開催国3つはすべて敗退 アメリカは物議を醸す
ヒメネスのバイシクルを必死でブロックするバーン。イングランドは肉体と精神を削られた photo/Getty Images
これまで大会のトーナメント初戦となっていたラウンド16は、今大会では2戦目ということになった。つまりこの時点で決勝Tに進出したチームの半分が姿を消していたわけだが、ラウンド16もまた、新方式となった大会の厳しさを各国に突きつけるものとなった。
開催国も例外ではなかった。まず行われたのはカナダ代表×モロッコ代表の一戦。しかしカナダは力の差を見せつけられることになる。
前半はカナダのペースと言ってもよかった。序盤にはボール奪取からの素早いショートカウンターで好機も作り出す。前線から激しく寄せて積極的にプレイするカナダだったが、前半にゴールを奪えなかったツケを後半に払わされる結果となった。
後半開始早々にモロッコが手にしたフリーキックからアゼディン・ウナヒがミドルシュートを沈めて先制すると、82分にカウンターから再びウナヒが決めて追加点。アディショナルタイムにはスフィアン・ラヒミがやはりカウンターから加点し、3-0で決着。カナダは1点も決めることができずに大会から姿を消した。
メキシコ代表は圧倒的ホームの利もあり、イングランド代表を追い詰めた。イングランドに2点を先行されるも、アステカ・スタジアムの
大歓声を受け、42分にフリアン・キニョーネスがこぼれ球を蹴り込んで1点を返す。
さらに後半、ジャレル・クアンサーの退場によって数的優位も獲得。
ここからはイングランドにとって地獄のような時間が続いた。スタジアムは高地にあり、明らかに疲弊していくイングランドの選手たち。メキシコは交代選手を次々と投入し、執拗に横に揺さぶり続ける。イングランドは長身のダン・バーンを投入し、[5-3-1]のブロックを作って必死に耐え続けた。
アルバロ・フィダルゴのミドルがジョーダン・ピックフォードを急襲し、ジョン・ストーンズの必死のクリアがポストすれすれを通り抜けていく。11分のアディショナルタイムも耐え忍び、結局逃げ切ったイングランドだったが、試合終了時には濃い疲労の色が選手たちの顔に浮かんでいた。
出場停止が猶予されたバログンは先発したものの、ゴールやアシストに絡むことはなかった photo/Getty Images
アメリカ代表とベルギー代表の一戦は、試合前から大炎上していた。ラウンド32のボスニア・ヘルツェゴビナ代表戦でレッドカードを受けていたアメリカFWフォラリン・バログンに対し、FIFAが出場停止処分の執行猶予を行うという異例の判断。ドナルド・トランプ大統領がFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長に直接電話をかけたことを明らかにすると、大きな議論を呼んだ。
開催国の大統領が直接関与するなど前代未聞であり、これは政治的な圧力だと世界中のサッカーファンが怒りを表明した。
9分にさっそくシャルル・デ・ケテラエルが先制点を挙げると、31分にマリク・ティルマンにフリーキックを決められるものの、その2分後にレアンドロ・トロサールのクロスから再びデ・ケテラエルが決めて突き放す。
57分にはGKマット・フリースがボール処理を誤り、ハンス・バナケンが決めてベルギーに3点目。ATには途中出場のロメル・ルカクがダメ押しを決め、準々決勝進出を決めた。アメリカは精彩を欠いており、件のバログンも先発したものの、ゴールを挙げることができなかった。
非情なりハーランド 圧巻2発でブラジルを敗退へ
ジャンプ一番、強烈なヘディングを突き刺すハーランド photo/Getty Images
ラウンド32で日本代表を破ったブラジル代表は、アーリング・ハーランド擁するノルウェー代表と対戦。しかし、10分に得たPKのチャンスをブルーノ・ギマランイスが逸してしまい、63分にはエンドリックがGKとの1対1を外してしまうなど、ペースを握りきれない。
ついにネイマールもピッチに送り込んだブラジルだったが、スコアを動かしたのはノルウェー。79分、左からのクロスにハーランドが飛び込むと、ガブリエウ・マガリャンイスの後ろから頭でネットに突き刺して、ついにノルウェーがリードを奪う。
そして90分には、ペナルティアークでボールを受けたハーランドが、対峙するDFを横に動かしてシュートコースを作り、左足一閃。ボールはDFの股を抜けてゴールに突き刺さり、ノルウェーに決定的なリードがもたらされた。
AT終了間際にPKによる1点をネイマールが決めるも、時すでに遅し。日本を倒したブラジルも、怪物ストライカーの2発にあっさりと沈んでしまった。
ズィーコの得点で2点を先行したエジプト。アルゼンチンを追い詰めた photo/Getty Images
アルゼンチン代表とエジプト代表は、リオネル・メッシとモハメド・サラーのエース対決というところにも注目が集まったが、先手をとったのはエジプト。前半のヤセル・イブラヒムのヘディングと、後半のカウンターからのモスタファ・ズィーコのゴールでアルゼンチンは0-2とされてしまう。PKのチャンスも得ていたものの、メッシはこれを外してしまい、嫌な展開となっていた。
しかし、ここから王者がプライドを見せつけた。79分にメッシのクロスから前線に上がっていたクリスティアン・ロメロが頭で決めると、83分にはゴール前から戻されたボールをメッシがボレーでとらえ、ついに同点。
そして延長戦も見えてきたかと思われた90+2分、右からのクロスをラウタロ・マルティネスが頭で合わせて決勝点をものに。アルゼンチンが13分間で3点を決める勝負強さを発揮し、大逆転でエジプトを下すという劇的な決着を見せた。
イベリアダービーもAT決着 ロナウド最後のW杯が終わる
試合前に最後のW杯となることを明言していたロナウドの目には涙が photo/Getty Images
ポルトガル代表とスペイン代表の「イベリア半島ダービー」は、ラウンド16最大の注目カードとなった。2018年大会では3-3の撃ち合いを演じるなど、常に名勝負を作り出してきた両者。ともに大会最高クラスの中盤を擁するだけに、少しの精度の差が明暗を分け
るような緊迫した展開となった。
7分、ダニ・オルモのスルーパスに抜け出したミケル・オヤルサバルがゴール右をかすめるシュートを放つと、39分にはヌーノ・メンデスがクロスバー直撃のシュート。
結局、勝負が決まったのはアディショナルタイムだった。ライン間でボールを受けたフェラン・トーレスが、裏へ走り込んだミケル・メリーノにパス。抜け出したメリーノは左足で冷静にネットを揺らし、決着となった。
41歳となったポルトガルのエース、クリスティアーノ・ロナウドは、試合前に今大会が最後のW杯になると公言していた。試合後、ロナウドの目には涙が浮かび、悲劇的な事故でこの世を去ったディオゴ・ジョタの魂とともに戦ったポルトガルの航海はここまでとなった。
文/前田 亮
※電子マガジンtheWORLD322号、7月22日配信の記事より転載

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