W杯では対戦経験少ない両者 試合は高度な睨み合いに
アルゼンチンの守護神E・マルティネスがスペインの決定機に何度も立ちはだかった photo/Getty Images
アメリカ、カナダ、メキシコを舞台に史上最多48カ国が出場して争われた北中米W杯のファイナルは、ともに優勝経験があるスペイン代表×アルゼンチン代表となった。親善試合も含めて両者は過去に14度対戦し、6勝2分6敗という結果が残されていた。W杯では1966年イングランド大会のグループリーグで対戦があり、2-1でアルゼンチンが勝っていた。
ファイナルの会場となったのはニューヨーク/ニュージャージー・スタジアムで、数日前から両国のサポーターが集結。カナダのトロントで発生した大規模な山火事による深刻な大気汚染で開催への影響が懸念されたが、フルハウス(満員)のなか予定どおりにキックオフされた。
守護神ウナイ・シモンを擁するスペインは今大会7試合中6試合を無失点に抑えており、堅守というか、どの試合でも主導権を握って試合を完全にコントロールして勝ち上がってきた。一方、アルゼンチンはリオネル・メッシを中心に各試合でゴールを積み上げ、7試合でなんと19ゴール。1試合平均2.71ゴールという得点力で勝ち上がっていた。
試合前に「両者ともにボールを保持して強くなろうと試みている」と語っていたのはアルゼンチンのリオネル・スカローニ監督。まずはどちらが主導権を握るか注目されたが、ボール支配率でまさり、いつものペースで試合を進めたのはスペインだった。CBのアイメリック・ラポルト、パウ・クバルシが余裕を持ってボールを持ち、SBのマルク・ククレジャ、ペドロ・ポロは高いポジションを取る。その前方ではラミン・ヤマル、アレックス・バエナが幅を取り、中央ではロドリ、ダニ・オルモ、ファビアン・ルイスが絶妙な距離感で正確にパスをまわす。
ただ、前線のミケル・オヤルサバルになかなか効果的なパスが入らず、チャンスそのものは少なかった。アルゼンチンが自陣に作る[4-4-2]はバランスがよく、ダブルボランチのアレクシス・マクアリスター、エンソ・フェルナンデスが中盤で、最終ラインではリサンドロ・マルティネス、クリスティアン・ロメロが危険なスペースを埋めているため、ボールを支配するもののスペインがPA内に侵入する回数は少なかった。
それでも、7分にはヤマル→ダニ・オルモがワン・ツーを成功させ、ヤマルが左足でフィニッシュした。しかし、これはGKエミリアーノ・マルティネスにセーブされて先制点とはならず。39分に正確なパスワークで中央を崩してオヤルサバル、43分には攻撃参加したククレジャがいずれもPAの外からミドルシュートを放ったが、どちらもゴールにはつながらなかった。
順調に試合を進めるスペインに対して、アルゼンチンは44分にリサンドロ・マルティネスが負傷し、ニコラス・オタメンディと交代。このアクシデントによる交代にはじまり、ハーフタイムに1人、58分に1人、70分には2人の選手交代を行い、早々と交代枠を使い切ってしまう。攻撃から守備への切り換えが早いスペインの前に、アルゼンチンは前線で待ち受けるメッシまでなかなかボールを届けることができなかった。
ジワジワと追い込んだ延長戦 ついに決まった決定的な一撃
ついに決まった決勝点。ニコ・ウィリアムズの頭での折り返しをとらえたフェラン・トーレスのボレー photo/Getty Images
スペインの試合運びは巧みで、自分たちでボールをキープして主導権を握り、なおかつ相手にカウンターを許さない。ボールロストしたあとの各選手の対応、ポジショニングが徹底的に整理されていて、こうした良いときほど落とし穴が待っているもので「好事魔多し」と言うが、そんな心配もいらないほど試合をコントロールしていた。
終わってみれば、120分でアルゼンチンに許したシュートはわずかに2本。90分にいたっては0本であり、いつスペインがゴールを奪うか。アルゼンチンはどこまで耐えられるかという展開で試合は進み続けた。
実際、後半のなかばからスペインがゴールに迫るシーンが増えていった。その要因となっていたのがルイス・デ・ラ・フエンテ監督の采配で、62分にフェラン・トーレスとペドリ、75分にミケル・メリーノとニコ・ウィリアムズを送り出し、攻撃の強度を落とさない。というか、相手最終ラインの裏を狙うタイプの選手が入ったことで攻撃の圧力が増した。
67分~81分には4度の決定機を作り出した。F・トーレスのヘディング、ペドリの左足、クバルシの右足ミドル、ラポルトのヘディング、すべてゴール枠内をとらえていたが、前回カタール大会のゴールデングローブ(最優秀GK)であるE・マルティネスにすべてセーブされ、それでも先制点は生まれなかった。
試合は0-0のまま進み、延長戦突入がみえてきた90+3分に決定的な出来事が起こった。この日イエローを1枚もらっていたアルゼンチンのエンソ・フェルナンデスが2枚目をもらい、スペイン11人、アルゼンチン10人となってしまう。戦況はよりスペインに傾き、延長戦でのアルゼンチンは[4-4-1]でスタートしたが、102分にCBのマルコス・セネシを投入して[5-3-1]へ移行。なんとか守り抜いてPK戦へという戦いを選択していた。
37戦無敗のスペインはこうした展開に慣れていて、攻撃が手詰まりになったり、守備に隙が生まれたりすることもなかった。両サイドのヤマル、N・ウィリアムズが独特なリズムで仕掛け、慌てることなくジワジワと追い込んでいく。決勝点が生まれたのは延長戦後半がはじまってすぐの106分だった。
試合後にこうコメントしたのはF・トーレスで、スペインは各選手がただただやるべきことをやり続け、アルゼンチンがみせたわずかな隙を逃さなかった。土壇場で1点をリードしたスペインはここから終了まで守備に追われることになったが、高い集中力を維持して今大会劇的なゴールを奪ってきたアルゼンチンに反撃を許さなかった。
最後の最後、120+2分にCKからジュリアーノ・シメオネにフィニッシュされたが、ゴールバーの上へと外れていった。スペイン1-0アルゼンチン。僅差での決着となったが、パス本数、パス成功数、クロスの数どれもスペインが大きく上回っており、点差以上の完成度の高さをみせての2度目のW杯制覇となった。
「この結果を誇りに思う。自分たちが持つアイデアにしたがってプレイしてきた。
育成年代からいまの選手たちと一緒に戦ってきたデ・ラ・フエンテ監督は、喜びを隠さなかった。なお、大会のゴールデンボール(最優秀選手)にロドリ、ゴールデングローブに8試合1失点のウナイ・シモンが選出されている。このW杯ファイナルでの勝利で連勝は38まで伸びた。スペインを称して“無敵艦隊”というのは、かつては最強と称されながらも勝ち上がれないことを揶揄してのものだったが、今はリアルに“無敵”となっている。
文/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD322号、7月22日配信の記事より転載

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