オランダやドイツ 強豪国たちが大会を去る
PK戦に敗れ、肩を落とすチームメイトを慰める主将ファン・ダイク photo/Getty Images
出場国が48カ国に拡大されたことで、W杯史上初めての舞台となったラウンド32。決勝Tに入ったとはいえ、GLを3位で終えた国の3分の2がこのステージへと進めることから、まだまだ実力差の大きい試合が多くなるかと思われた。しかし、予想に反して強豪国のいくつかはここで姿を消すことになった。
R32屈指の好カードとなったオランダ代表とモロッコ代表の一戦もそんな試合となった。モロッコがボールを支配して試合をやや優位に進めるなか、先制したのはオランダ。72分にロングボールによるカウンターから、最後はコーディ・ガクポがネットを揺らした。しかし、モロッコも後半AT、前線に上がっていたCBイッサ・ディオプが頭で合わせ、土壇場で追いつく。
その後、延長戦でも決着はつかず、運命はPK戦に委ねられることに。最終的にPK戦を3-2としたモロッコがオランダとの激闘を制した。組み合わせの運もあるだろうが、強豪国のオランダが決勝T1回戦で姿を消すこととなったのは衝撃的だった。
パラグアイの激しい守備に苦戦を強いられたドイツ photo/Getty Images
早々と大会から去ることとなった強豪国はオランダだけではない。パラグアイ代表と対戦したドイツ代表も、辛酸を舐めさせられる結果となった。
ポゼッションを捨てて守りを固めた相手に、終始苦戦を強いられたドイツ。パラグアイ(166本)の4倍以上のパス成功数(752本)を記録したが、なかなか効果的なパスを通せない。
すると42分、フリオ・エンシソにネットを揺らされ、パラグアイに先制を許す。
また、近年着実に評価を上げ、今大会でも注目国のひとつとなっていた日本代表もこのR32で敗退することとなった。
対戦相手はブラジル代表。29分に佐野海舟のゴールで幸先よく先制に成功したが、後半に入って56分にカゼミロ、ATにガブリエウ・マルティネッリにゴールを決められ、逆転負けを喫した。ハーフタイムにしっかり修正してきた名将カルロ・アンチェロッティの手腕が光った一方で、日本の消極的過ぎる姿勢を指摘する海外メディアも少なくない。日本はまたしても決勝Tでの初勝利がお預けとなってしまった。
強豪と真っ向勝負! ダークホースが牙を剥く
シドニー・カブラルのスーパーゴールで、103分に試合を振り出しに戻したカーボベルデ photo/Getty Images
アルゼンチン代表とカーボベルデ代表の一戦は、R32のベストバウトとの呼び声が高い。人口約50万人の小国が、前回王者を相手に粘り強い戦いを見せた。
29分にロングボールによる裏への抜け出しからリオネル・メッシがネットを揺らし、アルゼンチンが先制。この勢いで王者が試合を優位に進めるかと思われたが、カーボベルデも59分に右サイドから崩して試合を振り出しに戻す。
今大会で「時の人」となったカーボベルデの守護神ボジーニャは、この試合でもいく度となく好セーブを披露。試合は延長戦へもつれ込むこととなった。
カーボベルデは延長戦へ入ってもアルゼンチンにしぶとく食らいつく。92分にCKの流れからリサンドロ・マルティネスに勝ち越しゴールを許したが、103分にシドニー・カブラルが今大会ベストゴール級のシュートを突き刺し、再び同点に追いついてみせた。
このままPK戦へと突入するかと思われたが、カーボベルデの前に立ちはだかったのはやはりメッシだった。111分、左CKのキッカーを務めたメッシは、ニアへ走り込んだクリスティアン・ロメロの頭へピンポイントクロス。シュートは相手に当たったため、最終的にはオウンゴールになったものの、アルゼンチンの絶対的エースが決勝点を呼び込んだ。
カーボベルデは惜しくもR32で姿を消すこととなってしまった。ただ、決勝へ進んだスペインとアルゼンチンを相手に90分間で敗れなかったチームとして、今大会で最も評価を上げたに違いない。
イングランドを相手に善戦したDRコンゴだが、ケインの2ゴールにより惜しくもR32で散ることとなった photo/Getty Images
イングランド代表と相見えたDRコンゴ代表もまた、爪痕を残した。4バックで真っ向勝負を挑んだDRコンゴは、開始直後の7分に幸先よく先制に成功。守備面では、守護神リオネル・ムパシが好セーブを連発し、ゴールを許さない。
DRコンゴの夢を打ち砕いたのはハリー・ケイン。75分に左クロスに頭で合わせて同点にすると、86分には3人に囲まれながらもシュートコースを作り、強烈な一撃を叩き込んだ。アルゼンチンと同様に、大国の絶対的なエースが大きな壁となった。
レアルで苦楽をともにした2人の盟友による抱擁
試合後に抱擁を交わすロナウド(右)とモドリッチ(左)photo/Getty Images
今大会が最後のW杯となる可能性が高いレジェンド同士の激突もまた、ドラマを生んだ。かつてレアル・マドリードで苦楽をともにしたクリスティアーノ・ロナウドとルカ・モドリッチが相見えたポルトガル代表とクロアチア代表の試合は注目のカードとなった。
ポルトガルがポゼッションを高める中で、先制したのはクロアチア。53分、右クロスがファーサイドへ流れると、これを受けたイヴァン・ペリシッチが左足を振り抜き、均衡を破った。
その後、お互いに一度ずつネットを揺らすも、オフサイドの判定でゴールは認められない。次にスコアが動いたのは68分だった。ポルトガルはCKのポジション争いの中で、レナト・ベイガが倒されてPKをゲット。これをロナウドがゴールのど真ん中へ冷静に沈めて同点にした。
そして、後半ATに劇的な展開が待っていた。90+4分、ラファエル・レオンの左からのアーリークロスにゴンサロ・ラモスが頭で合わせ、ポルトガルが逆転に成功。諦めないクロアチアも90+13分、こちらも左からのアーリークロスを起点にネットを揺らした。しかし、クロアチアのゴールはVARの介入により、直前のプレイがオフサイドの判定で再び認められない。ポルトガルが2-1でクロアチアとの激闘を制した。
ロナウドとモドリッチは試合後、お互いの健闘をたたえて抱擁を交わしていた。このシーンは多くのファンのハートを熱くさせたはずだ。なお、スペインメディアによると、オフに入ったロナウドとモドリッチは、同じくレアル時代の盟友ペペを含めて、一緒に束の間の休息を楽しんだという。
出場国の拡大や、それに伴って新設されたR32には、否定的な意見も多くあった。ただ、振り返ってみればさまざまなドラマが生まれたのも事実。結果的には多くのサッカーファンを楽しませる新たな舞台となったのではないか。
文/及川 裕太
※電子マガジンtheWORLD322号、7月22日配信の記事より転載

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