える大型事業です。高架切替は33年度、全体完成は36年度となる見通しですが、現在も列車を走らせながら、道路、新幹線、JR線、住宅地に囲まれた場所で工事が続いています。

淡路駅を中心とした巨大な高架構造物が列車の走る新しい鉄道空間へ変わるまで、もうしばらく工事の行方を見守ることになりそうです。

(画像:大阪市)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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